自分で力を尽くす、上司の指導を受ける、同じ部署のメンバーに相談する、チームで取組むというのが一般的にすぐに手がけやすい方法です。また、目標に向かう過程で問題に直面する場合には、当事者の経験や既存の取組みだけではなかなか打ち破りにくいところがあるため、そういうときは外から学ぶという方法が有効です。

外からの「学び方」の違い

自治体では、各種の制度や政策課題に関して、他の自治体に調査や視察に行くことがよくあります。ときには、自治体間だけではなく、民間企業や諸外国にまで出かけて行って垣根なく学べるところが、何よりも行政職員の強みです。しかし、学んだことが、どれだけ自組織の実となって生かされているのか、というとどうでしょうか。調査・視察で持ち帰ったものをそのまま形だけ真似してやるのか、そこから創意工夫して自分たちの発展や成長につなげられるかどうかは、「学び方」の違いにあるように思います。

たとえば、職員が「何のために調査に行くのか」というとき、「○○制度を導入するため」といった手段を目的にしていることがよくあります。「どの地域へ行くのか」を決めるときには、近隣自治体や同規模自治体という基準でスクリーニングをしがちです。また、「誰から話を聞くのか」についても、たいていは所管している部署の担当者ところに行っているのではないでしょうか。

そして、そこで「何を知ろうとするのか」といえば、同様の取組み内容や結果に関する情報をできるだけたくさん収集し、その中から最も優秀な事例を取り入れる、ということがよくあります。私もこれまで、ある自治体で開発されたのとそっくりな様式の帳票をいくつもの自治体で見てきました。

 

このキャッチアップ方式の学び方は、全国一律に均質な自治体運営を求められていた時代には効果的でした。けれど、昨今のように地方分権が進み、首長が掲げるマニフェストやめざしている地域の姿、組織に備える制度や仕組みにそれぞれ違いが出ている状況下では、自分たちの地域や行政組織の経営システムの中に借り物をそのまま導入しても整合性がとれず、かえって混乱や不具合を生じさせてしまうことにもなりかねません。

「何のために」「どうなりたいのか」「誰に聞くのか」「何を知るのか」

同じように先行事例から学ぶとしても、これからはまず自分たちがの「何のために」「どうなりたいのか」のニーズを再度見直してから、行き先を選ぶことが必要です。「誰に聞くのか」も、人事異動が頻繁にある行政組織においては、制度変更などを行なった当時の担当者とその後の維持管理をしている担当者とでは、問題や課題のとらえ方に大きな違いがあります。

また「何を知るのか」についても、単に結果を聞くよりも、どんな背景や経緯からそのような結果に至ったかというプロセスをしっかり聞き取ってくることのほうが、さまざまに要件が異なる自組織においては何が有効かを考えるうえで役に立つ情報になってきます。

このように外から学び取り、自分たちなりに工夫して応用・発展させ、進化する力をつける「学び方」にもぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。