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変化しはじめた意識をいかにして行動の変化につないでいくのか
このようなことを口にする経営幹部は少なくない。
しかし、私たちがさまざまな企業の人たちと接する中で感じるのは「今までどおりやっていけば会社も自分も安泰だ」と本気で思っている人というのはごく一部であり、大概は「このままではまずい。何とかしなければ」と思っているということだ。社員の意識はそれなりに変わっているのである。その実感を踏まえて言うなら、大事なことは、意識改革を徹底することよりも「変化しはじめた意識をいかにして行動の変化につないでいくのか」ということだろう。
「意識が変われば行動が変わる」とはよく言われることである。確かに、個人単位でならば意識の変化と行動は一致させやすい。
ところが、組織においてはそう簡単ではない。なぜなら、組織における人の行動というのは「自分だけでは無理だ。みんながやるなら自分もやるが…」「先走った行動はしないほうが無難だ」というように、必ず周囲の環境の影響を受けるからである。ここに意識改革の限界がある。
組織の中で、意識の変化と行動を一致させていくには「自分が一歩踏み出してみよう」と思えるような環境を整えていく必要がある。環境が人の行動を左右するということをまったく考えずに、ただ精神論で「挑戦しろ、出る杭になれ!」といくら言い続けても、決して社員の行動に変化は起こらないだろう。
「一歩踏み出してみよう」と思えるような環境をどうつくるのか
では、人が「一歩踏み出してみよう」と思えるような環境をどうつくるのか。あまりに当たり前のことではあるが、同じ組織で働く人間に対する信頼感を高めていくこと以外にないと私は考えている。仲間同士がお互いの考えや生き方に関心を持ち、必要な時には必ず協力するという関係性を築くことができれば、変化や挑戦につながる動きは自然に生まれやすくなる。
私たちが支援する企業風土改革では、常にこれが基礎となる。組織のダイナミズムというべき創造性というのは、こうした実感にもとづく基礎の上にはたらくものなのである。
そういう姿を実現するためには「信頼関係を築く方法」が必要になる。
「お互いの人柄やものの見方、考え方を深く知り合う中から信頼感を醸成する」という方法は、日常的に共通の目的を持って働いているチーム(経営チーム、プロジェクトチーム、部・課など)を機能させるうえでは非常に有効である。ことに、経営幹部層が「部門代表者の集団」から「経営の当事者のチーム」になっていくためには不可欠なプロセスである。
大切な価値観を共有しているかどうか
そして、もう一つ大事なのがチームの核となるものを共有すること、つまり「大切な価値観を共有しているかどうか」がキーになる。具体的にいえば、
- 会社が常に進化し成長していくために大切にすべき価値観を明確にし、
- その意味や背景を確認するための対話の場を持ち、
- 単に話し合うだけではなく、社員一人ひとりが日々仕事の中でその価値観を体現しようと努力をする。
こういう状態を実現できれば、社員はお互いに顔を知らなくても組織を越え、地域を越えて、価値観を共有しそれを体現しようと努力している仲間として信じ合い、助け合うことができる。
このような信頼で結びついた組織という環境が、そこにいる人たちに新たな一歩を踏み出す勇気をもたらすのである。信頼感は、社員一人ひとりが持っている個性や創造力を引き出し、組織力を最大に発揮する可能性を高めるものである。信頼感がなければ、どんなに魅力的なビジョンを掲げたところで、社員の力は発揮されないだろう。
変化の激しい時代だからこそ、組織にはしっかりとした「心の足場」が必要だ。借り物や奇策に頼ることなく、組織力のベースとなる信頼感を醸成し、新たな価値を生み出すための地力をつけることが重要だと私たちは考えている。