変化対応力の差が、地域力の差になる

特に、地方自治体の場合は、首長が交代するときと制度が改正されるときに大きな変化が求められる。民間企業における社長の交代や新商品の開発とは違い、行政組織においてはその変化が常に外からもたらされる構図にある。それを受け身で流して処理しているだけだと、形式的な組織や計画の変更、業務内容や作業の組み換えに終わってしまうことになりやすい。
この変化を真に地域のチャンスに変えていくためには、職員がまず変化の意味をとらえ、自分たちのものにしていくためのプロセスを踏むことが重要だ。行政組織内におけるこうした変化対応力の差が、地域力の差になると言っても過言ではない。

みなさんの職場では、新たな変化を求められるとき、現状のままでは対応しきれない運営上の不具合をいち早く発見して、どこに問題があるのかを話し合い、しっかり原因を探りあてているだろうか。
また、今までにない要請に対して、どのように取り組んでいけばいいのかの課題を設定し、いかに解決していくかの対策を考えるときに、思いきったチャレンジを組み込めているだろうか。

柔軟な「のりしろ」を持った対応をすることが重要

昨今のように地方分権が進み、財源が限られ、定数も削減された制約条件の中では、かつてのように「金をくれ」「人をくれ」と要求して対応するわけにはいかない。自分たち自身で制約条件を超える発想を持ち、創意工夫して不可能を可能とする新しいやり方の知恵を生み出していく、柔軟な「のりしろ」を持った対応をすることが重要になる。

また、対策を実行するにあたっては、最初から精緻な計画を立てて臨むよりも、まずはやってみる試行をするほうが進みやすい。試行する中で新たな課題が見えてくることがあるからだ。
チャレンジするメンバーも、担当者だけで背負ってしまうよりも、異質な視点や異なる資質を持った新人や外部人材のほうが、組織の常識や慣習に風穴を開ける役目を果たせることもある。
過去の成功経験の枠を超えたところにある課題の解決は、最初からうまくいくことはなく、失敗から学びながら進んでいく。
そして、この失敗を乗り越えるプロセスにおいて、さまざまな関係者とのチームワークも同時に築かれていく。
これまでの「計画」「担当」「失敗」の壁を破るプロセスを経ることによって、組織の対応力は飛躍的に伸びていく。変化の時代には、この現場での実践を通じて培われる実力の「のびしろ」をつくっていくことがとても重要なのだ。

戦略を実現可能とするもの

近年、行政組織においてクローズアップされてきた「戦略」も、戦略策定前の準備として、組織の「のりしろ」をつくっておくことや、戦略策定後の実行段階を学習機会にして組織の「のびしろ」をつくる、といったプロセスを伴ってこそ実現可能となる。
職員が、指示・命令された職務にのみ忠実で、目の前にある課題や目標をこなすことだけに追われているのではなく、常に新しい変化を感じ取り、みずから変化の節目をつくっていくことのできる人となって、組織を変化させていくことが大切になっている。

新しい年を迎えるにあたり、このメールニュースもいっそう工夫しながら、みなさまとともに変化を感じ取り、変革を創出していくプロセスをお伝えしていけたらと思っている。