予めスキームがあるわけではなく、ゼロから創り出していく

「いい職場で働きたい」ということは、すべての人が共通して期待することでしょう。
しかし、「いい職場とはどんな職場かについて話し合ったことはありますか」と質問すると、ほとんどの人が「ありません」と答えます。
なぜでしょうか。

理由の一つとして、「人材」のとらえ方があるようです。
「いい職場にするために何が必要ですか」と問いかけると、多くの人が「忙しくて時間が足りないから、もっと人がほしい」という答えを真っ先に返してきます。
「人がいれば、それなりに仕事を回していける」「仕事のできる人がくれば、いい職場になれる」人を仕事を進める前提要件「定数」として見ているのではないでしょうか。

これは、所管する業務に既存のスキームがあり、同じ職位の人であれば同じように仕事ができるとみなされていたり、すでに習熟した人がいれば、職場内で教育・訓練(OJT)することができたりする場合にうまくあてはまります。

役所内には、法律に基づく業務が多くあるため、このとらえ方がこれまで強く表れていたのかもしれません。

しかし、地方分権や地方創生など、地域ごとに独自性のある事業ややり方を生み出し、実現していく時代になってくると、それが通用しにくくなってきます。
予めスキームがあるわけではなく、ゼロから創り出していく必要がでてくるのです。

人は職場で仕事をしながら育てていくもの

部署の仕事によっても、どんな能力をもつ「人材」が必要なのかが異なってくることになります。
また、求められる人材像も、常に固定しているとは限りません。
地域の戦略や住民との協働のあり方によって、役所の職員に求められる役割や能力も変化していきます。

「人がいればいい職場ができる」のではなく、「人は職場で仕事をしながら育てていくもの」という発想の転換が必要になってきているのです。

同じ人であっても、職場によって育ち方が変わり、仕事の成果の出し方が異なってくる、というわけです。
職場には、人材という芽(資源)を生かすスタンスで、枝や葉を伸ばしやすい環境を用意することによって、成長を促し、成果(果実)を出すところまで育て上げていく責任がかかってきます。
所属長は、この花壇(人材が育つ場)をつくる役割を担っている存在と言えます。

例えば、同じような自治体の事務を担当していても、
・どんな地域になることをめざしているのか(太陽の向き)
・何を目標とするのか(得たい果実)
・気楽に話や相談ができ、階層や部署を越えていかに情報を流していくのか(土壌耕し)
・いつ何を重視して資源を投入するのか(水や肥料の与え方)
・何を改革・改善していくのか(幹の伸び具合、葉の付き方)
・どのようにパートナーと協働する関係を築き、役割分担していくのか(枝ぶり)
など、どのように環境をつくるのかが、人材育成の重要な要因になってきます。

管理職は、これまで自分が育ってきた時代と、これから部下を育てる時代とでは、用意する環境が大きく異なっていることを認識しておく必要があります。

すべての自治体で、昨年度から人事評価制度が導入され、個人ごとに業績目標を掲げ、その達成度を評価するようになりました。
強く成果を求められる時代になればこそ、育て方を見直す時期にきています。
所属長には、人材の育成につながる、いい職場(花壇)をしっかり築いていく組織マネジメントが求められています。