先週、私もそこで「行政経営から考える働き方改革~自治体改善運動を通じて」というテーマで公開講演をさせていただきました。
今日は、このように自治体の役所で働き方改革に取り組んでおられる職員に向けて、改革の目的のとらえ方についてお話ししたいと思います。

改革メニューを手がけることが目的になっていませんか

「働き方改革をしなければ!」と結果を出すことを焦ると、どうしても改革メニューにばかり目が向きがちです。
これでは、「時間外労働時間の削減」や「テレワークの導入」、「仕事と家庭(子育て・介護)の両立」などの新しい仕事のやり方を始めることが目的になってしまいます。

退庁時間の制限やノー残業デーなど形式的に導入してみても、そのしわ寄せから持ち帰りや他の日に仕事を回していたのでは意味がありません。
ましてや本来やるべき仕事さえもカットして、やらずにすませてしまうようならば、論外です。
改革メニューであれば何でも効果があるとは限りません。
また、より多くの改革プランに着手すれば、よりよくなるとも限りません。

大切なことは、まず、自分たちの地域や組織に今どんな働き方が必要なのか、めざす方向と現状に立ち返って考えてみることにあるでしょう。

地域にあった働き方の方向づけとは?

自治体では、総合計画の基本構想などに地域のめざす姿(将来像)を掲げています。
昨年度からは、少子高齢化と人口減に歯止めをかけるべく、地方人口ビジョンを踏まえたうえで、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、地方創生に向けた取組みを始めました。

そこで、役所における働き方を考えるときには、それぞれの地域の実情に応じて、いかに人の流れをつくり、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえ、誰もが働きやすい環境を築いていくのか、地域のめざす姿と戦略に合わせた取組みの方向づけをしていくことが期待されます。

ただ、働き方改革の担当者の多くは、人事課に所属していて、これら政策系の計画のことをあまりよく知らないことが多くあるものです。
その場合は、自分たち役所も地域の中の事業所の一つであるという認識に立ち、これらの計画をしっかり読み込んだうえで改革に着手していくことが必要となるでしょう。

職場の “いい働き方”を実現する改革とは?

役所には、さまざまな政策担当部署があり、政策分野ごとに関わる対象者や業務のやり方が異なります。
そのため、各職場で改革を始めるときには、所管する政策のめざす成果に向け、自組織の使命や業務の特性を鑑みて、いい仕事を果たすための“いい働き方”とはどんなものかを考えてみることが大事です。

この“いい働き方”を実現するためには、何を重要視して、何を切り捨てるのか、仕事を優先づけるための判断基準を明確にしておくことが欠かせません。
この判断基準は、各自がみずからムダを削減する「改善」の取組みを進めていく前提となるものです。

「改革」は、この改善レベルを超えて今までの機構や制度を変えていく取組みですから、組織としての意思決定を伴います。
それゆえ、所属長には、職員から改善を進める中で何に困っているのかを聴き取り、背景にある障害や制約要件を取り除いたり、制約要件を超えるアイデアを集め、これまでにない新しい発想でダイナミックに生産性を向上する策を見出したりしていくことが求められます。

すでに定数が絞り込まれている役所においては、個人任せにしていても解決策には限界があるため、仕事のやり方をイノベートしていくことが、今後の取組み課題となってくるでしょう。
地方の労働力人口を増やし、経済成長を図っていくことができるよう、改革の先にある仕事の価値(働き)に焦点を当て、真の働き方改革チャレンジを果たせるようにしていきたいものです。