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「キャリア教育」のアプローチや取組み
「キャリア教育」については、平成11年12月の中教審答申「今後の初等中等教育と高等教育との接続の改善について」が提唱されて以来、教育現場ではさまざまなアプローチや取組み(キャリアイベント)が行なわれるようになってきました。
私が講義を担当している日本橋学館大学では、昨年度より「ハタモク」を年3回、土曜日に実施しています。「ハタモク」は、学生と社会人で「なんのために働くのか」という「働く目的=ハタモク」を“気楽に真剣に”語り合うことを通して、社会に出る前に、働くことの意味・目的を考える取組みです。昨年度から講義に導入して以来、その有効性を実感しています。
キャリアイベントの効果と可能性
10月27日に名古屋大学で開催された日本キャリア教育学会で、「キャリアイベントの効果と可能性」というシンポジウムを企画し、ハタモク代表の與良昌浩さんたちと一緒に発表を行ないました。
大学に関しては、平成23年度から全大学・短期大学においてキャリア教育が義務化され、7割以上の大学でキャリア科目を開設しています。しかしながら、従来の進学指導中心の中学・高校や、就職支援に偏りがちだった大学において、生徒や学生の「社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てる(H23年1月 の中教審答申より)」ためのキャリア教育の方法については、試行錯誤が続いています。
今回のシンポジウムでは、テキストを使用した授業ではない「体験型イベント」が、キャリア教育においてどのような効果をもたらすのかということについて、中学・高校・大学の実践事例をもとに議論しました。
キッザニアを活用した校外学習
まず中学校では、キッザニア(※文末注)を活用した校外学習について、市立中学校の教諭とキッザニアのキャリア教育実践プログラムの担当者から報告がありました。それによると、キッザニアにおける体験学習によって中学生の学習習慣の定着を促進する働きがあったそうです。
体験型ワークショップを含む「自由大学」
次に、前任校の高校で、全人教育と進路開拓を目指す外部人材を活用したキャリア教育プログラム「リベラルアーツ講座」(平成24年度は83講座)を担当していた先生から、社会人講師による体験型ワークショップを含む「自由大学」(平成24年度14講座、平成23年度26講座)について、情報提供がありました。
講座を提供する社会人は全員ボランティアで、高校OBや地域の人達だけでなく、第一線で活躍するビジネスパーソンも数多く参加しています。高校生も自主的に参加し、「親、教師以外の社会人との接点があるのが新鮮で楽しかった」、「学校の教科授業では、教わらない大事なことを学んだ」など、自主自立に役立っていることが確認されました。
「ハタモク」を導入することによる学生の職業観・勤労観の形成に与える影響と有効性
最後に、大学のキャリア科目で昨年度よりハタモクを導入し、学生の職業観・勤労観の形成に与える影響と有効性について、私と與良さんから情報提供しました。社会人とのワークショップ形式の対話の経験は、大学生たちが自らを見つめ、何のために働くのかを考えるきっかけとなり、社会人イメージがポジティブなものに転換し、 職業観・就業観の形成につながると同時に、目標に向けて大学で学ぼうというモチベーションを高めることが示唆されました。
「キャリア教育で職業観・勤労観を形成するためには、『気づき』を促進するための教育内容・場面づくりの工夫が必要であり、学外講師からの多様な分野の情報提供や多様な生き方モデルの提示によって『気づき』が促進される。(「大学におけるキャリア教育のあり方」2005年、(社)国立大学協会教育・学生委員会報告)」とある ように、企業や社会人が場を提供し、協力することで、生徒や学生たちが自分の将来を真剣に考えることができるようになるのではないかと思っています。
そして、このような機会を継続的に、豊富に提供してくためには、明確な目的やプログラムの効果を検証していくと同時に、キャリア教育に関する専門性と情熱をもった教員の養成・確保といった学校全体の課題として捉える必要があり、行政を含む学校組織内外の理解・協力が不可欠であると言えるでしょう。
学生と社会人で「なんのために働くのか」を“気楽に真剣に”語り合うことを通して、社会に出る前に、働くことの意味や目的を考える取組みを行なっている。代表を務める與良昌浩は、スコラ・コンサルトのプロセスデザイナー。「ハタモク」の有効性については、講義にこの取組みを取り入れた2012年にも、このメールニュースでご紹介しています。
楽しみながら、働くことの意味や社会の仕組みを理解するための職業体験テーマパークで、90種類以上の仕事を体験することができる。ちなみに今年夏には、柏市で地域の170事業所が協力し、1700人の小学生が参加した「かしわ街ごとキッザニア」が開催されるなど、行政からの要請も増えている。