世話人に共通する要素とは

『なぜ会社は変われないか』を読んで共感を覚えた読者の中にも、「私は瀬川が書いたような檄文はとてもじゃやないが書けないのですが、やはり檄文を書かないとダメなんでしょうか」「瀬川ほどのエネルギーを持つ社員はうちの会社にはいませんが、諦めた方がいいんでしょうか」と真面目に質問をされる方もおられる。確かに、社内外の人たちと新たな関係を築き、今までの仕事のやり方を変えたり、新しい知恵を出したり、活かしたりしていくには多大なエネルギーがいるし、勇気も必要になってくる。

しかし、私たちが会社の風土改革をお手伝いする中で、その中心となって改革を進めている人たち、私たちはそういう人達を世話人と呼んでいるが、彼らは何も特別な存在ではない。瀬川のように檄文を書くような人物はむしろ極めて希であって、片手で数えられるほどにすぎない。

しかし、彼らに共通する要素がいくつかある。それらの要素は従来の企業社会の価値基準という物差しをあててみると、基準に達しなかったり、そもそも基準から大きく外れてしまって、測定不能だったりする。特に会社の中の上の立場から見ると、うるさくて扱いにくかったり、安心して仕事を任せておけなかったり、欠点が目について仕方がなかったりする。ともすれば、周りからは「なぜ、あんなヤツが改革の中心にいるんだ」と思わせるような存在だったりする。

一方で、若い層からはけっこう人望があり、期待されていたり、相談しやすかったりする。要は「改革を推進する」という物差しにはバッチリ当てはまるが、「言われたことをこなす」という物差しには当てはまらないことが多いのである。

改革を実現していくのは「人間」

改革を実現していくのは人間である。手法や知識ではない。それらはあくまで手段であり、ツールに過ぎない。どういう人間であれば改革を実現できていくのか。それは特別優れた頭脳をもっていたり、人並みはずれたエネルギーを持っている人間ではない。むしろ、そういう人物が改革を阻害することすらある。

このシリーズでは、何人かの世話人、変革を推進する人たちの人物像を紹介することを通して、変革に必要なリーダーの資質を明確にしていきたい。そして、どういう物差しで人材を見て、彼らに活躍の場を提供すれば、変革を実現していけるかを考えていきたい。

企業改革を推進するひとたち(2)はこちら