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自治体におけるメンタルヘルスの実情から「働く人のための組織」を考える
私は、職員として働いてきた自治体組織の中で、人が自分らしく動くことができなくなっていく状況を間近に見てきました。地域社会の役に立ちたいと公務員をめざして試験を突破し、夢を持って役所に入ってきたはずの若手職員が、しだいに元気を失くして表情が乏しくなっていく。能力も人望もある先輩職員がまったく輝かずに毎日うつむいて黙々と働いている。
個人を取りまくこうした環境を少しでも変えられないかと私は考えましたが、官僚制組織の一職員にできることは限られています。
そこで私が試みたのは、対話の機会をつくることや、プロジェクトチームのような別組織で新たなメンバーとの関係性をつくるなどの取り組みでした。
うまくいったことも、いかなかったことも経験しました。その中で、組織に対する不満を持っている人や元気がなくなっていた人が、自分たちで現状を変えていきたいと主体的に変化していったことに大きな喜びと使命のようなものを感じ、外に出て、それをもっと専門的に学びたいと思うようになりました。
もともと私はあまり体が丈夫ではなく、中学生の頃は入退院を繰り返していたことから、健康で普通に学校に通う生活を送ることの難しさを知っています。だからこそ、せっかく健康な人が意欲や気力を失い、ひどい時には心が病んでしまって働くことが難しくなる、そんな状態を引き起こしている「組織」というものに対して、何とも言えない悲しい感情がありました。
最近では、組織で働く人のメンタルヘルスケアやウェルビーイングなどが社会的にも大きな課題になっています。しかし、メンタル不全の人に対する組織内での具体策というのは限られていて、一方では、根性がないとか時代のせいだとか、いまだに個人を責める論調を目にすることもあります。
本当にそうなのでしょうか。その個人があなたの大切な人だった場合、同じようなことを言われてどう思うのでしょうか。また、そんな組織なら辞めてしまえばいいという考え方もあります。確かに、場合によってはそれが一つの選択肢といえるでしょう。しかし、年齢や能力、背負っているものなどを考えた時、辞めるという選択ができない人もたくさんいます。
こういったことを思いながら、私自身も組織に対して何ができるのかを問いつつ、アシスタントプロセスデザイナーとして働いています。
組織を変えるだけではなく、自分にも変化の余地がある
プロセスデザイナーになるために働き始めて、この間、さまざまなことを学びました。自治体と民間企業の組織の違い、対話の場づくりや対話を通して場を深めていくやり方、そのための知識や手法は画一的なものではなく、プロセスデザイナーそれぞれが試行錯誤していることなど。特にオフサイトミーティングという手法については認識が大きく変わりました。
たとえば入社前は、オフサイトミーティングで最初に行なうジブンガタリにそこまで時間をかけるくらいなら、早くミーティング全体を進めたほうが良いのではないかと思っていました。みんな業務で忙しく、人を集めること自体も難しいため、ミーティングにかけた時間に見合うだけの目に見える効果、わかりやすい結果を求められていたからです。
しかし入社後は、このジブンガタリの重要性や可能性を感じています。
日々の仕事の中でどれだけの人が自分のことを話し、聞いてもらえる機会があるでしょうか。また、モヤモヤしていることを感じるままに言うことができ、共感してもらえる場があるでしょうか。タイムパフォーマンスのような効率性が重視される企業の中で、時間もかかり、効果もわかりにくい場をつくることは難しくなっているだけに、なおさらその必要性を感じるのです。
ジブンガタリのような場をつくることで関係性の質が変わることを実感した人は、職場の身近なメンバー同士であっても、互いの人となりを知り合うことの重要性に気づきます。また、オフサイトミーティングで行なう気楽でオープンな対話を通して参加者が元気になることも実感しています。
もう一つの気づきは、人は自分の内面と向き合うことからも変わるということです。今までは漠然と、人は外からの環境(組織とか)の影響を受けて変化するものだと考えていましたが、他者との対話を深めながら自分の過去に向き合う体験をすることで思考パターンが変化する可能性もあることに気づきました。
もちろん外からの影響も大きいとは思います。でも、自分と向き合うことで周りの見え方、関係のとらえ方などが変化していくこともあるのだと実感できたことは、今後のための大きな収穫になりました。
実際、プロセスデザイナーの先輩たちは、自分自身と向き合うことで人は変わりうるという実感をもって、他者にエネルギーを伝播している感じがします。
自分の好きなことが仕事に近づく~サウナを活用した研修プログラムの開発に携わって
少し話は変わりますが、先日スコラ・コンサルトでは「次世代経営層向けリスキリングプログラム」という新サービスをリリースしました。
このプログラムは、コロナ禍で飛騨にあるホテルの集客に悩まれているHIDAIIYOのCEO松場慎吾さんから、施設という器はあっても体験型のサービスなどがないため、何かでコラボできないかという相談を受けて実現したものです。私は長崎出身で入社後も九州に住んでおり、地域のリソース活用などには興味があって参加しました。
プログラム開発の話し合いをしていく中で、松場さんをはじめHIDAIIYOのメンバーはみんなサウナが好きで、施設にも基本的にサウナが併設されていることがわかりました。
じつは私もサウナが趣味で、全国のサウナめぐりをしています。サウナは体の疲れがとれるだけでなく、脳波や自律神経を整える効果があり、本質的なこと(この先自分は何をしたいのかなど)を深く思考をするときに利用していました。このサウナーとしての個人的な意見が生かされたように思います。
飛騨の自然×豪奢な町家ホテル×サウナでリスキリング研修
次世代経営層向けリスキリングプログラム
前述したように、私は働く環境としての組織に対する問題意識を強く持っています。しかし、人が個性を発揮していきいきと働くためには、自分の好きなことを仕事に生かせる機会があることも、思った以上にやりがいにつながるものだと感じました。
スコラ・コンサルトでは入社後にメンバー一人ひとりと全員面談をしたり、月に1回全メンバーでいろんなテーマについて考えるミーティングを行なっています。そういう場を通じて、自分は何者で、何が好きで、どういう問題意識があるかなどを日常的に話しているため、私にもこういう機会が与えられたのだと思っています。
自分の好きなことを生かすといっても仕事には直接結びつきにくいものですが、少なくとも、自分は何が好きなのかを自覚することや、日頃から職場でお互いのパーソナルな部分を知り合えるコミュニケーションをとることで生まれる機会があることを知りました。
今後は自分の問題意識や違和感、好きなことを大事にしながら、プロセスデザイナーとして自ら変わりたい組織や個人に伴走していければと思います。