事例の受け取り方の3つのパターン

私たちが手がけてきた組織風土改革の取組みについて、具体的に事例を取り上げて説明するとき、お客さまの受け取り方には大きく分けて3つのパターンがあります。

一つは、「あれは○○会社だからできたことでしょう。うちはあそことは違いますからね」と、その必要性はわかっているが、自社ではどうせやっても無理だろうとハナから否定的に見ているケース。

二つめは、「うまくいった話ばかりではなく、失敗した事例も聞きたい」とか「今回は○○会社の話が中心だったので、ほかの事例も聞いてみたい」と関心はあるものの、慎重にかまえて、しばらくようすを見ようとするケース。

三つめは、「とても参考になりました。自分は今こんなことをやり始めているんですが、いつも○○のところで行き詰まっていたんです。ほかの組織でも同じようにやっている人がいることがわかって勇気づけられました」と、自分なりに一生懸命吸収できるところを見いだそうとするケース。

それぞれの組織の状態や聞いている人のスタンスによってまちまちです。

昨今のように変化が激しい時代においては、「今のままではだめだ。自分たちも変わらなければ」ということは、おそらく多くの人が感じているでしょう。しかし、「改革」や「変革」という言葉が飛び出した途端、それはとてつもなく大きな困難を伴うものに思えてきて、「本当に変われるのだろうか」という不安や疑問が先に立ちます。そんな中で「自らの意思でやってみよう」と思える人は、めったにいません。それだけに、私たちはそのような思いを持った人にめぐり合ったら、彼らの不安や疑問を一つずつ取り除きながら、変わる行動を起こしていけるようにお手伝いをします。

本気で改革をするために前例をつくる取組み

そんなとき、ひとたび「言い出しっぺ」「やり出しっぺ」になる人が出てくると、組織の中では「言い出した人に協力する人」や「追従してやり始める人」が必ず出てくるものだというのも実感です。
「2割が動けば組織は変わる」と言いますが、変革とは一見無縁の保守の典型として語られる「前例にもとづいて踏襲する」「横並びに合わせる」といった体質も、実は突破口さえ開ければ変わりうる可能性を秘めています。
5年前に、ある公務員の方から言われた言葉です。「僕たちの自治体では、首長をはじめ、まだまだ本気で改革をしようという流れには至っていません。今の組織では、何かやろうとすると『前例がない』と言って否定されます。ですから、改革を先行している自治体のようすをもっと広く知らせてください。そうすれば、『あそこでもやっています』と上司を説得できますから」
この言葉から生まれたのが、言い出しっぺの改革チャレンジ活動を公開、共有する「公務員Power Station」というホームページの中のサイトでした。

競合関係のない公共機関では、変わりにくさがある半面、新しい息吹を生み出すきっかけが出てくれば、その動きが広く全国に伝播する可能性を持っています。要は、何を「前例」とするのか、それを塗り替えることにかかっています。
私は、このたび『どうすれば役所は変われるのか』という地方自治体改革のための本を書きました。この本が新しい動きを生み出すためのひとつの突破口、一つの前例になってくれればいいなと思っています。

▼出版物
『どうすれば役所は変われるのか』