見えざるコストと風土改革(2)<br/> ~ 全社で展開される施策の落とし穴|コラム|スコラ・コンサルト
見えざるコストと風土改革(2)<br/> ~ 全社で展開される施策の落とし穴

見えざるコストと風土改革(2)
~ 全社で展開される施策の落とし穴

遠藤 咲子 | 2019.08.21

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見えざるコストと風土改革(2)<br/> ~ 全社で展開される施策の落とし穴


施策による社内業務の肥大化というロス



日本企業の高コスト体質の象徴として真っ先に指摘されるのが、人件費率で見たホワイトカラー職場(間接部門)の生産性の悪さです。しかし、本当の意味での効率でいえば「間接部門の要員が多い(=高コスト)」という数字だけを見るのではなく、それらの部署の働きがもたらす効果や影響といった結果についての冷静な評価をすることが大切です。

たとえば、管理部門は経営の方針を受け、コンプライアンスやワークライフバランスといった、そのつどの課題に対応するためのさまざまな施策を現場に向けて導入・展開します。それら諸々の施策の推進や進捗管理などが「業務化」することが、じつは利益を蝕むロスコストの温床になっているのです。

ことに管理部門がその目的やプロセスを重視しないで、施策の普及・推進を自分たちの“仕事として”まじめにやればやるほど、それは現場の状況や感情を無視した一方的の進め方になりがちです。「やらせる改革」と同じような構図になってしまうのです。

職場には、つねに「あれをやれ、これをやれ」と上から施策が降ってきて、「実施計画の策定」「実施事項に関する報告」「定期的な成果測定や分析」など、まるで管理部がクライアントであるかのような内向きの仕事が増えていきます。それらの施策が一元的に調整されているならまだしも、似たようなことが複数の統括部署で行なわれたりします。

一方には、業務の効率化のような改善課題を抱える職場にとって、このような“仕事としての雑務”に手を取られる状況は、モチベーションが高まるどころか負担でしかありません。「やれと言われたから仕方なくやっている」という後ろ向きの気持ちで、価値を生まない内向き仕事につきあい続けることになります。

それによって、本来の仕事である顧客に向けた価値創造や価値提供のための時間、機会が全体として失われていく、という点が大きな問題なのです。


短所是正によるエネルギーロス




多くの改革の施策にみられる特徴的な視点に「短所是正」があります。すでに表面化している問題に対処するというスタンスの場合、導入する側がターゲットにしがちなのは、「意識が低い」「成果を出さない」など、いわゆるローパフォーマー群です。2:6:2の法則でいうなら、下位の2割が焦点になるのです。

では、下位の2割が是正されれば、会社は良くなるのでしょうか。

「短所是正」の考え方は、使いどころによっては効果的な半面、落とし穴もあります。たとえば、会社単位、部署単位で、あることをルール化し実行しようとしたとします。ところが2割の人がそのルールを守らないために問題が起こってしまった。そのとき、よくあるのは、一部の人が起こすルール違反をなくそうとして、ルールそのものを全体的に強化する、というケースです。

リスクマネジメントなどによく見られるのですが、問題が出るたびに規定やルールを厳しくしていって、気がつくと現実離れした重装備の対応策になっている。これがエネルギーロスにつながるのです。

本来ならば、少数の人が起こしたルール違反は個別に対処すべき問題です。それが少数にとどまらず、5割の人が守れないようであれば、ルール自体の背景や方針が伝わっていないのかもしれません。その場合は、あらためて目的や意味を共有する機会を設けるなどの手立てが必要です。さらに、それが8割であれば、仕組み自体に不具合があるのかもしれないという想定で、見直し・改善していく方向での対応が求められます。

このように状況を事実ベースできちんと捉えて、信頼を基本にした適切なアプローチをしないと、ハイパフォーマーをはじめ全体としてのエネルギーを浪費することにもなるのです。


相談できないことによる時間ロス


職場の中にも「不信感」によって発生するロスコストがあります。これは、人のつながりや関係性が築かれていないために起こる、組織環境の悪化によるロスです。

たとえば、誰でも難しい問題に直面して判断を迫られると、どうすればいいだろうかと悩みます。それ自体は、まったく健全な悩みです。そんなとき、職場の誰かに気軽に相談できれば、親身なアドバイスやアイデアをもらえたりして、悩みが解消されるかもしれません。たとえ解決しなくても、人に相談するだけで気持ちはかなり楽になります。

それに対して、相談できる人がいない、相談すべき相手が“相談したい相手ではない”場合はどうでしょう。悩んでいることすら打ち明けられずに悶々としながら時間ばかりが過ぎていきます。じつは、そんなふうに周りに相談できず、悩みを抱え込んでいる組織人は少なくありません。これは不健全な悩みなのです。

「報・連・相」とは誰もが知っている仕事の基本ですが、じつは報告・連絡と「相談」では大きな違いがあります。報告や連絡は、すでに明らかになっている結果や決まったことを伝える行為です。扱う情報は“データ”ですから、会議や報告書など形式を決めれば、一対大勢で機械的に伝達することもそれほど難しくはあ
りません。

それに対して、相談の場合は、その内容が本人にしかわからない事実、主観を含む状況だったりします。打ち明けたところで相手には判断がつきにくいと思われること、本人にも未整理で自信の持てないこと、というのは相談する相手を選びます。

うまく説明できないと馬鹿にされる、そんなことも判断できないのかと評価される、理解や関心を持って聞いてもらえない、さっさと答えを出して処理されてしまう。あるいは、相談することで弱みを握られたくないなど、相手との心理的な距離や関係に大きく左右される行為なのです。

上司と部下、社員間の関係性が「言ってもムダ」「言うと損をする」と思えるような信頼のない状態だと、たとえ困り果てていたとしても周囲には相談できません。自分で何とか解決しなければと悩み続けるか、隠すか、しかないのです。

仮に、それが会社にとって重大問題になるかもしれないミスや不始末だったとしたら、口に出せないけれど解決のほうは急がれる、という進退きわまる状態に陥ります。本人はずっと気がかりで仕事も上の空、一方、相談が遅れてしまうと部門や会社への損害は大きくなります。

このように、組織の風通しが悪く、社員が誰にも相談できずに孤立している状態だとしたら、会社の中に問題はどんどん積み上がっていきます。その結果、長期にわたって解消されない問題の不良在庫を抱えることになるのです。

(本コラムはプロセスデザイナーの著書から転載・更新したものです)

著者プロフィール

遠藤 咲子

遠藤 咲子

SAKIKO ENDO

特に販売・営業、サービスの業種を得意とする。「経営への信頼を高める」という信条をつねに念頭においたサポートを心がけている。

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