政策開発力を体系的に身に付ける研修|コラム|スコラ・コンサルト
政策開発力を体系的に身に付ける研修

政策開発力を体系的に身に付ける研修

元吉 由紀子 | 2019.07.31

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政策開発力を体系的に身に付ける研修

地方分権が進み、自治体がそれぞれの地域の資源や強みを活かして個性ある自立した地方をつくるために“政策開発力”を養う研修に注力し始めたのは、もうずいぶん前のことです。近年では消滅自治体の危機感から、地方創生に取り組む中で、地域イノベーションと言える新しい価値創造の実践も進んできました。

そんな中、政策研究大学院大学では、農業政策において7年前から政策企画・立案・実行できる人材の養成を、自治体職員向けに3週間の短期特別研修として開催しています。今年は、7月22日から8月8日までの期間で、まさに現在進行形で実施しているところです。

本研修では、単に幅広い知識を得るだけでなく、様々な場をコーディネートして多様な解決策を持つ専門家をネットワークする力と、地域の強み・課題を見抜いて現場と信頼関係を築いていくコミュニケーション力を掛け合わせた「Т字型人材」の養成をめざしています。私どもでは、この3週間のトータルデザインと「ファシリテーション」の講義を支援しているのですが、終了後の評判がとてもよいことから、今日は、私がとらえたこの研修のエッセンスをご紹介いたします。


自分を主語に語り合う

研修生から参加する動機を伺うと、毎年最も多いのが、「上司に行ってこいと言われたから」です。まじめな公務員であればこそ、素直に従って参加しているのですが、このままでは自らの学びは生まれにくいものです。

先行き不透明で、正解のない時代に、将来に向けて地域の政策を考え、実践することは、自分の意思を持ち、自分の頭で考え、自分の言葉で伝えることから始まります。そこで、研修中は、立場・肩書を外して「気楽にまじめな話をする」オフサイトミーティングのスタイルで対話する時間を多々組み入れています。まずは「自分」に立ち返り、自分を主語に語ること、それが自分にとっての意味目的をとらえ直し、自分のあたりまえが周囲にとって当たり前でないことに気づくことにつながります。


そもそも「農業とは?」から考える

農業分野の職員にとっては、真っ先に思い浮かぶのが、日頃最も関わりの深い生産者のことでしょう。しかし、人口減の地域で、高齢化、後継者がいない生産者の問題と向き合っているだけでは、根本的な解決策を見出していくことは困難です。ついては「そもそも農業とは何か?」の原点から問い直し、農業政策を考える基礎をとらえ直す講義が最初にセットされています。


消費者につながる一連の流れを体感する

農業によって生み出される農産物は、流通過程を通じ、商品となり、食品として消費者に届けられます。価格は価値になってこそ、食した人の満足につながるものです。

研修の一週目には、川上から川下へ移っていく経路を辿り、食品メーカーの工場や小売店の売り場を視察して、管理者から話を伺います。大都市東京で食の安全安心を支えている衛生管理と、数ある競合店の中で消費者から選択される販売にしのぎを削っている現場を体感することは、その後の講義を座学で終わらせない意志を持つことに役立ちます。


最先端を生み出している民のパワーを知る

昨今では、農業政策のバリエーションも多岐にわたっています。6次産業化、農業と福祉の連携、都市農業、都市と農村の交流、農業法人化など、それぞれの分野でトップランナーとなっている人たちは、いかにして生まれ、これからどうあろうとしているのか。民間の実践者から直接話を伺います。

公務員とは大きく異なる価値観を持つ人たちの実践・体験談からは、自身の価値観を揺さぶられることが多くあることでしょう。自立している民間人にとって、地域や行政はどんな存在として映っているのか、行政の果たす役割、使命を見極めるヒントが得られます。


国の政策の見方、方向づけを知る

国の政策は、どこを見て、いかに方向づけられているのか。各省の担当管理職や事務次官から、法律や制度の前提となる情報のとらえ方や見方、考え方について話を伺います。

地方自治体職員のほとんどは、地域から出ることなく過ごし、国とのやりとりも上司や書面を介して行っています。それゆえ、ここでは政策の動向を単に“データ情報”だけでなく、“省の目線”に立って先行きを見通す姿勢とともに学び取ることができます。


グループで考え深める場をファシリテートする

数多くの種類の情報に一度に触れると、研修生の頭の中は、一週間目からほぼパニック状態に陥ります。これらの情報は、ただ見て、聞くだけでは消化、吸収していくことが困難なものです。

そこで、研修の二週目には、午前に講義を聞いた後、午後の時間全てをグループディスカッションに充てています。同じ情報を聞いていても人によって受け止め方は異なります。研修生どうしがお互いの気づきを知り合い、その違いがどこから生まれているのかを質問し合うことで、それぞれの地域の実態と講義との間にあるギャップが見えてきます。ともに考え合う場をファシリテートしていくことから、講義をより深く消化して、学び取っていくことができるようになります。


そして、これらのプログラムは、農林水産省から出向している職員が、教授として企画するだけでなく、すべての場に入って伴走、密着支援、指導しています。このことが、研修生の成長を支える大きな強みとなっています。

短期の研修は、終わってからが実践のスタートです。研修中に立案した政策がそのまま通ることは、めったにないかもしれません。それよりも、日々の実務の中で、この研修で培ったプロセスを少しでも再現して、新しい政策を企画立案することのほうが大切です。

研修も何年か積み重ねるうちに、一自治体から複数年参加している自治体が出てきています。研修経験者が増えれば、自治体内での実践もしやすくなることでしょう。今後は、研修生たちが自組織の中で実践ステップにつなげていくことを、指導教授とともに応援していきたいと思っています。

著者プロフィール

元吉 由紀子

元吉 由紀子

YUKIKO MOTOYOSHI

生活者起点で時代最適の価値を創造し続ける経営を実現できるよう、トップと現場の有志たちが連携・共振していくプロセスを一緒に築きあげている。

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