プログラム提供とコミュニティづくりの組み合わせで1on1スキル向上の環境を構築

『スマイルワーク』の目指す1on1ミーティングは、上司が部下の業務進捗を確認する個人面談とは異なり、「成長支援」を目的として、部下個人の気持ちに寄り添う時間です。

パーソルテンプスタッフでは、社員のはたらきがい 向上の取り組みである『スマイルワーク』の一環としてスコラ・コンサルトの『マネジメントシナリオ』と、『体温のある1on1プログラム』を導入。有志による1on1コミュニティづくりを実施し、大きな変化が生まれました。導入を決めた人事部の声、そして実際にセミナーを受講して『体温のある1on1』に取り組んでいる社員の方の声を伺い、働き方にどんな変化が生まれたのかを見ていきましょう。

――そもそも、なぜ1on1を導入することになったのでしょうか?

坂本さん:実は以前から、当社では1on1に取り組んでいるマネジャーは大勢いました。しかし、頻度や目的、内容はそれぞれで、やり方にばらつきがあったのです。成長支援につながる姿勢や、関わり方、手法を探求する中で、上司と部下の1on1をより有意義な場にしたいと思うようになりました。そこで、専門家を招いて1on1について学ぶ機会を設けようと考え、スコラ・コンサルトに相談したことがきっかけです。そしてセミナーを開催、それに加えて全6回ほど、1on1のロールプレイングができるコミュニティをつくることを決めました。


このようにしてセミナーとコミュニティづくりが一体となった『体温のある1on1プログラム』のセミナーが開催されましたが、実際に受講された方はどのように受け止め、自分たちの力としていったのでしょうか。ここからは実際に受講されたスタッフの声を聞いてみましょう。

どうマネジメントしていけばいいのか、悩んでいました

 ――みなさんはそれぞれ異なる役職でありながら、スタッフや部下の方へマネジメントを行う立場ですが、スコラ・コンサルトの1on1セミナーを受講される前、マネジメントについてどのような姿勢で取り組んでいましたか?

小林さん:プログラムに参加するちょうど1年前にマネジャーに就任したのですが、どうマネジメントしていけばいいのか、悩んでいました。1on1については知っていたのですが苦手意識がありましたね。日々、業務に向き合っているメンバーの時間を奪ってしまうのではないか、話を聞いてもらえないのではないか、などマイナスイメージばかりが膨れ上がっていたのです。

岩﨑さん:セミナーを受けたのは、チームの立ち上げから半年くらい経った頃でしょうか。自分は十分にマネジメントできているのか疑問がありました。メンバー個々の能力が高いぶん、次はそこに調和やシナジーが必要だと感じ始めていました。
実際、徐々にメンバーが疲弊している、と感じることが多くなっていましたので、個々ではなく連携できるようなマネジメントをしたい。でも日々の対話の機会が少ないので、どうやって進めていったらいいのかわからない。そんな自分のマネジメントに迷いが生じている状態でした。

成島さん:以前から書籍などで1on1について学んでいたものの、本で学んだだけなので、これが正しいのかどうか不安でしたし、完全に我流でしたね。なんとなくやっていたけど、正直ピンと来ていなかったのです。そこで一度、ちゃんと学ぶ機会が欲しいと思っていた時に、人事からスコラ・コンサルトのセミナーのお知らせがあり、受講を決めたのです。

課題と答えがリンクした

――それぞれ課題を抱える中、1on1のセミナーを受講されましたが、どのような感想を持ちましたか?

成島さん:非常に気づきの多いセミナーだったと思います。1on1の目的からして、いかに自分のやり方が我流で足りないものだらけだったのかわかりました。
また、セミナーで感じたのが「熱量」ですね。これは1on1だから、というよりはスコラ・コンサルトの講師だからかもしれませんが。これまで受けてきた研修は淡々と話す人が多く、受講している私たちも静かに聞く、といった感じでした。しかしこの1on1のセミナーからはすごく熱い思いを感じましたね。

岩﨑さん:課題と答えがリンクしたように感じました。これまでメンバーと話をしていても、距離を感じることが多かった。私は営業マネジャーを経て、異動し、コーディネーター組織に携わっているのですが、一緒に働くメンバーは、これまで求職者の方と派遣の仕事とをマッチングする、コーディネーターとしてのキャリアを重ねてきた人たち。コーディネーターとしての実績のない私が、実績のあるメンバーをマネジメントしなければいけない、ということでどうすればいいのかわからなくなっていたのです。
それが、セミナーで「称賛、感謝、励まし」が基本だと教わり「こうすればいいのか」とストンと腹に落ちた感じでしたね。

自分を縛っていた「あるべき理想像」から現実に向き合うきっかけに

――『体温の1on1プログラム』を学んで、変化はありましたか?

小林さん:以前は、自分の中にマネジャーとはこうあるべき、みたいな理想像があったんです。メンバーを強力に引っ張っていくリーダー像。ただ、いきなりそのようなマネジャーになれるわけもなく、迷ったり、焦ったりしているうちに、メンバーと向き合わなければいけない、変えていかなければいけない、そう思えば思うほど自縄自縛に陥っていたと思います。またそれを誰にも相談できませんでした。
しかしセミナーで、承認を何度も繰り返すことでメンバーと信頼関係が築ける、という指針を教わったことは自分が変わるきっかけになりましたね。何か一つでも「こうすればいい」というものがあると、途端に気持ちが楽になったんです。

岩﨑さん:確かに小林さんのイメージは大きく変わりましたね(笑) 以前はクールなイメージでしたが、セミナー受講後は構える様子がなく自然体でマネジメントされている気がします。実際マネジャーも人だから、できないものはできない。自分も1on1のセミナー後にそう捉えなおすことで、普段の雑談もナチュラルになりました。
これまでメンバーにどのタイミングで話しかけたらいいかわからず、「邪魔したら悪いな」など考えて動けずにいました。でも、「これも仕事なんだ、1on1は必要なんだ」と自分の中で考えが定まったおかげで普段の会話もナチュラルになり、コミュニケーションが円滑になりました。

普段の仕事から離れたところでのトライ&エラーを

――『体温のある1on1プログラム』セミナーの後、社内でコミュニティをつくられたと聞きましたが、どのような経緯でそうなったのですか?

小林さん:セミナーで知識を学ぶことができましたが、それですぐに1on1ができるようになるわけではありません。インプットしただけですぐに実践することはできないんです。だからこそ練習する場が必要。そこでセミナーを開催した人事が事務局となり、コミュニティをつくって、皆で練習しようということになりました。
セミナー参加者200名のうち、10名がコミュニティに参加。お互いマネジメントする立場にある社員同士でもやはり最初は緊張してしまいましたが、そこからはどんどん楽しくなっていきました。自分でも1on1の力が身に付いていく実感がありました。コミュニティが終盤に差し掛かった頃、継続したいという思いが強くなり、思わずコミュニティ継続の旗振り役をやります!と立候補していました。

岩﨑さん:1on1のスキルを身に付けるうえで、コミュニティの存在は非常に重要だと感じています。基礎がわかっても、それをどのようにして身に付けていけばいいか、それが重要です。その点、コミュニティでは思い切って練習できる。トライ・アンド・エラ―を繰り返すことが、上達のカギだと感じています。
それに、他の人の1on1を見ることができるのはとても勉強になりますね。1on1への入り方、声のトーンなど、それぞれ特徴があり、参考になります。

成島さん:その意味ではコミュニティという普段の仕事と離れた場だからこそ、効果があったと思います。仕事上の利害関係や、同じ部署内での上下関係などがありません。違う部署に所属する同士、横の関係だからこそ失敗も恐れずにチャレンジしやすい。それに1on1という共通の課題と、それに伴う悩みがあるからこそ、相談もしやすいのです。
1on1はその人の個性が出ます。ロジカルな部分と個性を活かした部分、そのバランスを他の人のやり方を見ながら探っていくことができます。1on1は自分一人で完結するものではありません。対人だからこそ、今日はこうしたから伝わるけど、明日同じことをしても伝わらない、ということもあります。そこが1on1の難しさです。だからこそ仲間と共に「これでいいんだっけ?」と相談したり、様々なやり方にチャレンジすることが重要なのです。そして自分の中でノウハウを蓄積すれば少しずつ精度を高めていくことができます。セミナーで学んだことは役に立っていますが、それ以上にコミュニティで練習を繰り返すことができたことで、1on1のスキルを着実に身に付けていけている、と実感していますね。

マネジメントに対する考え方が大きく変わり、それが仕事にも反映

――『体温のある1on1』を身に付けたことで、仕事上どんな変化がありましたか?

岩﨑さん:業務に取り入れるにあたり、私がまず行ったのは、登録センターのメンバー50名と1on1をすること。実践してみて、これまでメンバーとの距離は近いと自分自身は感じていたのですが、実は遠い部分もある、と認識することができました。1on1で向き合うことで、互いの認識を確認し合い、すり合わせていく。仕事上でのコミュニケーションの基礎を築くことができたと思います。
もちろん人によってコミュニケーションの深さには差はありますが、1on1で正面からスタッフと向き合う姿勢を見せることもまた大きな意義があると思いますね。

小林さん:マネジメントに対する考え方が大きく変わり、それが仕事にも反映されています。これまでメンバーが言ってくれなかったようなことも、率直に伝えてくれるようになりました。例えば「細かく業務の管理をされると、つらい」など、時には耳の痛い言葉も、以前なら、「仕事だから。やり方が決まっているから」で済ませていたかもしれません。でも今では、互いの意見をすり合わせながら、何か他のやり方はないか、とメンバーと一緒に考えるようになりました。
少しずつ手ごたえを感じていたある日、あるメンバーから一通のメールが届きました。そこには「みんなの気持ちに寄り添ってくれるから嬉しいです」とありました。これを読んで感極まってしまいましたね。
マネジメントは数字管理をするだけなら楽です。ただ、数字でしか語れなくなると、正当な評価を下すことができません。そうなれば皆が数字に直結する仕事だけに力を注ぎ、他の部分はおざなりになってしまうでしょう。そのような組織では、正常に機能することができません。
だからこそ、人にフォーカスした『体温のある1on1』は、自分にとっても挑戦し、身に付けるべき課題であると感じているのです。

メンバー皆が主体的に動くようになった

――今後、1on1での展望があれば教えてください。

成島さん:単に仕事上のコミュニケーションが活発になった、というだけでなくメンバー皆が主体的に動くようになりましたね。感情にフォーカスする1on1だからこそ、「気持ちの一体感」のようなものを感じるようになり、それが良い影響を与えているのだと思います。「相手を尊重して話を聞く」という姿勢が身に付いたことで、ついでに家族からも褒められることが増えました(笑)ただ、1on1はこれで終わりではないと思います。今は一人ひとりの話を聞き、それが徐々にチームに良い影響を与えている段階。これをさらに進め、仕事で関わる人たちの自己決定に伴走できるようになれれば、と考えています。

岩﨑さん:継続と展開、でしょうか。1on1はすぐにある程度の効果を実感することができると思いがちですが、それが真価を発揮するのは長く継続していった先にあると思います。相手とつながっている、それを継続していくことでどんどんと理解が深まり、より良いマネジメントを行えるようになると思います。
また、どんなに価値あるスキルでも自分一人が身に付けただけでは、意味は薄いでしょう。セミナーやコミュニティを通じて教わったことを社内へ広めていきたいですね。

小林さん:私はまだ、スタート地点に立ったばかりだと考えています。1on1を通じて、ようやくメンバーに寄り添えるようになりました。これはマネジャーとしては基礎の基礎。だからこそその先にまで進んでみたいですね。
1on1を行っても、今はどうしても自分が中心で話をしてしまいます。メンバーの時間を奪っている、という感覚をどうしても払拭できていないため、面と向かうと堅くなってしまい、どうしても「聞く」余裕がまだないのです。ただ、少しずつメンバーの気持ちを受け止めることができるようになってきた、という手ごたえがあります。それも、コミュニティの皆が、練習に付き合ってくれるなど、応援してくれたからだと思います。
将来はこれをもっと広げていきたいですね。社員全員がリーダーのようになって、会社全体がコミュニティになっていければ、この会社はもっともっと良くなっていくのではないでしょうか。

坂本さん:人事としても、『体温のある1on1プログラム』導入後、上司が部下に伴走できるような環境が生まれつつあり、「対話の重要性」の認識が広がりつつあります。

現在、『体温のある1on1コミュニティ』は手を挙げた希望者だけ、そしてスコラ・コンサルトの支援を受けながら運営されています。ここで得られた知見を全社に広げるためにも、どのような位置づけでどのように広げていくか考えています。

いろんな会社で「1on1の研修をやったが、研修効果が定着化しない」という人事部の方々の声をお聞きすることがあります。今回の体温のある1on1プロジェクトでは、プログラム内容をお伝えするセミナーだけでなくコミュニティの構築までお手伝いさせていただきました。そしてこのコミュニティが大きな効果を発揮しました。セミナーでは時間が限られますが、1on1は何度も練習を繰り返すことが重要です。有志を中心にプログラム内容を練習したり実践内容を共有し合うコミュニティを仕組みとしてセットすることで、従来の「学んだだけで実践されない」という問題が解決される可能性が上がります。