変化への対応力を高めること(=スピード経営)

変化への対応力を高めること(=スピード経営)が、企業にとってますます重要な課題になっています。
この課題に対して、ITや制度・ルールなどさまざまなハードが導入されてはいるものの、環境変化に対する組織の反応や方針実行のスピードは依然として高まってはいないように思います。

そこに、組織風土・体質の問題が立ちはだかっていることは多くの企業で実感されていますが、スピード経営を可能にする風土の実現が、つねに精神論に終わっているように見えるのです。

組織のスピードが実現する7つの条件

組織のスピードとはどういう条件のもとで実現するかというと、

(1)現状の積み上げ思考ではなく、「そもそもどうあるべきか」という全体の絵が共有されている。
(2)「どんな意味があるのか」「その目的は何か」「どういう背景があったのか」などの大事な情報が共有されている。
(3)制約条件が明らかになり、それを乗り越える大まかなシナリオが描かれている。
(4)正しいと考えることを(仮にそれが間違っていたとしても)正面切って主張できる環境がある。
(5)対話を積み重ねる場があり、協力が習慣化されている。
(6)「衆知を集めて責任者が決める」という意思決定が定着している。
(7)試行錯誤が奨励されている。

こうした条件がない場合、組織のスピードを阻害する風土・体質的な問題というのは、たとえば以下のような形で現われます。

組織のスピードを阻害する風土・体質的な問題

≪経営幹部層≫
・実務の課題解決に長けている人は多いが、経営的視点での課題創出は社長一人に依存している。
・役員同士が、ぶつかり合うことを避けて言うべきことを言わない(相互不可侵)ために、問題が顕在化しにくい。
・自分の経験や知識、現状の能力を超えることに挑戦しようという人が少ない。
・新たな取組みの目的や意味について、自分の意思と言葉で社員に語ることができる人が少ない(すべきことを伝達するだけになっている)。
・提案の内容よりも、形式や手続きを重んじる傾向が強い(議論のテーブルに乗るまでに時間がかかる)。
・「部門(部下)を守る」という部門長としての責任感が、実は従来のやり方を守ろうという抵抗勢力になっている。
・会議では、攻める側と守る側の応酬になり、最適解を出すための積み重ねる議論ができない。最後は、「社長に決めてもらおう」という結論になる。

≪社員層≫
・義務感で目の前の仕事をこなすだけで精いっぱいの人が多い。
・仕事に対する関心の範囲が自分の業務の効率化に集中しているために、チームとしての目的に対する連携が生まれない。
・判断の拠りどころが持てていないために自分で決められない(判断の拠りどころが持てていない)。
・疑問に思うこと、よくわかっていないことを問い返して確認できないままに仕事をしている。
・問題を感じていても、問題提起をしたり、それを主体的に解決しようとする人は少ない。
・新しいことを始めるときには、ゴールまでの道筋が明確になっていないと、はじめの一歩が踏み出せない。

このような状態は、上からの指示やルール化、個人のスキルアップなどで簡単に変えられるものではありません。
自分たちの組織のやり方として常識になっている「とうてい意味を感じられない仕事」を見直して、本当に意味のある仕事ができる環境条件を整えていくこと、が大切なのです。