対話を通じて学習する場も機能分化する時期に来ている

5月13日と14日に「公務員の組織風土改革世話人交流会」を神戸で開催しました。この会は、これまでにも幾度となく節目を迎えていますが、その度に会の存在意義を問い直し、運営のし方も変えてきています。18年目となった今回からは、ある種原点回帰することにしました。

なぜなら、行政組織における改善・改革の取組みが、時代の進展とともに高度化・多様化してきたことから、対話を通じて学習する場も機能分化する時期に来ていると思えたからです。

2000年に本会を開始した当初は、職員が、指示・命令を超えてみずから組織変革の動きを起こすことなどほとんどなかった時代でした。それだけに、行動を起こすと多くの抵抗勢力に遭遇し、その壁を乗り越えるには、同じ思いを持つ有志が励まし合い、くじけないよう勇気づけ合うことに意義がありました。

それが、地方分権一括法のもとで、どの自治体でも改革が当たり前に行なわれるようになると、庁内で行政経営の仕組みを導入、管理する企画や行革、人材育成などの管理部門の担当者の参加が増えてきました。業務として改革をやらせる側に立つ担当者たちは、やらされる側の職員との間にギャップを生じて悩みや葛藤を抱えるようになりました。交流会では、そんな課題を分かち合うことに意義を感じるとともに、担当者として改革をどう進めていけばいいかの対策を話し合うようになってきました。

やがて、改革を先導してきた職員の中には、次第に役職が上がり、部門長や副市長、副知事になる人が出てきました。彼らには、首長と職員のつなぎ役として参謀機能を発揮することが期待されます。

首長と職員のつなぎ役としての参謀機能

参謀のあり方は、それぞれの地域の特性、住民の自治力、議会との関係、行政経営の熟度、首長の経歴やリーダーシップスタイルなどによって異なるものです。

真に交流するには、思いを語り合うだけでは不十分です。ある程度固定したメンバーが腹を割って話せる関係をつくりながら、時勢にあった問題をとらえて、背景情報を知り合うところから経営課題を読み解いていくところまで、かなり濃密に対話する必要があります。

そこで、関西では2013年から中心となるメンバーが隔月に一度集まり「参謀交流会」を独立開催するようになりました。回ごとにメインスピーカーを決めて、じっくりと経営課題や組織運営の状況を知り合い、今何が必要かを考え合って、ノウハウを学び取っています。

首長によってなぜ活動が揺れ動くのかを考える

一方、自治体によっては、首長の交代により、今までやってきた改革や改善をそのまま継続することができず、後退や消滅する事態が起こってきました。長年改革・改善を実践してきた職員の中には、首長によってなぜ活動が揺れ動くのか、原因を考えたいという思いが湧いてきました。

それが、2013年に「自治体改善マネジメント研究会」を発足するに至った経緯です。1年間を通し10日間以上回を重ね、事例研究する会を立ち上げました。同じ問題でも、視座、視野、視点を変えると見え方が変わってきます。最終レポートを書くときには、最初に参加したときとは全く異なる行政経営のとらえ方ができるようになっています。事例研究会は、関東・関西で2期ずつ開催し、研究員は30名を超しています。今年7月にはこの気づきの輪を広げようとNPO法人として活動をバージョンアップする運びとなりました。

 

これらの二つの会が独立して動き出したことにより、世話人交流会は、原点に帰り、よりシンプルに、「公務員としての仕事をよりよく果たしていくために、一人ひとりが自分の思いを大切にして、周りに働きかけ、組織の成果、よりよい地域につながるプロセスを考え、実際の行動につなげていく」目的がより鮮明になりました。

自分自身をふり返り、組織での実践プロセスの知恵を分かち合う場として、ぜひ引き続きご活用いただければと思います。