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リーダーシップとスポンサーシップ
従来から言われている「リーダーシップ」には、部下のモチベーションをいかに高めて目標達成に向かわせるか、というニュアンスがあります。その根底には、リーダー自身が直接、部下個人に働きかけるという前提があります。そういうニュアンスを持つ「リーダーシップ」という言葉に対して、私たちはあえて、新しいリーダーに求められる姿勢を「スポンサーシップ」という言葉で表現しています。現実には、リーダーが部下に対してやれることには限界があります。その埋めきれない部分については、部下同士が相互に関わっていくなかで満たしていく、というのが「スポンサーシップ」のベースにある考え方です。
最近、ある中小企業の社長からこんな話を聞きました。
突然、会社を辞めたいと一人の社員が辞表を出してきたので、その社長はなんとか引きとめようとして一生懸命に説得をしたそうです。結果として、その社員は会社を辞めなかったのですが、あとで理由を聞いてみると、じつは社長が熱心に引きとめたからではなく、二人の同僚が親身に相談にのってくれたために思いとどまった、ということでした。
その会社では、社員同士の関わりあいや仲間意識の薄さを問題に感じていた社長の意思で、会社をあげて風土改革に取り組んでいます。そういう会社ですから、辞めようとする社員を同僚が引きとめるなんて今までには考えられなかったことだそうです。
その一件で社長は、仲間というもののもたらす力の大きさをまざまざと感じ、同時に、トップのやれることの限界にも気づいた、というお話でした。
相互作用の生まれるような「場」づくりの重要性
多くの企業で合理化、効率化が進み、現場の忙しさも増してきている今日では、よほど意識していないと、社員同士の相互作用の機会はどんどん減っていきます(現時点でもかなり減っていますが)。
社員同士が職場でお互いに関わりあうことは、職場の情報交換や助けあいだけではなく、学習や主体性を促すことにも大いに関係しています。
逆に、お互いの関わりが希薄になることは、人の孤立化や変化に対する保守化をますます増幅させます。その意味で、これからの組織のリーダーは自分の力だけに頼るのではなく、社員同士の関わりが目に見えないさまざまなものを生み出せると信じて、そうした相互作用の生まれるような「場」づくり、働きかけ、仕掛けづくりをすることが重要なミッションになっていくでしょう。
「仲間意識を育てること」のできるリーダーが増えれば、より多くの社員や組織がハッピーになるだろうと私は思っています。