組織に免疫力をもたらす「当事者」と「ネットワーク」

組織に免疫力をもたらす「当事者」と「ネットワーク」

柴田 昌治 | 2018.01.15

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私たちスコラ・コンサルトが手がけてきた組織風土改革がスタートして約30年がたちました。
その当初から、私たちは日本的な風土に則したオリジナルな改革を志向し、実践の中で開発し続けてきたのです。

日本における組織変革全体の流れをみると、2000年前後からコーチングや組織開発など、欧米から優れた組織改革手法が紹介されるようになってきています。
それにつれて日本企業の組織風土や文化に対する理解も広がり、近年、コーポレートガバナンスやダイバーシティ、働き方改革などの課題に対応するため、組織変革ニーズは今までにない高まりを見せています。

組織風土改革というものが表立った課題になりにくかった以前の状況を考えると、世の中の流れの変化を感じます。

そうした中で、海外で開発された手法を効果的に活用するためにも、日本の組織独自の風土的な問題点と課題を認識しておくことは非常に大切だと私は考えています。
欧米で開発され輸入され翻訳された、教科書に載っている改革手法とスコラ式改革の考え方とは、重なる部分ももちろんありますが、そこには「拠って立つ文化的背景」が異なるがゆえに見落とすことのできない重要な差異があります。


●「あきらめ社員」が増えて成長が止まった日本の20年

集団の秩序を優先し、上からの指示どおり与えられた仕事に邁進する社員。
スコラ式改革がスタートした1980年代の後半、まだ表面化してはいませんが、日本的な組織風土が抱える矛盾は極限までに大きくなっていました。
そして、バブル崩壊後、いわゆる失われた20年の間に蓄積されてきたのは、矛盾の吹き溜まりである「あきらめ感を抱えた社員」です。

昨年、来日したギャラップ社の社長が公表した最新の情報によると、日本企業では、熱意あふれる社員の割合がたったの6%(米は32パーセント)、調査した139カ国中132位です。
さらに、やる気のない社員の割合は7割にものぼると報告されています。
社員の働く姿勢に関するこの種のネガティブな統計数値は、もはやそれほど目新しいものではありません。

今の日本が抱えている組織風土に由来するこうした現象の予兆は、スコラ式改革が始まった当時からすでに見えていたものです。

かつて高度成長の頃といえば、日本企業で働く社員の士気の高さに疑いを持つ人間などいませんでした。
経済成長のスピードについていくために誰もがひたすら頑張ることが当たり前だった時代です。
しかし、その経済がひとたび失速を始めると、時を同じくして、指示を待つだけの「あきらめ感を抱えた社員」という今までの背景の下では見えなかった実態が現れてきます。

それは日本的な組織風土が潜在的に抱えていた矛盾の顕在化であり、無意識のうちに共有してきた従来の価値観を根元から転換する必要性があることを意味するものでした。

明らかなのは、「あきらめ感を抱えた社員」とは対極にある「当事者意識を持つ社員」を増やすことが不可欠だ、という課題です。
その必要性を痛切に感じるところからスコラ式改革は始まります。
以来、私たちは、日本的な風土の特性に即した「改革の考え方とスキル」を一からつくり上げてきたのです。


●「負の風土特性」がジャパンブランドを失墜させる

日本には、運動部での先輩・後輩関係など、他の国の組織にはない特異的な上下関係があります。
そして、日本企業は「上という立場」には無条件に従うというタテマエを秩序意識として持つ運動部出身者を優先的に採用してきた歴史(ここにきて少し変化の兆しは見えますが)を持っています。

そもそも、上からの指示に、そこにルールとその背景に力があるから従う欧米企業と、タテマエという一種の倫理観、もしくは同調圧力の下で従う日本の組織とでは本質的な違いがあります。
武士道における忠義というタテマエが絶対的な価値を持っていた社会、その歴史の延長線上にあるのが日本的な組織なのです。

「上には従う」という秩序意識は伝統ある日本的組織の中にいる人間ほど強く持っています。
この秩序意識は、組織の秩序と安定を守ることが組織への忠節につながるという「タテマエ」に基づいています。
つまり、欧米企業に比べて日本の組織では、倫理観という側面を持つタテマエがもたらす規律が際立って幅を利かせているのです。

バブル崩壊以降、多くの改革に見られる致命的な誤りは、このような「日本的な風土特性」を一切考慮することなしに、MBA的な理論と数値で追いかける改革を推し進めてきたことにあります。

秩序と安定を重んじる日本の組織では、そこに問題があっても、タテマエとしては「ない」ことにしてフタをすることが当然のように行なわれます。
こうした側面をそのままに放置したがゆえに、抱えている問題は解決されないまま膨らんでいき、組織ぐるみ、業界ぐるみの品質問題などが噴出する状況をつくり上げてしまったのです。

このタテマエ文化の改革の遅れが日本ブランドの信頼を低下させる要因になっていることは明白です。

コンプライアンス問題の多発、さらには欧米先進国と比べてかなり低い日本の労働生産性などの問題は、こうした組織文化のありよう(とそれを放置してきたこと)に深く関わっており、同じところに原因があるのです。


●組織の免疫力になる「自発的な当事者」を増やす

バブル崩壊後、日本独自の風土的要素を無視し、数値指標で社員を追いかける改革を進めてきたことで、たしかに合理化自体は進みました。
しかし他方で、組織には“あきらめ感”が蔓延していき、社員の気力や熱意を発揮させ得る当事者意識が枯渇してきたことは否めません。

そして、企業をとりまく環境がかつてないほど劇的な変化を見せる今日、すでに日本の組織は、日々発生する新たな状況変化に柔軟に対応し得るだけの“自らを守ろうとする活力”(免疫力)、つまり「当事者」を十分に見出せなくなってきているのです。

日本的組織の抱える根本的な問題は、数値で追いかける改革だけでは解決しません。
数値に追いかけられる改革ではなく、育っていく当事者が自ら数値を追いかける改革にしていくスコラ式の改革こそが、日本の風土に根差した実効性のある改革です。

特に伝統的な組織を対象にした最新のアプローチでは、各階層が日本的風土の特性である「タテマエ」をまず自覚することから始めます。
自覚によって思考の枠を取り払い、当事者を生み出していく、というシナリオで展開する改革です。

その上で、日本人が持つプラスの特性である「共感力」を上手に生かしながら、自発的に動く当事者のネットワーク(=コアネットワーク)をさらに展開していきます。
頑強な組織の殻と壁を破る当事者たちが数値もしっかりと追いかけながら改革を進めていくのです。


これからの時代、環境変化を乗り越えて持続的に成長する組織が求められるとするなら、自らの力で自律的に問題解決する「組織の免疫力」を高めるスコラ式改革が不可欠です。
そういう改革を時代が求めている、という実感が得られるようになった今日この頃です。

著者プロフィール

柴田 昌治

柴田 昌治

MASAHARU SHIBATA

80年代後半から企業風土・体質改革のコンサルティングに取り組む。 変化を妨げている価値観を変えながら変革のプロセスをつくり込んでいく「プロセスデザイン」というやり方が特徴。

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