レディネスという用語は、物事を学んだり、行動するための心身の準備ができている状態を指します。企業にとって、新入社員や既存社員を効果的・効率的に育成するため、レディネスの把握が不可欠です。
レディネスを重視することで、その人にとっての仕事や学習の意味や必要性を精査できるため、意欲が高まり、行動の改善や成果につながります。
これからレディネスをわかりやすく解説していきます。

レディネスとは何か?

レディネス(readiness)という言葉の定義は、新しい物事を習得するにあたって、心身が健やかで、事前準備や前提条件が整っている状態を指します。
レディネスが高ければ、学習の効率が高まり、成果につながりやすくなります。反対にレディネスが低いと学習が非効率的になります。

レディネスの基本的な意味

レディネスとは「準備が完了している状態」という単語の意味であり、臨床心理学等の分野では学習するための準備ができた状態のことを指します。
1913年に心理学者・教育学者エドワード・L・ソーンダイクが発表した「レディネスの法則」の中で提唱されました。その後、1929年にアメリカの臨床心理学者アーノルド・ルシウス・ゲゼルによって「成熟優位説」が提唱されました。
ゲゼルは双子の小児に対して、階段登りの訓練を行いました。その結果、人を発達させるためには早期に長時間の訓練を行うよりも、年齢に関係なく、適切なタイミングで短期間の訓練や支援を行う方が学習効果が高いことを明らかにしました。

学習におけるレディネス

レディネスのある人は興味関心がある状態で学習することができます。レディネスがある時は、学習する必要性があると感じているため、学習によって良い影響が期待できます。言い換えると、レディネスがない時はいくら学習しても、期待したほどの成果や効果が得られないといえます。

テストとレディネスの関係

テストとレディネスは密接な関係にあります。学習したことをテストで検証すれば、学習者の理解度が分かります。テストを実施した後は理解できた部分は評価し、理解できていなかった部分は具体的に改善に向けたアドバイスを行ないます。
また、個人のレディネス自体を測定する特性検査もあります。

レディネスの重要性

レディネスを高めるためには、学習することの重要性を本人が気づく必要があります。そのため、担当する業務の中で、現在自分が学習する必要がある経験やスキルがあることを認識しなければなりません。
近年では子供の教育分野だけでなく、ビジネスの分野でもレディネスが注目されるようになりました。レディネスに関して適切に対策を講じることで、人材の成長を促進し、組織の競争力も高めることができます。

新社会人の育成における効果

レディネスは新社会人の育成に役立ちます。新社会人に必要なスキルとして、社会人基礎力があります。新社会人は未経験の仕事が多いため、仕事に対する学習効率を高め、早期に戦力化することが必要です。その効率化を高める要素がレディネスです。
企業でいかに良質な研修やOJTを実施しても、それを受ける新社会人のレディネスによっては成長度合いに差が出ることがあります。

ミスマッチの解消によるメリット

レディネスを高めることで、社員と企業のミスマッチの解消に役立ちます。ミスマッチは、入社前と入社後のイメージに対するギャップが大きいことなどが原因です。そのため、採用活動では正直に自社の情報を伝えることが必要です。
また、社員のレディネスが高ければ、積極的に行動するため、異動後の新たなポジションに早期に馴染みます。

早期離職防止の取り組み

レディネスは早期離職防止につながります。入社後は誰しもギャップは感じるものです。そのため、そのギャップを抱かせないようにインターンシップや内定者研修などを導入し、レディネスを高める機会を作ることが必要です。
レディネスを高めることで、早期離職を防ぎ、採用や教育にかかるコストを抑えることができます。

社会の変化に即した人材育成

現在の社会では生産性の向上、DX推進など新たなスキルや知識を習得する場面が増えています。また、産業構造や技術の大きな変化に対応するため、リスキリングも求められています。
そのため、社員はレディネスを高めて、デジタルツールの使い方などを学び、新たな業務に取り組む必要があります。

レディネスの活用場面と種類

レディネスは多様な活用場面や種類があります。活用場面でいえば、子どもの早期教育やビジネスだけでなく、医療や保育や看護の現場などがあります。
レディネスの種類でいえば、リーダーシップやチームワークといった組織や企業の生産性を高めるためのスキルがあります。
このようにレディネスのニーズを把握することで、より効果的な教育プログラムや研修を実施することができます。

就業レディネスとは

就業レディネスとは、学生から社会人になる前に心の準備が整った状態をさします。就職活動を通して、自己理解や問題解決力が高まり、社会人としての自覚が高まります。そのため、就業レディネスが高い人は入社後に積極的な行動が増えて、早期に活躍する可能性が高いといえます。

職業レディネスとは

職業レディネスとは、特定の仕事や業務に対して興味や関心、自信を持ち、期待された役割を遂行できる準備が整った状態のことです。
職業レディネステストを実施することで、職業レディネスの高さを測定できます。職業レディネスが高ければ、円滑に業務を遂行することができます。

デジタルレディネスとは

デジタルレディネスとはデジタル化への準備が整っている状態を指します。
社内にデジタルの知見と環境があり、デジタルレディネスが整った人材が活躍することで、DXが推進しやすくなります。
そこで、企業は社員にITに関する考え方やスキルを習得するためのトレーニングを提供する必要があります。

インターンシップでの活用

レディネスを高める方法の1つにインターンシップがあります。
インターンシップとは学生の職場体験を通して、企業や仕事への理解を深めてもらう制度です。
インターンシップを実施することで、入社前後のイメージのギャップを減らし、定着率や就業レディネスを高める効果が期待できます。

企業内研修での応用

他にレディネスを高める方法として、企業内研修の実施があります。
ただ、講師が一方的に説明するだけの研修では、社員のレディネスを高めることは難しいといえます。
レディネスを高めるためには、研修前に例文などを用いて、研修の目的や価値などを明確に伝えることが必要です。
研修の効果が高まらないのは、研修そのものの内容ではなく、研修前の社員の姿勢作りや研修後の実践をフォローする仕組みがないことが挙げられます。

メンター制度の活用法

メンター制度とは、経験豊富な社員を相談役として配置し、新入社員もしくは後輩の指導役になり、サポートすることです。メンター制度により、社員は上司には相談できない悩みを話すことや、先輩の体験談を直接聞くことができます。
メンター制度により、社員がキャリアについて考えやすくなります。

越境学習とは

越境学習とは、自社を離れて、これまでとは異なる環境で仕事をすることによって、視野を拡げたり、新たな視点を獲得する教育方法のことです。
越境学習の目的は慣れ親しんだ環境からあえて離れて、異なるバックグラウンドを持っている人達と働くことにより、これまでの自分の仕事のやり方を客観視することです。
越境学習を実施する際は事前に動機づけを行い、自分の強みや弱みなどを振り返り、目標を立てることが重要です。

社会人大学とレディネス

社会人大学は、働きながら学びたい人のための学びの場です。
社会人が生涯にわたって学習を続け、必要に応じて仕事と学習のサイクルを繰り返すことで、より実践的に学ぶことができます。

レディネスのメリット

レディネスを高めることは多くのメリットがあります。レディネスが高ければ、学習内容に興味を持ち、効果的にその内容を吸収することができます。
その結果、固定概念に縛られず、前向きに業務に取り組むことで、成果につながりやすくなります。
また、学んだスキルを実務に活用する機会が増えることで、キャリアアップにもつながります。

人材の確保のためのレディネス

人材の質と量を確保するためには、社員のレディネスが重要です。人手不足が進み、限られた人材で成果を出し続けるためには、社員の成長意欲や貢献意欲を高めることが欠かせません。
社員のレディネスを高めることで、効率よく質の高い人材を育成することができます。

生産性向上に寄与するレディネス

レディネスを高めて、仕事へのモチベーションが高まれば、労働生産性が向上するというメリットがあります。
社員のレディネスが高まれば、自主的な行動や積極的なチャレンジが増えるため、企業全体の生産性が向上します。

企業イメージの向上とその効果

レディネスが高まれば、企業イメージの向上にもつながります。そのため、社員のレディネスを高めるために研修制度や働きやすい環境を整備する必要があります。
社員のレディネスが高まることで、企業は新しい環境に素早く適応したり、前例のない業務に取り組むことで、企業イメージの向上にもつながります。

レディネスを活用する際のポイント

レディネスを活用する際は、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
まず、企業や組織内の個人が現在保有するスキルや知識をチェックすることが重要です。これにより、その方に適した教育プログラムや研修を実施することができるため、受講者の能力や意欲を高めやすくなります。
また、自社に適した職場環境を整えることで、個人や組織の生産性や人材の定着率を向上させることができます。

適切なコミュニケーションの重要性

メンバーのレディネスを向上させるためにはメンバーの話を傾聴し、丁寧にコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが必要です。これにより、仕事へのモチベーションが高まり、メンバーへの理解度や関心も高まっていきます。
メンバーから本音や悩みを引き出すためには心理的安全性を醸成することが必要です。

効果測定とフィードバックの実施方法

レディネスを向上させるためには効果測定とフィードバックを実施することが重要です。
レディネスを高めるためにはサーベイなどで対象者の現在のレベルを把握し、研修や教育プログラムの効果を検証する必要があります。
また、受講者から研修や教育プログラムに対する満足度や改善点などを直接フィードバックを受けることで、より詳細な効果を把握することができます。

レディネス理解を深めるために

レディネスの理解を深めるためには、レディネスに関する関連資料や参考書籍を調べることで、理解が深まります。
研究論文や専門書はデータやトレンドを取り入れているため、現状を認識しやすくなります。
また、インターネットを活用し、具体的な事例や成功事例を把握することで、自社に置き換えて考えやすくなります。

各種資料の活用

各種資料を活用することで、レディネスの理解が深まります。例えば、レディネスに関する専門書では、理論的な枠組みや実践的な手法を学ぶことができます。
また、ケーススタディを調査することで、他の企業や組織のレディネス活用の具体例などを把握することができます。さらにウェブサイトや専門誌では、最新の情報を把握することができます。

関連するオンラインセミナーへの参加

関連するオンラインセミナーに参加することは、レディネスを理解するために有効です。
セミナーではレディネスに関する専門家や実践者が話すことが多いため、最新情報や実践に向けた注意点などを把握することができます。
また、参加者同士でコミュニケーションをとることができれば、多面的な視点を得ることができます。
オンラインセミナーは車移動が必要な地方など場所の制約がないため、リアルよりも簡単に参加者が集まることで、その後のネットワークの形成も期待できます。