トップの意思さえあればそれだけで変わっていくのか

組織にとって大切なのは「変わり続けていく力」です。問題を見つけ、それを改善する、という当たり前のサイクルがごく自然にいつも回っている、というのが理想です。この変わり続けていく力は、組織自身が備え持つことが大切だと思っています。
私たちは現在、40余りの組織を50名弱の社員でお手伝いしていますが、プロセスデザイナーの役割というのはあくまでも潤滑油です。組織は私たちが変えていくわけではないのです。

お手伝いをしていて「あまりうまくいっていないな」と思うことがごくたまにあります。変わり続けていく組織になるための前提条件が弱い場合です。つまり、組織のトップが「変わっていこう」という姿勢を持ちきれていない場合がそれです。この前提条件がしっかりしているにもかかわらずうまくいかなかった例というのは、今までありません。
だからといって、トップの意思さえあればそれだけで変わっていくのかといえば、そうでもない。組織というものは難しいもので、トップが変えていこうという意思を強烈に持っているからといって、それだけでうまくいくとは限らないのです。

参謀とは“情報の促進剤”

トップは一人で組織をだめにすることはできても、一人で組織を本当に変化させることはできない。参謀役が不可欠なのです。
ここでいう参謀とは“情報の促進剤”です。経営の伝わりにくい意思を上手に伝え、届きにくい現場の声を届きやすくする。「プロフェッショナルな参謀役」、これが私たちの役割の大切な部分のひとつです。
あくまで黒子に徹しながら、潤滑油的な役割を果たしていく。組織の隅々まで情報を伝え、整理し、動きを促進する。こうしたこともプロセスデザイナーの重要な仕事なのです。

私たちの果たしているこの参謀役を組織の中に育てていくことが今ほど必要とされている時代はないと思います。社員一人ひとりの考える力を育み、可能性を開花させるには豊かな知恵が不可欠です。人の生み出す知恵が組織の成功の条件になっているのです。

問題は、私たちのほかにこうした役割を仕事としている存在が見当たらないことです。明らかにニーズは高まっているのに、それに応えきれていないという実感があります。ここ数年、私たちが新しい人を積極的に迎え入れているのはそういう理由もあるのです。

迎え入れる基準、プロセスデザイナーに求められるのは何よりもその人間力、言い換えれば人としての温かみです。一緒にいる人が安心して自分を引き出されていくような「聴く力」を持っていること、とも言えるかもしれません。
今、スコラ・コンサルトで活躍しているプロセスデザイナーの約半数は女性です。どちらかといえばコンサルタントというイメージとは少し違う、いわゆるバリバリやるタイプではない人がほとんどです。いずれにせよ、この仕事が女性にも向いている仕事であることは間違いありません。

できるだけ多くの質の良いプロセスデザイナーが世の中に出て活躍できる状況をつくる、というのが私たちの今年もっとも大切にしているテーマのひとつです。