進化する自治体の改善活動

私たちが昨年夏に大学と共同して行なった「行政組織の組織風土改革実態調査(人口1万人以上の市町村1362を対象に実施、有効回答数509件)」でも、全庁的に改善活動を推進する仕組みがあるという回答は、都道府県で87%、市区で54%、町村で37%となっており、行政改革において特に都道府県で仕組み化が進んでいることがわかった。
しかし、役所全体で改善活動の発表会を行なっているところは、都道府県で30%、市区で20%、町村では2%に留まっている。また、発表会を開催しているといっても、必ずしも改善の取組みが順調に進んでいるわけではなく、改善活動を推進する担当者からは、「活動に参加する職員がいつも固定化している」、「部署によって熱心に取組んでいるところもあるが、上司の理解が得られにくいところが多い」、「せっかく改善事例発表会をしても、聞きに来る人が少ない」など、活動の壁にぶつかっている声が数多く聞かれる。

そんな中で、先日訪れた京都府の「府民サービス向上成果発表会」では、活動の内容に進化が感じられるものになっていた。この発表会は、現在三年目を迎えている。一年目は改善のネタも比較的小粒で、現場近くによくある題材を取り上げた事例が多かった。二年目はいろいろな人が関わって改善のプロセスを継続する中で、活動を育てる人たちの創意工夫やチームワークが盛り込まれていた。三年目の今年は、部署間の連携、部内の施策推進サイクル、NPOを支える協働の仕組みなど、組織的に改善を育てる環境をつくる事例が半数近くを占めていた。
年々このように活動の質的な向上が顕著に見えている取組みは、実は数少ないのではないだろうか。活動の発表会も、ややもすると何年たっても似たりよったりの改善事例を集めて発表し合うイベント行事に終わっていることが多くあるからだ。そこで、京都府でなぜこのような進化を果たせているのか、改善活動の背景にある要因について考えてみた。

ひとつには、京都府では、2004年度から経営品質向上に取組んでおり、その第一歩を組織価値(理念)の共有を図る知事と部局長とのオフサイトミーティングからスタートしていることである。そして、このような対話の場を幹部全員で年に一度、主要幹部の間では週に一度の朝会として何年も継続してきている。
次に、改革推進部署が改革をけん引するだけではなかなか職場に浸透しにくいことから、2005年度からは各部局に対話の場づくりをコーディネートする次長クラスを選任し、組織運営をサポートする役と位置づけ、外部の専門家も一緒に関わって、取組みを支援してきたことがある。通常、一般職員の中に改善担当者を選任することが多いが、それだけでは職場で認知された取組みや実務を変えていくやり方に根付かせる定着が図りにくい理由からだ。
そして、これら幹部や管理職層の率先やスポンサーシップのもとで、徐々に各部課に経営品質の仕組みを活用したアセッサーと称する一般職員を増やし、彼らが自部署内で改善活動を実践していけるよう、庁内横断で勉強会や情報共有の場を設けてきた。
2007年度末から始まった改善活動の発表会は、そんな約四年間の全庁的に改革を推進していく環境づくりのうえに始まったものなのである。

改善活動の壁はどこにあるのか?

もしあなたの自治体で改善活動に行き詰まりを感じているとしたら、その壁はどこにあるのかを考えてみてほしい。「改善しましょう」と呼びかけ、“いかに改善するか”の手法には目を向けていても、“どうすれば改善を生みやすくできるか”の背景は見そびれていることがあるかもしれない。
先日、木村秋則さんの講演を聞く機会があった。青森県で“奇跡のりんご”と言われる、りんごの無農薬無肥料の栽培に成功した方である。木村さんが目指したりんごづくりの成功のもとは、土づくりにあったそうだ。改善の花を咲かせ、住民サービス向上の実をつけるためには、やはりそれらを生み出す組織の土壌づくりが重要だということと同じではないだろうか。
京都府ももちろんすべてがうまくいっているわけではない。どこでも一朝一夕にはできないものなのだろう。しかし、だからこそ、改善は何のためか、目指す方向をきちんと共有し、そのために組織としてどう取組んでいくのかのシナリオを持ったうえで、改善に取組む現場と呼応しながら起動修正していくプロセスが求められてくるのだと思う。