【固定型から、ゆらぎ型へ】 <br/> 変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(前編) <br/> 抽象度の高い方針の中身を現場と一緒につくり込む <br/>~方針の中身は(仮)、軌道修正を前提に|コラム|スコラ・コンサルト
【固定型から、ゆらぎ型へ】 <br/> 変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(前編) <br/> 抽象度の高い方針の中身を現場と一緒につくり込む <br/>~方針の中身は(仮)、軌道修正を前提に

【固定型から、ゆらぎ型へ】 
変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(前編)
抽象度の高い方針の中身を現場と一緒につくり込む
~方針の中身は(仮)、軌道修正を前提に

山科 雅弘 | 2019.01.25

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【固定型から、ゆらぎ型へ】 <br/> 変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(前編) <br/> 抽象度の高い方針の中身を現場と一緒につくり込む <br/>~方針の中身は(仮)、軌道修正を前提に

事業方針のあり方をめぐってトップが揺れています。
今の複雑な経営環境の中で、「この方向で行けば間違いない」と言い切れるだけの確信が持てなくなっているからです。

少し前の強いリーダーなら「先のことはわからない。私にも答えはない」とは口が裂けても言わなかったでしょう。でも今は違います。
「わからないものはわからない。自分ひとりでは進むべき方向を見出せない」という現実認識から物事を考え、組み立てていくリーダーがいます。
彼らは今までとは異なる方針づくりや展開のアプローチを試行し、変化に直面する現場と一緒に“よりよい答え”に迫っていく新たなプロセスを探っているのです。

前編では、これまでトップが一人で抱えていた方針づくりをどのようにして現場と分かち合っていくのか、そのための準備、環境づくりについてご紹介したいと思います。


●「方針はトップが考えるもの」という根強い現場の思い込み

「方針に書いてあることは日ごろから部長に言われていることばかりなので、特に異論はない」

「そもそも部長が決めた方針について我々がとやかく言うことはない。あとは各々で方針をタスクに落とし込んで実行するだけ。わざわざ課長が集まって話し合うことに意味を感じない」

「課によって業務内容が全く違うので、部の方針の中にはうちの課に関係のないことも含まれている。まずは各課で話し合えばいいのでは?」

部のありたい姿(ビジョン)を考える課長オフサイトミーティングに出席した課長たちの声である。

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【事業部の状況】

現在の事業は頭打ち状態で、このままでは衰退していくことは皆わかっているが、事業の新たな方向性を事業部長も明示できていない(事業ビジョンが描けていない)。
こういう状況下で示されている部としての方針は、「現業の課題の克服」と「新価値創造」の2本。「現業の課題の克服」のほうは明確に施策を示すことができても、「新価値創造」には具体性がない。

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途中で明らかに環境が変わっても、一度決めた方針が生きていて、組織の動きが変化のスピードに追いついていかない。世の中や市場の動きを見ながら方針を軌道修正していく発想の転換と体制づくりを急がないとまずいことになる…。

部長の強い意志で設定された課長オフサイトミーティングの目的は、 部のありたい姿(ビジョン)を課長たちで考え、共有することである。
部長からは部の方針が示されはしたが、「この内容はあくまでも私の考えたことであって、みんなはどう考えるのかを自由に話し合ってほしい」と言われているだけである。

これまでの部長なら何をすべきかを具体的に指示してくるはずだが、今回は勝手が違う。「考える」というあいまいな目的のミーティングに時間を費やすことに、ただでさえ業務に追われ多忙を極める課長たちは苛立ちを覚えていた。

「いったい方針について何を話し合えというのか、部長の意図がわからない」

課長にとっては意味が感じられない場であったが、部長には強い危機感と思いがあった。

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【課長オフサイトミーティングの背景にある部長の問題意識】

◆事業を取りまく環境が想定以上に、しかも急速に変化している中で、従来の延長線上に事業の将来像が描けなくなっている。部の方針についても、自分ひとりの経験と知識だけで「こうだ」と決めることはできない。

◆変化の激しい環境下では、何が正解かがわからない。自分が示した方針はあくまでも一つの考えだ。課長はただこれに従うのではなく、「自分はどうしたいのか」を考えてほしい。必ず自分(部長)には考えが及ばないような意見をもっているはず。それを方針に反映させていきたい。

◆まだ見えていない課題をあぶりだすためには、当事者同士が本音で包み隠さず徹底して話し合うことが必要。そうやって現場が自分たちで課題を見つけ、自律的に解決していく力をつけなければ、変化のスピードについていけない。

◆うちの部は事業全体の業績を左右する影響力を持ち、メンバーも仕事に責任とプライドを持っている。ただ、それは決められた業務を全うする範囲にとどまっているように見える。事業全体を見渡して、部が抱える本当の問題に気づき、解決に向けて主体的に動くことまでを自分の仕事だと思っている人はいない。

◆こういう状態では、個人も組織も成長することができない。将来のために今のありようを変えていくことは、部長である自分の責任である。

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このように考えていた部長は、オフサイトミーティングという場を通じて、課長たちが事業全体に視野を広げ、自分たちの力で今もっとも重要な課題を見つけ出し、それが部の方針に生かせるようになることを期待したのである。

しかし、課長たちにしてみれば、経営計画にリンクする重要な部の方針に関わる、異例で唐突な投げかけである。当然けげんに思い、戸惑うばかりで、部長の真意にまでは思いが及ばない。

初回のオフサイトミーティングでは、決してポジティブとは言えない課長たちの反応だったが、部長としては覚悟の上だった。
これまで当然、トップが決めるべきだと思われていることを部下にも考えるよう呼びかけること自体、前例のないことだったからである。


●予測不能な環境にフィットしない固定の方針
~「中身は(仮)」のあいまい方針を現場と一緒に回す

計画どおりに推進すれば結果が出せた時代と、必ずしも予測したようには状況が推移しない時代とでは、方針そのものの確度が違います。

状況の変化と想定計画との間に乖離が生じやすい環境下では、過去の実績や前年対比をベースにした目標と施策中心の方針では、現実の変化に対応していけません。そういう環境下では、むしろ固定化した方針にこだわることのほうがリスキーでしょう。

方針として提示される内容も変わっていきます。
売上目標から導き出した施策と達成目標が“正解”として使えない状況というのは、組織として「何をすればいいか」「何を達成するのか」ということ自体が不明確な状況です。
そこでは、「いかに達成するか」を推進する方針ではなく、事業の目的そのものを問い直す方針に変わっていくのです。

実際、すでにここ数年、中身のあいまいな抽象度の高い方針が目につくようになりました。
経営の側では、それが自分たちの会社に今一番求められていることだと痛感しています。ただし、ではどうやってそれを実現していくのか、については解がありません。
そこで、あいまいなままに「(仮)の方針」として提示し、その是非や中身はみんなで考えていこう、実地にやりながら検証していこう、という現実に即した方針展開アプローチが注目されるようになったのです。

このように、方針づくりのパラダイム(前提)が“想定可能”から“予測不能”に変わってくると、従来の方針作成では正式に許容されてこなかった「あいまいさ」や「変動の余地(ゆらぎ)」が新たな要素として加わってきます。
それと同時に、あいまいな状態の中で、具体策と確度の不明確な「(仮)の方針」を現場と一緒に回しながら方向を探っていくという、
経験にない方針のあり方や展開に関する理解と環境づくりが必要になっているのです。

●トップが落とし込む方針から、現場でつくり込む方針へ
 ~当事者チームが試行展開しながら中身をつくる

組織のトップが方針を示すことは重要ですが、トップが作成した方針を実行指示として言い渡すのか、メンバーと一緒に考えた方針を共有したうえで最終的な意思決定として示すのか、には大きな違いがあります。後者の場合は明らかに、プロセスに関わる当事者の数と方針への傾注度が違うのです。

前にも述べたように、抽象度の高い方針というのは「そもそも何をすべきか」があいまいで、

〈常に事業のあり方や既存の事業そのものを問い直すこと〉
〈長期的なスタンスで新たな活路を探り続けること〉

といった「新たに考えるべき問い」を伴うものです。

このような問いに対する答えは一つではありません。誰か一人が正解を持てるものでもありません。どんなにトップが優秀であっても、一人の能力ではカバーしきれない問題です。
冒頭でふれた部長が感じているように、トップ一人の過去の経験と知識だけで“最適な方針を確定する”ことは不可能なのです。

そこで、方針展開の新たなアプローチのために以下のような条件が必要になってきます。

1.トップの投げかけによって多様な立場のメンバーが一緒に方針を考えるプロセスと場
2.方針を具体化する主体的な実行当事者の存在
3.課題創出しながらトップと連携して方針をつくり込む現場チーム

抽象度が高く、具体策が見えない今の時代の方針展開に必要なのは、トップ一人の手に方針を委ねるのではなく、組織のメンバーがそこにコミットしてチームで動きながら、自分たちも考え、自分たちのものとして方針をつくり込んでいくことです。トップが大筋を投げかけ、現場が試行錯誤しながらその中身を埋める、さらに現実に合わない部分は見直して軌道修正する、といった生成的なプロセスを通じて方針の輪郭ができ上がっていく、というイメージでしょうか。

現場が主導して「方針をつくり込む」とは、単に方針策定のための材料データを提示し、全体計画に統合していくという意味ではありません。
顧客や市場に接するメンバーが最前線で変化する現状を見ながら「今、本当に必要なことは何か」を常に考え、新たな課題を見つけ出し、それを方針に反映させていくということです。

数値計画に従って各部が目標を達成していく「固定型」のアプローチから、現場のメンバーが動きながら方針を軌道修正し、より実効性の高いものに進化させていく「ゆらぎ型」のアプローチへ。

トップだけではなく組織のメンバーにもまた、従来とは真逆の考え方やスタンスが求められます。新たな方針展開アプローチの担い手に不可欠なのは、「上からの指示に従って動く」受け身で消極的な姿勢ではなく、「自ら考え動いて自分なりに答えを見つけ出そうとする」主体的な当事者としての姿勢なのです。


後編では、「方針を自分たちのものにする」という、方針のパラダイム転換の土台となるプロセス、「方針のつくり込み」の実際についてご紹介したいと思います。

著者プロフィール

山科 雅弘

山科 雅弘

MASAHIRO YAMASHINA

営業・マーケティング部門の支援を得意とし、「自ら考え、行動しよう」という現場の主体的なエネルギーを、経営的な課題解決に生かすための支援に力を注いでいる。

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