【興電舎の改革、その後】(後編) 混乱の先には何があるのか? <br/>~脱皮を繰り返して成長する組織が持つ“豊かさ”という底力 |コラム|スコラ・コンサルト
【興電舎の改革、その後】(後編)  混乱の先には何があるのか? <br/>~脱皮を繰り返して成長する組織が持つ“豊かさ”という底力

【興電舎の改革、その後】(後編) 混乱の先には何があるのか?
~脱皮を繰り返して成長する組織が持つ“豊かさ”という底力

若山 修 | 2019.05.22

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【興電舎の改革、その後】(後編)  混乱の先には何があるのか? <br/>~脱皮を繰り返して成長する組織が持つ“豊かさ”という底力


▼前編はこちら
http://a04.hm-f.jp/cc.php?t=D229&a=889&c=44688&d=27f4


興電舎とスコラ・コンサルトとのおつきあいはもう15年になります。15年の間、ともに悩み、一緒に走ってきた仲間として、改革の渦中にある興電舎の人たちには何とか自分たちの力で試練を乗り越えてほしいと願っています。

それと同時に、興電舎のこの1年の変化がどのような意味を持つのか。後編では、改革の渦中にあっては展望しにくい変化のもたらす豊かさについてふれてみたいと思います。

規律ある厳しさの上に、創造性を発揮することができるか?


もともと先代から続く強烈な上意下達型の風土を変えるため、前社長
の鈴木さんの代になってからは、オープンで自由闊達な風土をめざして努力してきたのが興電舎です。

この大きな変化を知っている人の中には、現在の西川社長による改革を「上意下達型への揺り戻し」と感じる人がいるかもしれません。その結果、自分たちが培ってきたボトムアップの良さが失われてしまうのではないかと不安になることもあるでしょう。また、たゆみないカイゼンで利益を高めることが「顧客の期待に応えることよりも自社の利益を追求する」というトレードオフに見えてしまうことがあるかもしれません。

しかし、ずっと傍で興電舎の変化を見続けてきた私には、その先にある将来像が見えています。日々カイゼンを続けていく厳しさ、しっかりと利益を出せる体質の上に、社員が自由な創造性を発揮する会社、そして、自社の利益の土台の上に、顧客の期待を上回る製品(装置)を生み出していく会社の姿です。

私がそう思うのは、鈴木さんと西川さんが腹を割って対話をする場面にいつも立ち会うなかで、二人がともに従業員の幸せを心から願っていることが実感できるからです。経営として単に「売上か、従業員満足か」「あっちからこっちへ」というふうな“二者択一”の割り切りができないからこそ二人は葛藤し、話し合いを続けながらそれを乗り越える新たな道を模索しています。

改革とのつき合い方とは? 
~人に冷たい改革には選択の余地がない


さまざまな面での見直しや変化が起こる本気の改革というのは、決して穏やかなものではありません。組織としては不安定になり、個々の立ち位置の揺らぎや先の見えない不安による混乱もつきまといます。それだけに私は、伴走者には見えていて当事者には見えにくい“改革のその先に描いている姿”や“改革とのつき合い方”を、もっとお互いが理解し、共有しておく必要があると思うようになりました。

今年、国連の2019年度版「国別幸福度ランキング」で日本は58位、昨年よりも順位を下げて過去最低になったというニュースがありました。押し下げ要因として挙がっていたのは「人生の選択の自由度」と「他者への寛容さ」の2項目の低下です。

企業組織にとっても、この2つの欠如感は社内の空気に悪影響をもたらすのではないでしょうか。

もしも、改革というものが現状の一切を否定して一新する単純な新旧交代だとしたら、それはそこに乗れなかった人たちを暗に阻害してしまう排除の論理になりかねません。そこに選択の自由や他者への寛容さが宿っていなければ、改革はただ冷たいだけのものになってしまうでしょう。

単純な新旧交代ではなく、現状を見直すことでより良い仕事、より良い組織を築いていくのが改革だとしたら、本来それは働く人に豊かさをもたらすものであるはずです。

本来、豊かさとは「あれか、これか」という二者択一の世界ではありません。自然生態系で考えたときの豊かさは「あれもある、これもある」という多面性です。生物の種類が多種多様であるほど、自然は豊かで強靭になります。人の社会も同様です。

グローバリズムが世界を覆いつくそうとする昨今ですが、その一方では、あらためてローカルの良さが見直されています。それぞれの地方に根づいている伝統的な暮らしの知恵や様式、山河や地形、気候風土の違いに応じてかたちづくられる固有の文化があらためて注目されているのは、多様なものが共存することで共栄していく豊かさの価値観が共有されつつあるからでしょう。

過去の土台の上に新しいものを取り込んでいく組織
~多様な能力と手段を持つ「豊かさ」が変化対応力に


企業においても、本当の改革とは、組織形態やマネジメントスタイル
が単純に「より良いものに置き換わる」ことではなく、時代と環境に応じて「とりうる手段が増えていく」ことなのではないでしょうか。それこそが、敗者を生み出す二者択一の論理ではなく、選択の自由が膨らむことによる幸福の論理なのだろうと思います。

創業から100年を超える興電舎では、これまでにモーター事業から配電盤の事業へ、配電盤の事業から装置のワンストップ製造へとステージアップしていく大きな改革を少なくとも2度にわたって経験してきました。そこには、“脱○○”の言葉も聞かれ、メイン事業の新旧交代も起こります。

しかし、モーターを手がけていたからこそ配電盤の技術は花開き、配電盤とエレクトロニクスの土台の上に、メカ部門のノウハウを加えて、装置のワンストップ製造が可能になりました。過去の事業が育ててきた技術者や経験者などの知的資産は、決して古びることなく、これからも興電舎の基礎を成す層となって足を踏ん張り続けます。

それと同じように、これまで社員の自発性を大事にして育ててきた“ボトムアップで考える力”は、これからも興電舎を支えていく底力となり、カイゼンを中心とした強いものづくりの力と融合して、新しい未来を切り拓いていきます。こうした会社の持つ多面的な能力が、どんな環境変化が起きても耐えていける対応力になるのだと思います。


夢の実現に向かうため、葛藤に打ち克って、次々に現れる大きな壁を乗り越えようとする二人の経営者と社員の挑戦は今日も続いています。私たちも支援の当事者として、まだ気づいていない改革の壁の存在を意識しながら一緒に走っていきたいと思っています。

著者プロフィール

若山 修

若山 修

SHU WAKAYAMA

目の前の問題にとらわれず、自由な発想で、変革を成功させるレバレッジをクライアントとともに探し出すことを心がけ、支援している。

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