行政組織のキャリアデザインの難しさ

現在、国会に提出されている地方公務員法の一部改正案では、人事評価制度の導入等による能力および実績に基づく人事管理の徹底等が盛り込まれており、制度運営を取り巻く環境が変化しようとしています。また、年金支給年齢の引き上げに伴い、再任用職員が増加しつつあります。
審議会の論点として、職員の能力開発に関し、「千葉県人財開発基本方針」の「目指すべき職員像」にもとづき、職員のキャリアデザインを重視した支援を行なうとなっていますが、OJTおよびOff-JTが有効に機能していないことがあげられました。

2~3年ごとに異動する行政組織において、仕事生活の将来像を描くキャリアデザインがどこまで意識され、個人を動機づけられているのでしょうか。職員数が抑制される中、県庁組織のような多様な職務・職種を擁する組織において、どの程度キャリアパス(昇進モデル)を意識した異動が行なわれ、個人のデザインしたキャリアと連動していくのか、そのための支援が行なわれるのかということになると、現実的にはかなり難しいのではないかと疑問を持ちました。

行政組織の仕組みの中では、職員は自らのキャリアに関しては受動的にならざるを得ず、自らの職業生活のステップを描くキャリアデザインに一般化することは難しいのではないか。それよりも、異動した部署や職位で、この2年間でこうなりたい、こうしたいという短期的で具体的な動機づけによって頑張ったり勉強したりすることが、経験や人脈など、ジェネラリストとして次のキャリアへと繋がっていくのではないかと考えました。たまたま与えられた機会を活かし、能力を発揮して成果を出すことで成長し、その結果としてキャリアにつながる。予期せぬ出来事をキャリアの機会ととらえる、「プランド・ハプンスタンス(計画された偶然)」*という考え方に近いのではないかと思います。

セカンドキャリアで活用できる能力の発見

また、ジョブローテーションが短い中で、様々な業務を遂行することのできる能力が養われ、多様なステークホルダーの合意を形成する調整能力を求められる行政組織の職員は、民間とは違うコアスキルがあると考えることもできます。これまで培ってきた能力を棚卸してみると、セカンドキャリアで活用できる能力が実は発見されるのではないでしょうか。

定年退職後に活躍しているOBの話や民間企業で求める人材の情報提供を早めに受けることにより、様々な部署での仕事を通して伸ばすべき能力等をイメージしやすくなるのではないかと思います。

担当課の方たちは、民間企業の人材開発や定年延長の人材活用などについて、県の取組みの参考にしようと積極的にヒヤリングを行ない、比較したりもしました。重要なことは、行政組織で培った汎用能力をどのように伸ばし、評価するかということがキャリアとしてセカンドキャリアにも繋がるのではないかということです。

*スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって考案されたキャリア理論で、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定されるとし、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方。