今回、初めて参加された方が11人いました。そのうちの数人から「自分は組織風土改革について、特に考えたことはなかったのですが・・・」「人から紹介されて参加したので、世話人といっても自分は何もやっていないし、何を話せばいいのかわからず、来るときは不安がありました」という前置きが発せられました。
この会の名称はややカタイ印象ですし、私が初参加だったとしたら、同じように感じていたかもしれません。

組織をどうとらえているかを考える

大事なのは、「組織風土改革をどう進めるか」の前に、「組織をどうとらえているか」にあると、私は思っています。
「組織」とは何でしょうか。多くの人がまず頭に浮かべるのが組織図で示される所属団体や部署でしょう。では、あなたの所属する「組織」は、同じ目的を共有し、ともに力を合わせて何かを成し遂げていく「チーム」になっているでしょうか。もしかしたら、個々人がバラバラに仕事をしていて、ただ同じ場所に座っているだけ、という状態かもしれません。
組織図に描かれていなくても、「組織」は成立します。いざというときにいち早くかけつけてくれる他部署の人や地域の団体、住民がいて、相談し合い、ともに悩みながら、今までにない難題にリスクを背負って挑む決断をし、結束して乗り越えることがあるとしたら、同じところに所属をしていなくても、同じ目的に向かってチームワークを発揮する「組織」になっている、と言えるでしょう。

組織風土と組織風土改革

「組織風土」とは、そこに所属している人たちが暗黙で持っている思考や行動の様式です。この思考行動様式は、往々にしてパターン化されがちです。パターンに固まってしまった状態(風土)を耕し、これまでとは異なるチャレンジをして、小さくてもいいから成功体験をつくる。その経験をもとにまわりの人たちを巻き込みながら新しい仕事のやり方として定着させ、新しい組織のあり様を築いていく。「組織風土改革」とは、こんな動きの連なりからできています。だから、まさにどこかで何かを変革している現在進行形の状態があり、そこにあなたが携わっているなら、組織風土改革に関与していると言えるのだと思います。

風土改革における「世話人」

ただし、組織風土改革が身近に現在進行形で進んでいても、当事者意識を持たず、受け身で取り組む人もいます。この場合、自分の担当業務の範囲内で、今起きている問題や与えられた課題を処理しているだけのことが多くあります。
問題の背景に何があるのか、将来にどんな影響を及ぼし得るものか、といったことに視野を広げて見ることができず、タコツボにいる状態です。
これに対して組織風土改革の「世話人」には、少し視野を広げて、常に自分をまわりとの関係の中でとらえ、人と人、人と出来事、原因と結果などのつながりを気にかけ、思いを持って主体的に働きかけながら試行錯誤している人、という意味があります。

世話人交流会のような場がもたらすもの

どんな人でも、仕事は一人だけではできません。したがって「自分とまわりとの関係」において「世話人」として行動することは、当然のことなのかもしれません。それでも、「自分とまわりの関係」をあるがままに見直してみることは、なかなかできないものです。
なぜなら、自分の所属する組織を内側にいながら客観的に見つめるのは意外に難しいものだからです。今回の世話人交流会のような場は、異なる組織の人どうしが集まるからこそ客観的視点を持つことができ、自分の立ち位置(居場所)をとらえ直し、特性をつかむ機会になります。
また、環境が変化していくなかで自分も変わらねばと思っていても、自分一人だと「できない理由」をみつけて変わることを先延ばしにしがちです。この会は一年に一度の開催ですが、再会する仲間がいてくれることは、「次に会うときまでに自分も何かやっておこう」という互いの背中を押すきっかけと励みになります。お互いに苦労している当事者であればこそ、取組みの意義や難しさを理解し、失敗や成功、そこに込められた思いを聞いてもらうことができます。
そして、また次の一歩に向けた課題や悩みを、立場を越えて分かち合うこともできます。

「働き方の質」に違いと傾向がでてきている

行政改革は、組織内にある「改革メニューの量」だけを見ると、違いがわからない時代になりました。しかし、職場で働く職員が日々どのように思い、行動しているのかという外見からは見えづらい「働き方の質」は、自治体ごと、職員ごとに大きな違いと傾向がでてきています。このことは、今回の交流会に参加した一人ひとりが自ら語る言葉と顔つき、他の参加者への反応のし方や二日間という長い時間をかけて対話した中から感じ、確信しました。

フェイスブックなどICTを活用した情報発信・共有が盛んに行なわれていますが、アナログの場の価値はむしろ以前より高まってきているように感じます。
本交流会に何度も参加してくれている仲間たちは、私も含め、そんな「共に学び、共に育つ」機会を楽しみに、忙しい日程を調整して参加し、この場を継続して続けていけるよう、運営に努めています。