超階層のつながりを仕掛けた人事施策で“全体最適”を促進|コラム|スコラ・コンサルト
超階層のつながりを仕掛けた人事施策で“全体最適”を促進

超階層のつながりを仕掛けた人事施策で“全体最適”を促進

遠藤 咲子 | 2008.09.10

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 「部分最適から全体最適へ」いう言葉をよく耳にします。自部門の成果ばかりに目がいき、結果として全体の成果につながりにくい状態になっている状態をさして、なんとかしたいという場合によく言われる言葉です。

 その状態をよく見てみると、背景にあるのは、長い期間同じ職場で同じ仕事に従事している人が冒されやすい「職業病」的考え方があるように見えます。この「職業病」とは何かというと、どっぷり同じ環境につかっていたため、自部門への帰属意識が極端に強くなり、他部門への思いやりがもてなかったり、全体のことが考えられなくなっている症状です。もっとひどくなると自分のところさえ良ければいいという自己中心的な考え方に陥ります。そうなると相手のことを理解しようとせずに、相手を責めたり、要求ばかり強くなったり、被害者意識に陥り、部門にまたがる問題解決が進まないという現象につながっていきます。
 工場では生産計画どおりに進まないことを、図面や納期の変更を依頼してくる営業や設計部門のせいにする。その一方で営業部門は、顧客の要求とあれば無理難題でも設計や生産部門に押し付けてくる。そして設計や開発部門では、技術や新しさにこだわりすぎて顧客の要望や作り手への配慮に欠ける。こういった現象は、「職業病」が部門を越えた問題解決を阻んでいる、よく見受けられる事例です。

 とくに中堅・中小企業では、長い間、同じ職場で同じ職種で働いている人がたくさんいます。10年以上同じ職場に所属している、なかには入社以来ずっと同じ職場で同じ仕事をしているという人も少なくはないでしょう。定期的に新人を採用することが難しく、長期的視点で人事戦略を組みにくいため、どうしても人材が固定化してしまう傾向になるのでしょう。

 しかし、人材が限られているからこそ、

技術や手法を標準化していく
人事異動が困難な場合、互いに助け合うヘルプや社内留学制度などを取り入れる
全体観を一人ひとりが持てるよう全体目的を共有し、一緒に問題解決にあたる話し合いの仕組みを導入する
リーダーは自分の後継者を必ず一人は育てることを使命とし、自分はいつでも異動できる体制をつくる


といったことが「職業病」予防には必要なのです。


◆「人材」が生み出した「全体最適」

 最近私がお手伝いした企業では、部門最適から全体最適への転換に対する施策として、思いきった人事異動にチャレンジしました。ある人事異動に関する意思決定が、「全体最適」を生み出す結果になった事例です。
 ポイントになったのは、現場を動かしているキーマン的人材を数名、現場から経営企画部門に異動するという意思決定です。現場の中心戦力を間接部門に異動させるのですから、経営側が本気で変革に取り組んでなければできなかった意思決定だったと思います。

 私たちは経営企画に異動した彼らや、この施策の仕掛けをした人事部の皆さんと一緒になって変革を進めました。変革の事務局となった彼ら自身が現場の第一線で活躍し、現場をよく知っているうえに仲間がとても多い皆さんでしたから、彼らが動き出すとその影響力はひじょうに大きいわけです。彼らは部門を超えた横のネットワークを広げ、見る見るうちに役員や管理職層を巻き込み、私たちが支援に入って約4カ月の間に具体的な成果を上げていきました。変革のスピードも質も、私がこれまで支援してきた経験の中でも、群を抜いていました。
 おそらく彼らが元の現場にいたままでは、ポテンシャルはあったとしても立場的な制約や利害がからみ、部門を越えた活動はそうは簡単には進まなかっただろうと思います。後に当事者である事務局の皆さんに、変革を促進するきっかけとなった人事異動についてお聞きしたところ、「最初は異動させられたことに対して不満もあったけど、会社全体を見ることができるようになって良かったです。でも、できれば早く現場に戻りたい」と話されていました。

 機能別に役割分担をして生産活動をしている以上、「職業病集団」からの脱却は生産性向上にとって重要な問題です。「職業病」の弊害を克服し、部分最適から全体最適へ転換していく施策のひとつとして参考にされてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

遠藤 咲子

遠藤 咲子

SAKIKO ENDO

特に販売・営業、サービスの業種を得意とする。「経営への信頼を高める」という信条をつねに念頭においたサポートを心がけている。

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