クロスオーバー型課題設定のススメ(前編)~企業を進化に導くための全体経営システムアプローチ

クロスオーバー型課題設定のススメ(前編)~企業を進化に導くための全体経営システムアプローチ

塩見 康史 | 2018.04.24

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最近、経営者に求められるものが、昔と比べて飛躍的に多くなっていると感じています。企業は、非常に複雑なシステムであり、さまざまな側面を持っています。ビジネス環境の変化が激しいこの時代、経営者には、企業という複雑な経営システムを環境に適応させ、進化させるという難しいリーダーシップが求められているのです。

複雑な経営システムを読み解くためには、そのための視座を持つことが必要です。企業の進化・成長を促すために、経営者にとって必要な視座とは何か。そして、その視座を手に入れる方法を紹介したいと思います。

●「人」が、経営において決定的に重要になった

最近、日本でも定着しつつあるアメリカ型のプロ経営者は、いわば経営の専門家。財務面に優れ、株主に利益を還元し、リストラなども含めた経費の削減をすることで、企業の資産価値を上げる手腕に秀でています。

ところが、それが行き過ぎると、企業そのものが時価総額を上げるためだけの道具になってしまい、企業の永続的な発展や、社会貢献とは矛盾した方向に企業をリードしてしまうことが懸念されます。

一方で、いわゆる日本型の経営者は、その企業で長く働き、経験を積み上げてきていることが多いため、求心力があり、現場をよく知っています。

しかし、経営者がそのまま過去の成功体験を再生しようとしても、時代に合わなくなっているということが起こります。

どの経営スタイルが優れているということはありませんが、前に述べたような落とし穴に陥ることを避けるためには、経営として高い視座を持つことが必要です。

また、企業が社会から期待されることも変化しています。世の中が貧しかった時代は、食料や物資を供給することが社会への大きな貢献でした。

しかし、今は物質的には、ほぼ満たされている成熟した社会。そこでは、企業が「人の幸福や喜び」をいかに創造するかという新しい課題に取り組むことが求められます。

その一方で、企業で働く社員も「仕事を通した自己実現」を求める人が増えています。ある意味、複雑性の極みともいえる「人」という要素が、経営において決定的に重要になったと言えるでしょう。

●専門分化された組織の落とし穴

組織は通常、分業によって運営されています。短期的には分業は効率的ですし、社員の専門分野への習熟度を高めることができるというメリットもあります。

その半面、分業によって、「全体」が見えにくくなるということもよく起こります。特に企業のような複雑なシステムは、そもそも「全体」を見ることが難しい上に、ある分野の専門知識を持っているがゆえに、より一層「全体」が見えにくくなるということが起こりえます。経営者も財務出身、営業出身、人事出身のように何らかの専門性を持っていることが多いために、その「専門性」という窓を通して、経営課題を認識してしまうことが起こりやすいのです。

 

たとえば、経営企画が立案した戦略がうまく運ばなかった時、現場の実行力に問題があるのではないかという話になったとします。

ところが現場からは、経営企画は現場の実態をわかっていないという不満が生まれる。

でも、たいていはそこで終わってしまうのです。その結果、経営企画は「戦略の精度を上げよう」という方向に進み、現場は「上からの方針は、うまいこと受け流そう」という方向に進んでしまうかもしれません。

また、現場の社員が活性的ではないと経営陣が感じた時に、その対策として社内イベントを開催し、コミュニケーションを深める努力をする。もちろん、社員のコミュニケーション不足が原因ならそれで解決するでしょう。

ところが、そうでなければ、完全に見当違いの対策です。もしかしたら、現場の社員が成功体験が積めていないことに原因があるのかもしれません。そうなると、自分がつくった商品をお客様に喜んでもらっていることを感じられるようにする、といったような対策を取ることが必要になってきます。

うまくいっていないように見える特定の領域だけを見ても、問題の本当の原因はわからず、解決しない事例は少なくありません。問題が生まれる原因は一つではなく、いくつかの分野をまたいでさまざまな要素が結びついていることが多いのです。分野を横断する視座から、複雑に絡み合った要素を解きほぐし、問題を的確にとらえた課題設定ができると、レバレッジ効果が働き、経営課題の解決に大きく動き出します。

●専門分野を整合する課題設定とは?

経営企画から上がってくる経営戦略、財務から上がってくる財務戦略、人事から上がってくる人事戦略。それらを別々のテーマとして扱い、わが社の戦略として掲げたとします。そうなると、多くの労力をかけて、それぞれの戦略を分散して進めることになります。本当に必要で、やるべきことのポイントがまったく絞れていないのです。

そこで、それぞれの専門分野から踏み出して、課題設定してみることをすすめています。それがクロスオーバー型の課題設定です。それぞれの専門分野の経営情報を集め、共有することにより、各領域が整合していきます。戦略の問題や人事、企業風土、ビジョンの問題などを一緒に考え、企業全体を俯瞰してみる。

そうすると、その中に不整合やレバレッジとなるようなポイントが見えてきたり、適切な課題設定や気づきにつながっていきます。優れた経営者は、直感的にそういう見方をしているのではないでしょうか。

しかし、漠然とクロスオーバー型の課題設定をしようといっても難しいと思います。そこで、そのための方法として、「8Dコンパス(エイトディメンションコンパス)」というフレームワークを提案しています。

 

ビジョン、戦略、仕組みなど、それぞれの領域にいろいろな情報を配置していくことで、問題点や課題、社員が抱える思いなどを「見える化」し、経営者、事業部、現場など、それぞれの立場や想いのギャップを埋めていくことができます。

自分の専門分野を極めてきたという経営者は、案外、自分の専門外の分野が抱えている問題や考え方に気づかない場合も多いのではないでしょうか。

しかし、企業を進化・成長に導くためには、別の専門分野、また異なる立場、そして全体を俯瞰して見ることは欠かせません。そのためには、「8Dコンパス」のようなツールを使うことで、今まで見えなかったものが見えるようになり、思わぬ気づきが生まれてきます。

次回は、クロスオーバー型の課題設定のためのツール、「8Dコンパス」について紹介します。

著者プロフィール

塩見 康史

塩見 康史

YASUSHI SHIOMI

人間や事業についての幅広い知識を駆使して、お客様と一緒に本質的な課題を多元的な視点から洞察する。バラバラで混沌とした状態から創造力豊かな仮説を構築する。

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