方針の理解、浸透度の実態

社員の間での「方針の理解、浸透度」を「認知」「理解」「賛成・共感」という点で調査してみると、「方針は言葉として知っている」にとどまるケースが圧倒的に多く、社員が人に伝えられるほど方針の背景や意味を理解している会社は非常に少ない。また、方針のめざすところに賛成・共感はあっても、「社内の問題が多すぎて実現は難しい」という懐疑的な意識傾向を示している会社も多い。

これに対して経営者のほうは、「ビジョンも方針もきちんと示している、具体的施策も出しているのに、なぜ動かないのか。問題があるなら解決策を考えるなり、提案してくればいいではないか」と考えていることが多い。
この両者の認識のギャップはなぜ起こるのだろうか。

認識ギャップの原因

その原因をつかむために、社員から見た経営者のリーダーシップについて「情報感度」「信頼性」「変革的意思決定」という視点で調査をしてみると、社員は経営者に対して、「一方的な下達はするが、現場情報を吸い上げたうえでの意思決定は少ない」と見ており、その意思決定に対する信頼性が低いことがわかる。そのために、変革のメッセージが表明されても社員はトップの本気度が信頼できず、なかなか新しい試みに向かう動きが出てこない。しばしば変革が“笛吹けど踊らず”に終わるのはこのためである。

生き残りに向けて適切な経営判断をしていくために、経営者に求められるリーダーシップとは何だろうか。
経営の判断材料として、社員の意識や意見を含めた現場情報を大切にし、社員が課題解決に向かってやる気になる環境づくりをしていくことではないだろうか。

経営者に求められるリーダーシップ

しかし、経営者が一人でこのリーダーシップを発揮していくというのは、考えるほど簡単なことではない。方針の実行を確実なものしていくためには、経営者の思いや方針の意味を現場に伝え、また現場の実態を経営者に伝える「媒介機能」が必要になる。
つまり、経営者が自分のリーダーシップのあり方を問い直すことと、それをサポートしてくれる媒介機能としての参謀機能を持つことが方針実現への大きな鍵となるのである。