日本経済の規模をみるGDP(国内総生産)は、20年前の1992年では488兆円。2012年の集計はまだこれからですが、470~480兆円台にとどまるのではないかと思われます。2000年前後には500兆円を超える一時的な成長が見られたものの、ここ20年、世界の主要国の中で経済が成長しなかった国は日本だけという「失われたままの20年」の現実は、果たして「成熟」のひとことで片づけられるのでしょうか。

ここで言いたいのは、経済成長率の問題ではなく、日本の潜在的な部分までをも含んだ成長のポテンシャルが限界に達しているのか否か、という点にあります。

成長の余地や可能性が活かしきれていない

風土改革の現場で感じているのは「成長の余地や可能性はまだまだある」ということです。ただ「素晴らしい機能、高品質の製品は必ず売れるはず」という国内論理と、右肩上がりの成長モデルに限界を感じてはいても、現実にはなかなかそこから脱却できないというのが多くの企業の実情でしょう。直近の日本経済の需給ギャップは15兆円ほどの需要不足(供給過剰)があると言われていますから、この構図があてはまる業界は決して少なくないはずです。

私が生まれ育った宮城県は3・11東日本大震災によって甚大な被害を受けました。しかし、懸命に復興を支えるボランティアの方々など志の高い市民や組織の存在は、日本の未来をつくる力、未来を照らす明るい材料として顕在化してきました。

「だれかの役に立ちたい」「もっと成長したい」、これは被災地支援で多くの人たちから聞かれた、人が根源的に持っている思いなのかもしれません。ただ一方で、この言葉には違和感もありました。それは「会社や仕事の中では実感できない…」という枕詞がつきまとっていたからです。

「だれかの役に立ちたい」「もっと成長したい」という動機や欲求はビジネス本来の考え方とかぎりなく一致しているにもかかわらず、会社や仕事の中ではそれが生かされないというのはどういうことなのでしょうか。この奇妙な現象が、潜在的なポテンシャルを秘めながらも成長への足踏みを続けている日本の深層部にある問題なのではないか、というのが私の仮説です。

人と会社がともに成功する環境をつくる

先日、北関東地域で成功しているある会社にうかがう機会がありました。この会社では、年間稼働日数を大きく上回る日数を研修にあてています。その徹底ぶりもさることながら、研修の中身のほうも一貫して「売るな」「貢献しよう、役に立とう」という考え方で貫かれているのが特徴です。「すべての人が『認められたい』『成功したい』と思って社会参加している。企業はその『願い』を実現するための最高の支援者でなくてはならない」これが会社の代表者であるH社長の強い思いでした。

会社の考えに人が従うのか、それとも人の思いを会社が支援するのか。極端な対比ですが、結果的に成功し続けている会社は後者の考え方を色濃く持っているのではないかと思えます。

人が根源的に持つ「だれかの役に立ちたい」という思いを、会社というプラットフォームを使ってビジネスで結実させる。会社が個人を応援し、個人の思いをビジネスの場で開花させていくことは、会社の持つ価値創造のポテンシャルを高めて、人と会社がともに成功する環境をつくることにつながるのではないかと思うのです。

世の中や日本の未来にとって役に立てる存在であるために

そういう環境づくりの担い手として、これからの時代、本当に世の中や日本の未来にとって役に立てる存在であるためにはどうあればいいのか、という普遍的な問いに向き合いながら、私たちは風土改革の方法論を用いたコンサルティングを行なっています。

ただ、この担い手は私たちだけに限定されるものではありません。広く世の中を見渡すと、個人や会社や業界・分野の境界を超えて新しいビジネス、組織のあり方を本気で模索している人たちは多数存在します。

これからスコラ・コンサルトでは、従来のコンサルティングサービスにとどまらず、そうした担い手を増やしていくためのプログラムや道具を提供することで、これまでお客様と一緒に風土改革の実践の中で培ってきた方法論を社会に還元していきたいと思っています。

今年一年間、スコラ・コンサルトに関わってくださった皆様に心より感謝を申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。