対立から仲間へ─。変化しはじめた意識。

 ─ 実際にプロジェクトメンバーとして関わった水鳥様と亀谷様に伺います。

  2012年6月から帳票を標準化するプロジェクトがスタートしましたが、どのように進められたのでしょうか。

水鳥 各拠点に、持っている帳票を全部出してもらうところからスタートしました。最初は持っている帳票全てをなかなか出てきませんでした。それを見て、上司の方々が各拠点を回り、プロジェクトの目的や理念を浸透させる機会を作って下さいました。

その結果、今回のプロジェクトの主旨を徐々にみんなが理解しはじめ、やっと帳票を出してくれるようになりました。

前回のプロジェクトで統一した帳票は238枚と聞いていたのですが、実際ふたを開けてみると1,044枚もありました。

─ なぜ各拠点は帳票を全て出せなかったのでしょうか。

水鳥 以前実施した帳票の標準化では、本部が考えた帳票を現場で使うという形でした。しかしそうして作成された帳票は、実際の現場で使用できるものではありませんでした。そのため現場では、実際には仕事がしにくくならないように一部の帳票を各拠点で保管していました。

また、当時は自分達の意見を言う場がありませんでした。そのため、上からの指示に従うしかないと思っていたと思います。

― 隠れていた帳票が思いのほかたくさん出てきて、どのようにプロジェクトを運営していきましたか?

亀谷 私たちは現場の声を聞くことを大事にしました。

何度も話し合う場を持ちましたが、当初は各拠点の思いとして、「私たちが使っている帳票を使って欲しい」とお互いに主張する一方でした。なかなか他の意見は聞き入れにくく、いわば対立関係が生まれ、スムーズに話し合いが進みませんでした。

「こういう理由でこの帳票を使いたいです」「使い勝手がいいからこの帳票が使いたいです」という意見が多かったです。

 

水鳥 私は当時、現場にいました。使い慣れている帳票を使いたいという気持ちはとてもよくわかりました。でも、そのままでは今回のプロジェクトは進みません。

「その気持ちも分かるけど、違う見方もあるよね」と、相手の気持ちを受け止め、言い分を理解するようにしました。また、全体にとって何がいいのかという意見を伝えるようにしました。

話し合いを進めていくうちに、メンバー間に良い意味で遠慮がなくなり、本音に変わった議論ができるようになったように感じます。自分の部署だけよければいいのではなく、みんなが使えるものにしようと変化していきました。そしてメンバーでいろいろと考え、決めていく機会が増え、自分たちの仕事の「やらされ感」が無くなってきました。

プロジェクトが進む中、いつの間にかみんな自分事になっていき、「ローカル帳票を少しでも少なくできるように頑張ろう」という気持ちや、「いつまでに何枚にしよう」という目標をメンバーで考え、決めることができるようになっていきました。

― 1,044枚を22枚にするのはたいへんな作業です。どう感じていましたか?

水鳥 最初は「通常業務で忙しいのに、何で私はこんなにプロジェクトに時間を使わなければいけないんだろう」と思っていました。どのメンバーも通常の業務をしながら、時間を捻出してこのプロジェクトに関わっていました。そのため、業務がどんどんと溜まっていきました。

― こなせない通常業務はどうされたのでしょうか。

水鳥 自部署のメンバーが手伝ってくれました。プロジェクトがスタートした当初は、周りの人たちは、私が何をしているのかわからなかったようです。

上司(関口さん)がプロジェクトの理念や目的、進捗状況、メンバー間で交わした議論の内容等について、みんなに説明してくれたことで、徐々に理解が広まっていき、だんだんと手を貸してくれるようになりました。みんなの協力のおかげでこのプロジェクトに集中することができたと思っています。

亀谷 最初の頃、プロジェクトメンバー以外はプロジェクトの内容や進捗状況を知る機会がなく関心も薄く、帳票についての問合せにあまり協力的ではありませんでした。やはり、「何をやらされるのか」と言う警戒心もあったと思います。

でも、上司が定期的にプロジェクトの目的や進捗をみんなに共有する時間を設けてくださり、上司やプロジェクトメンバーの本気が伝わり、だんだんと理解者が増えました。一生懸命頑張っているとまわりが応援してくれるようにもなりました。

関口 マネージャー7人全員は、みんな過去の失敗(帳票が減らず、プロジェクトが再スタートした経験)は繰り返したくないという思いが残っていました。ですが、本部は帳票が統一され標準化されていると思い込んでおり「今後どうすれば良いかわからない」状況でした。

そんな時に、マネージャーが集まってmtgをする機会があり、上司から「なんでも言っていい。聞くぞ。」「出来ていないことは出来ていないと言っていかないと組織は良くならないぞ」「マネージャーが本気出さないと成功しないぞ」というメッセージをいただきました。

その上司のメッセ-ジを聞き、マネージャーも「今回こそは成功したい」と思いましたね。