【固定型から、ゆらぎ型へ】<br/>変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(後編)<br/>模索しながら中身をつくり込んでいく方針展開のプロセス<br/>~経験にない挑戦方針には「主体性」が不可欠|コラム|スコラ・コンサルト
【固定型から、ゆらぎ型へ】<br/>変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(後編)<br/>模索しながら中身をつくり込んでいく方針展開のプロセス<br/>~経験にない挑戦方針には「主体性」が不可欠

【固定型から、ゆらぎ型へ】
変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(後編)
模索しながら中身をつくり込んでいく方針展開のプロセス
~経験にない挑戦方針には「主体性」が不可欠

山科 雅弘 | 2019.02.13

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【固定型から、ゆらぎ型へ】<br/>変化のスピードに対応するリアルな方針のつくり方(後編)<br/>模索しながら中身をつくり込んでいく方針展開のプロセス<br/>~経験にない挑戦方針には「主体性」が不可欠

方針づくりのパラダイムが“想定可能”から“予測不能”に変わってくると、具体策と確度の不明確な「(仮)の方針」を展開しながら軌道修正していく「ゆらぎ」を含んだ進め方が必要になってきます。

現場にとっても、黙って上司の指示を待つわけにはいきません。自分たちで考え動きながら方針の中身をつくっていく生成的なアプローチは、自分の意志としてそれを担うメンバーの「主体性」がエンジンになるのです。

●受け身ではなく、方針に自分の意志を込める

「この方針はあくまでも現時点での私の仮説にすぎない。この方向性が正しいかどうかは定かではないが、とにかく一歩を踏み出してみよう。動いてみれば必ず新たな何かが見えてくるはず。それをみんなで共有し、その先どうするかはまた一緒に考えていこう」

かつてこのような部長メッセージがあっただろうか。明確な方針には程遠い、行き当たりばったりともとれるようなアバウトな方針説明である。これを初めて聞いた時のメンバーの反応はかなり否定的なものだ。「自分が何をすればいいのかがわかるように、もっと具体的に示してほしい」と誰もが思った。

しかし、メンバーにはその後、方針というものについて自分たちで考え、議論する機会が与えられた。この機会を通じて、メンバーの方針への向き合い方が大きく変わったのである。

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先の見通しが持てない事業環境においては、方針をトップ一人の手に委ねるのではなく、組織のメンバーもまた方針を自分たちのものとして動かしながら修正を加え、より実効性の高い中身をつくり込んでいく必要があります。
そのためには、メンバーの主体性の発揮が不可決なのです。

では、メンバーはどのようにして主体的な方針の当事者になり、ゆらぎながら進む方針展開のプロセスに取り組んでいくのでしょうか。

          
      
●方針を自分たちのものにしていくプロセス

トップから何らかの方針が示されれば、組織のメンバーはまずその内容を理解しようとします。しかし、その理解は、自分の関係する範囲に限定されがちです。そこで、最初に必要なのが視野を開いて関心の範囲を広げることです。


1)関心の範囲を広げる

たとえば部長が部の方針を課長に示し、どんなに丁寧に説明しても、課長の関心が自分の課に直接影響のある部分だけに向けられている場合、課長はその範囲の情報だけを切り取って理解しようとします。つまり、関心の外側にあるもの(自分の課には関係が薄いと思うもの)については理解が進まない、ということです。

そこで部長がまずやるべきことは、課長に対して関心の範囲が広がるような機会をつくることです。

◆自分の関心の範囲(狭さ)を自覚する
◆自分の関心の範囲外にある情報に触れる
◆関心の幅を、課から部全体へと広げる

そのことによって課長が部にとっての方針の意味を考え、自分とのつながりを見出せるように後押しをします。


2)方針について自ら考え意志を持つ

関心の範囲が広がることで方針の受け止め方は確実に変化しますが、決まった方針をトップの考えとして受け止めているうちは、メンバーの姿勢は“受け身”のままです。それを自分のものにするためには、方針の背景を知ったうえで、以下のような「そもそも」の目的や意味について問い直してみるプロセスが必要です。


大事なのは、決まった方針を“トップの考え”としてそのまま受け取るのではなく、自分たちでも考え抜くこと。自分たちの考えと意志のもとに「これでいく」という方針を描いて、方針を手の中に入れることなのです。


3)組織の方針と自分たちの思いとの重なりを見出す

方針を自分のものにするうえで欠くことができないのは、方針への共感です。共感は、「こうしたい」という自分の思いに共通するものを方針の中に見出した時に生まれます。とはいえ、「こうしたい」という思いは無意識のままに眠っていることが多いため、「自分はどうしたいのか」について深く考え、呼び起こす機会が必要になります。

そこでは、単に「やりたいこと」を考えるのではなく、「自分は仕事を通じて何を実現したいのか」「自分のミッションは何か」というように、自らのあり方を問い直し、その答えを見出すようにします。その過程で、「自分の思いを実現することが組織の成長にもつながる」と思える一致点を見つけることができたら、自分と組織が重なり合い、主体性という大きなエネルギーが引き出されるのです。
「方針が腹に落ちる」というのはまさにこの状態です。

●方針をつくり込むプロセス
~方向性だけで着手する「具体化」への挑戦をどのように進めるか


「方針が概念的で具体性に欠ける」
全社方針を受けて発表された事業部方針に対して、多くのメンバーはこう思った。
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【全社方針】
成長ビジネスの新分野に集中する事業ポートフォリオの組換えとリソースシフト

【事業部方針】
1.環境負荷低減ニーズに対応する新製品開発
2.既存業務プロセスの徹底した効率化
3.モノ売りからコト売りへの転換
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決して向かうべき方向が間違っているとは思わない。環境変化に対応するためには、どれも必要なことばかりである。しかし、具体的に何をすべきかが示されていないため、メンバーは戸惑いを感じていた。

事業部方針の三本柱の一つ、《モノ売りからコト売りへの転換》を担うサービス部のメンバーも同じように感じていた。

近年、製造業の間ではサービス化を成長戦略として、製品売り切り型のビジネスからサービス提供型ビジネスへの移行が進んでいる。これまでのようなモノづくりだけでは利益が出ない状況下で、事業部からはサービス部に対して、今後はアフターサービスの領域を拡大していくことが期待されていた。

しかし、それを実現するための具体策は何も示されていない。あるのは「5年後に売上を2倍にする」という数値目標だけである。いったいこの「空白部分」をどうやって埋めていくのか、果たして埋められるのか。メンバーは、それを自分たちに“丸投げ状態”で委ねら
れていることに疑問を感じていた。

それでも「じっとしているだけでは疑問と不安はいつまでたっても解消しない。どうすればいいのかを自分たちで考えてみよう」という挑戦的なメンバーが現れた。そんな数人が発起人となり、それをサポートする部長を中心に、これからのサービス事業について考える場が設けられた。

前述の「方針を自分たちのものにする」プロセスの議論に続いて、次のような「方針をつくり込む」ための場を積み重ね、手探りしながら方針の中身を具体化していったのである。


1)現状認識と全体像の再確認
  事業部の方針と自分たちの現状認識とのギャップについて議論し、これを埋めるために本当に必要なことは何かを考える
2)仮説にもとづくテーマ設定
  1)の議論を重ねる中から、「こういうことがやれないか」という仮説にもとづきテーマを創出
3)チームでテーマへのトライ
  テーマごとにチームメンバーを募り、課題を設定して取り組む(業務時間の5%をこの取組みにあてることを部長が決定)
4)各チームとスポンサーチームによる進捗レビュー
  発起人と部長とでテーマごとの取組みを引き上げ、マネジメントするチームをつくり、毎週1回のミーティングを開催。各チームの取組みの手ごたえ、動いてみて得られる情報、新たに見えてきた課題などを共有する
5)見えてきた課題を方針の具体策に反映
  部長は、レビューで得た課題を方針に反映させ、方針の中身を具体性、実効性の高いものへと引き上げていく

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新たなビジネスモデルの創造を必要とするような方針の場合、会社が具体策を示してくれないのも無理はありません。顧客のニーズに応じてサービスを開発し続けるソリューション提供のようなビジネスは、プランの開発から提供形態や課金の仕方、業務のプロセスも従事する人材も、これまでのビジネスとはまったく違います。そんな経験にない分野に進出するわけですから、こうすればこうなると示せるような具体的なプランなど、じつは誰も示せるはずがないのです。

今でも大抵の組織では、トップから方針が示されると、すぐに実行計画を立て、それを個人のタスクに落とし込み、進捗を管理するという方法がとられています。固定した方針に従ってぶれることなく目標を追い、計画どおりに実行していく。これが従来の方針展開です。

もちろん、従来の延長線上に明確な方針が描ける時代であれば、この方法には合理性がありました。しかし、今はトップといえども先が見通せない変化の激しい時代です。当然、方針のあり方にも展開の仕方にも、方針の性格に応じたバリエーションが必要になっているのです。

こうした試行錯誤で道を拓きながら進めていくプロセスは、誰にでも担えるとは限りません。先のことはわからないけれど新しいことに挑戦してみようという意志を持つメンバーと、それをバックアップするスポンサーの存在があってはじめて可能になります。それは前例にない進め方かもしれません。しかし、その挑戦を通じて得られる新たな体験や道筋が、人やマネジメント、組織に今までにない能力をもたらすのだと感じています。

著者プロフィール

山科 雅弘

山科 雅弘

MASAHIRO YAMASHINA

営業・マーケティング部門の支援を得意とし、「自ら考え、行動しよう」という現場の主体的なエネルギーを、経営的な課題解決に生かすための支援に力を注いでいる。

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