本研修は、2013年に開設されて以降、毎年全国の自治体から20数名の職員が参加しています。今年で4年目を迎えるため、受講者数は延べ100人近くになりました。その多くが農業技師で、各地域で農業政策の将来を担う中堅職員が、政策立案について学ぶ機会となっています。

地域の活力を向上させていく「Т型人材」の育成が重要になっている

これまで技師にはその専門性を深め、「I型人材」を養成することが重視されてきました。しかし、昨今では農業を取り囲む環境が大きく変わってきていることから、単に専門性を持っているだけでは十分ではなく、さらに力の生かし方も身に付けておく必要が出てきています。

例えば、地域全体を見渡して独自性をとらえ、地域の「強み」として表していくことや、農業に関わる多様なパートナーと「協働」を進め、「こうありたい」という構想に向けて、具体的に実践するプロセスを創り出していくことなど、関心や関わり方の間口を広くして、地域の活力を向上させていく「Т型人材」を育成していくことが重要になっています。

「Т型人材」の資質・能力を養うためのさまざまな工夫

本研修では、その内容や進め方において、これらの資質・能力を養うためにさまざまな工夫が施されています。

そもそもなぜ、何のためかを考える思考を持つ

地方自治体職員は、国の施策や制度の中で、それを運用する立場にあります。そのため、どうしても手段を目的化してとらえがちです。
そこで、研修では主な施策テーマごとにたっぷり1日時間をかけ、朝一番に政策を立案する立場にある省の課長から、それぞれの施策について聞く時間を設けています。それによって、法律や制度をその目的に立ち返ってとらえ直す思考が養われます。

新しいアイデアをもとに果敢にチャレンジする姿勢に触れる

国の施策を見る一方で欠かせないのは、行政に頼らない民の活力です。そこで、最先端を走る民のリーダーを招き、当事者の思いや実践、数々のぶつかった壁や打ち破る突破口などについて、直に体験談を聞く時間を設けています。既成概念を超えた思考や実践の広がりに触れることができます。

多様な視点から対話を深め、自分なりの考えを見出していく

同じ最先端であっても、官と民とでは役割が異なります。両極端にある幅の広さを受け入れた後は、それを消化するグループディスカッションの時間です。

午後いっぱいかけて、その施策は自分の地域にとって必要か、どんな意義があるのか、消費者やパートナーはどんなニーズや課題を抱えているのか、官が担う役割は何か、協働していくための方策は?など、さまざまな角度から検討を重ねていきます。
同じテーマであっても、地域が異なると強みが弱み、弱みが強みに見えることがあるものです。研修生たちは発散と収束の議論を繰り返す思考のプロセスに沿ってファシリテートするスキルも身に付けながら、自分なりの考えを見出していきます。

研修後の実践につなげる

私は、このグループディスカッションが効果的に進められるよう3週間の最初に「ファシリテーション」の講義を担当しています。
また、研修生が当該年度だけでなく、年度を越えて交流する機会を設けるなど、ここで学んだことを研修後の実践につなげられるよう、研修全体の運営についても支援させていただいています。
今週から3週間、全国から集まって来た職員とともに熱い議論をともにできることが楽しみです。

政策研究大学院大学「農業政策短期特別研修」情報はこちら