欧米にはもともと「組織開発」という専門分野があり、会社内にも組織開発部門や組織開発コンサルタントがいます。
かたや日本の企業では、そんな機能部門を持った組織はほとんど見られません。これは、組織力を高めるという観点を日本ではあまり重要視しなくてもよかったためだと考えられます。
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組織に対する安心感がないと意欲も生産性も上がらない日本的経営
かつて1980年代「ジャパンアズナンバーワン」と言われた頃の日本をアメリカは調査し、そこからチームワークに注目し始めました。
かたや日本は「助け合うこと、協力すること」が当たり前だったため、その日本的経営の強みに自覚はありませんでした。それどころかバブルがはじけて以降、成果主義人事など欧米流の経営方式に傾倒して「個」の強化の方向に走りました。
もともと日本人は自然に合議制をとりたがるように、個がきわだつことよりも「全体」や「周り」というものに気を配ります。自分が属する「全体」つまり組織や集団を常に気にかけており、そこにいることの安心感や信頼感がないと気持ちが落ちつきません。
つまり、組織に対する安心感がないと意欲も生産性も上がらないのです。
かつて日本的経営の三種の神器と言われた「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」は、働く人たちの会社に対する安心感・信頼感の基盤でした。それに加え、社員旅行や体育祭といった働く人同士の結びつきを強める施策などで仲間に対する信頼感が強化され、集団としての強さを発揮できていたのだと思います。今にして思えば、日本人の特性にうまく合った「組織開発」を行なっていたのです。
「組織の育成」という観点の欠落
今日「いい会社」として注目されているような会社は、社員同士の協力や連携を醸成するような取り組みに力を入れています。工夫された朝礼やミーティング、イベントや旅行・合宿など、それらを「内側の経営環境づくり」としてやっています。しかしそれらを「ムダ」なコストとみなす傾向はまだまだ根強くあって、組織内の協力や連携を育てていくという観点、すなわち「組織を育成する」という観点は多くの組織で欠落している気がします。
とくに優秀なプレイヤーだったマネジャーの方には「それぞれがきちんと役割を果たせさえすればうまくいく」という感覚がみられます。プレイヤー時代、自分に対して課してきた考え方をマネジメントの立場になっても部下に要求していて、「組織」を強くしていくという視点に切り換わっていないのかもしれません。それは「個人の成長」の観点であっても「組織の成長」の観点ではないのです。
いい樹木をいくら選んで植えても、土をつくって環境の面倒をみなければ木の根は活着、成長しません。組織もそういうものだと改めて見直す時だと思います。
人間は機械の部品ではなく、自発的に動く生き物なのですから、それらが集まった組織という生き物を「育てる」という観点なしには、豊かな実を結ばないように思うのです。