南伊勢町のビジョン実現のための取り組み

南伊勢町では、小山巧町長の就任後一年目にあたる2010年には、マニフェストに対する職員への浸透度が、とても高く出ていました。それは、マニフェストに掲げたビジョンを、町長が直接、さらに繰り返し何度も職員に語ることで強いインパクトを与えていたことによるものでした。

その後は、時間の経過に従い、首長からの直接の働きかけを少なくし、代わりに、ビジョン実現のための課題を明確化・具体化して、管理職が職場で首長ビジョンを実現するための課題の背景や意味を、管理職自身の言葉で伝えるようにしました。

その結果、「職場で首長ビジョンを日常的に意識して行動したり、目的を考えて課題に取り組むようになった」「職場で話し合いを十分行なっている」「成果指標を設定している」などの変化を、職員が強く感じている割合が顕著に増えてきました。

内向きの組織風土特性を変えたもの

職場風土と職員の変革行動との関係については、2010年には「担当を越えた相談・協力できる関係や気楽な話し合いがある」という職場風土の特徴が高く出てはいましたが、それらは必ずしもビジョン実現の行動に結びついているものではなく、どちらかというと変革行動にネガティブな要因となっている傾向が見られました。つまり、「仲良し、なーなーの関係にある」内向きの組織風土特性によるもので、新たな挑戦や変革の阻害要因となっていたと思われます。

それが経年で見ると、係同士の情報共有や協力が強くなり、「係を越えて仕事の話を気軽にする」「職場でみんなで相談する」ようになったと感じる人の割合が増えています。2012年の結果の背景には、首長ビジョン実現に向けての課題遂行のための職場での話し合いや日常行動が増え、その内容も、どうやったらできるかをみんなで考え、代案をたてて上司に相談するなど、職場の協力関係や課を横断したプロジェクト活動などによってコミュニケーションの質や職員の意識・行動が変わってきたという状況がありました。

3年が経ち、「首長が直接職員と対話したり話を聞いてくれる機会が就任時より少なくなった」と感じる人の割合は増えています。 「2012年度に策定された総合計画『絆プラン』が首長ビジョンを反映したものになっている」と答えた割合が98%であったことから考えると、首長ビジョンが「総合計画」というしくみを通して日常業務に組み込まれ、意識されているということがわかります。

起こった変化と今後の課題

調査結果のフィードバック時に行なったヒヤリングからは、「成果(目標)は3年前より明確に設定するようになってきた」という一方で、「住民に理解されやすい『指標』の設定や、事業に関する住民ニーズや地域の実態把握については十分に行なわれていない」などの課題があげられています。また、自分たちの人件費を含む業務ごとのコスト意識に関しても、まだ弱いと感じているようです。

南伊勢町では、町長就任時のマニフェストが総合計画に十分に反映され、計画の推進において管理職が果たす役割が明確にされてきたことによって、成果目標の設定や職員とのコミュニケーションの質的変化などが起こるなど、変革サイクルが回り始めているようです。
このように、3年間の改革の取組みの影響や成果をデータを通して見ることによって、トップのリーダーシップのスタイル、改革活動や施策の有効性を検証し、次のステップにつなげていくことができるのではないかと思います。