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「もしも改革担当部署に配属されたら…」(2013年7月)

今回は、このコラムへの感想ご紹介の第二弾。熊本県人吉市の総務課長から、課を横断した検討会議の運営方法についてです。

採択、不採択に 至ったプロセスが明らかにする

◆◆◆ 以下メールからの抜粋です ◆◆◆

「事務局力」とは、「なるほど・ザ・ワード」と思いました。私も役目柄いろいろとプロジェクト(以下、PJ)やワーキンググループ(以下、WG) を運営したり参加したりしてきましたが、なかなかに難儀なものですよね(汗) ワーキングのメンバーもさることながら、いかにトップやその他の一般職員の皆さんを巻き込むか。いつも悩みの種です。

それでも、うちのファシリテーターのさきがけである先輩職員から不肖私にいたるまで、試行錯誤してきた経験から、PJやWGを運営 するときに活用しているひとつの「型」のようなものが当課にありますので、お伝えできればと思い、メールさせていただきました。
これは、昨年行なった組織機構改革のプロジェクト運営などで活用しているものです。

肝といいますか、留意したことは次のとおりです。

  1. PJチームをしっかり組織決定されたトップダウンの下部組織として位置付ける(うちでは、特別職、部長で構成する行政経営会議の下部組織となります)。
  2. 事前に全部署から現在の生の声(アンケート調査の意見等)を集約しておく(できればヒアリングも)。
  3. 首長(トップ)の思い、考え方は、「市長講話」として、必ず第1回会議で、PJメンバーに肉声で伝えてもらう。
  4. 会議の運営は、ホワイトボードを活用して、意見等をできるだけ「見える化」する。議事録はその板書を写真にとって配布する。
  5. 第2回以降では、(2)の庁内の意見等と(3)のトップの思いや考えを踏まえて、課題と解決案のアイディア出し。
    ※ブレークスルー思考やKJ法を活用したブレストを行ないます。
  6. 第3回は、(5)で出た論点の整理(特に複数のPJメンバーから出た課題・意見をもとに)と議論の方向性の決定。
  7. 第4回以降は大きい論点をひとつずつ深堀り。数回重ねて中間案を集約した時点(論点が割れていれば複数案でも可)で、庁内パブリックコメント、経営層(うちでは部長等)へのヒアリングを実施。
  8. 途中経過のPJ会議での議論過程や意見集約状況は庁内LANで随時公表していく。案の変遷がわかるように。
  9. (6)の庁内意見等を踏まえて最終PJ案の検討、決定。
  10. 最高意思決定機関(うちでは行政経営会議)での議論を経て最終決定。しかし、差し戻しも予想して、再検討のための会議を一回分予定しておく。

 

以上のように、留意したところは要所要所での全体の「巻き込み」ですが、当然、すべての意見を取り入れることはできないわけで。
どうしても二律背反する議論のうちの一方の立場がとられるときも多々あります。ただ、その意見については、しっかりとPJで受け止めて、議論の遡上に上ったうえで不採択となったことは伝えていきたいし、 何を大事にしてどのようなコンセプトで進められていったかを常に目に見えるようにしていきたいというスタンスは大事にしてきたつもりです。

それでも、ご批判、反発はやはりあります。それはそれで甘んじてお受けするしかないのですが。ただ、しっかりと多方面から議論 ができていればその経過と理由をきちんと説明できるので、何の考えも議論もなくて意見が採択されるよりは、むしろ採択、不採択に 至ったプロセスが明らかであるほうが大事なんだと思うようにしています。

◆ ◆ ◆

全員が当事者として参画する機会と責任を持つ

役所では、これまで意思決定に至る検討プロセスはほとんど開示 されず、事務局が事前に各課と調整して素案を考え、会議ではほとんど意見が出ないまま決議されていくスタイルをとっていました。 これによって、「Planをつくる人」と「Doする人」の間にギャップ ができ、いざ実行する段階になって、現場ではいきなり降りてきた 指示に反発の声が上がったり、やらされ感や不満を抱えたまま面従 腹背してしまうことがあります。

それに対して、検討プロセスを見える化する場合には、周辺から 意見や批判を受けて、案がすんなりと通らない危険性が高まります。 しかしその反面、「全員が当事者として参画する機会と責任を持つ」 ことになるのです。このことは、Planをつくるときだけでなく、そ の後実行する段階においても大きな効果をもたらすでしょう。なぜなら、現場のメンバーが予め情報に触れてPlanの必要性に関する理 解や納得をしていれば、実行においても抵抗感が減り、協力を得やすくなるからです。

さまざまな改革ネタを検討する会議の事務局を担う機会の多い総務課 職員から寄せられた二通のメールから、カタイ役所の組織風土にも少しずつ風穴が開き始めていることが感じられました。お二人からは、ぜひその後の様子についても話をお聞きしたいと思っています。