優勝”経験が、組織とメンバーにもたらした変化
― Global KAIZEN Award 世界大会での発表はいかがでしたか。
水鳥 私たち2人で発表を担当したのですが、今まで社内でやってきた発表とは違い、世界大会では誰が見てもわかる資料にする必要がありました。プロジェクトに込めた私たちの思いの部分を伝えたかったので、どうしたらいいのか悩みつつ、整理していきました。
活動を振り返りながら、自分たちのしてきたことをいかに解り易く伝えるかは、とても苦労しました。日本語ではなく英語での発表だったため、その面でも大変でした。
亀谷 帳票の標準化は、本当に多くの方々にご協力いただき成し遂げることができました。なので私たちの発表が拙いために伝えきれなかったら申し訳ないと考えていました。
二人で何度も繰り返し考え、練習をしました。本当につぶされそうになるほどのプレッシャーでした。
― 優勝した後の周りの方々の反応はいかがでしたか。
水鳥 大会が終わった後、別件で電話がかかってきた時に「おめでとう」と多くの方に言っていただきました。「自分のことのように嬉しかった」と喜んでくれる方が多かったです。
これまでやってきたことは、チームや現場のメンバーの地道な作業だったと思います。私たちはあくまで、皆さんのやってきたことを代表して伝えたに過ぎません。
柴崎 今まで、国内大会で優勝したことはあるのですが、世界大会での優勝は初めてでした。優勝後に、トロフィーを各拠点に2週間ずつ回し、業務推進室の全員に星型のバッジを配りました。
Global KAIZEN Awardで優勝すると、プロジェクトメンバーに星型のバッジを配るのですが、今回は、業務推進室にいる約150名にも配ったのです。「バッジ1個で喜びを共有できるなら安いものだ」と考えて配ったのですが、私が考えていた以上に喜んでもらえました。
― 活動によって皆さまにどんな変化がおきたのでしょうか。
柴崎 年に二度、社員と面談をしているのですが、プロジェクト後、亀谷の口から「やってみたい」という言葉が多く出て来るようになりました。
また、会議では「このように変えました」「アシスタントの意見はこうでした」と報告をするようになりました。
3年前にはなかった言動です。本当に大きく変わりました。
亀谷 今回、大きな成果を出すプロジェクトに関われたので、「新しいことに挑戦したい」「もっと頑張りたい」という気持ちがあります。
私の部署はルーチンワークが多く、物足りなく思うことがありますが、「視野を広げて全体を見なくては」と考えながら仕事をしています。
以前は、与えられた仕事を正確に素早く処理するだけで、面白くありませんでした。今は自分の与えられた仕事にいかに付加価値がつけられるのか考えるようにしています。難しいことですが、その分やりがいがあり、充実しています。
水鳥 以前の私の主な仕事は、私が休んでも誰かが代わりにできる事務作業でした。言われたことをやるという姿勢で、淡々とこなしていました。
でもこのプロジェクトの後は、「こうすればもっと良くなるのに」と考えるようになりました。「自分で一から考えて取り組んでいけるような仕事をしていきたい」と思うようにもなりました。それを上司に伝えたところ、今ではさまざまな運営取組みに関わらせてもらっています。
プロジェクト後に誕生した継続の仕組み
― 一度大きく減った帳票を維持していくには、そのための仕組みが必要だと思います。
現在の状況やメンテナンスをどのようにされているのか、教えてください。
水鳥 帳票の数は当時より少し増えています。その理由は、今までは一回リリースしたものは「変更不可」だったのですが、月日が経てば、世の中の流れや周囲等の状況が変わります。
裁判所や販売店の意見には応じる必要があり、そういったことを考慮し、業務推進室の許可を得られれば、帳票は変更することができます。
亀谷 このプロジェクト以降に、GOOD女部(グッジョブ)が設立されました。これは各拠点の女性リーダーが定期的に集まり、職場を良くする為の場なのですが、ここで帳票に関して出てきた課題に対してどう対応するのかを決めたり、帳票以外の情報共有や課題解決をしたりしています。
柴崎 GOOD女部のメンバーは入社10年目前後の中堅の女性社員です。
この取り組みは、私が「プロジェクトが終わると、横の繋がりが元に戻ってしまうから、継続的に繋がり続けられる仕組みをつくる必要がある」と言っていたことと、彼女たちの先輩にあたるベテランの教育トレーナーが「次世代を育てたい」という思いから、現場の女性リーダーたちが交流する場の設立を提言したことを受け、誕生しました。
今後は、彼女たちの後輩が、彼女たちがプロジェクトで体験したような経験ができるような機会につなげていきたいと思います。
スコラ・コンサルトが考えた変革ポイント
<やり方の転換>のキーファクター
過去の取り組み <受動的・他人事> | 今回の取り組み <主体的・自分事> | |
組織体制 | 本部や推進チームが案を検討し、現場に指示・命令で落とし展開する体制。
本部が定期的に資料を作成。拠点の声を聞く機会はなく、一方通行で情報伝達するマネジメントスタイル。 |
本部主導でなく、現場拠点のマネージャーとメンバーを選出し、現場の声をフィードバックしながら一緒に考える体制。 現場の声を聞き、使う現場が納得感のある帳票づくりをサポートするマネジメント体制 |
プロジェクト運営 | 本部プロジェクトメンバーが中心となって、検討・案を作成し、現場に指示するが、現場の実情を理解していない。現場情報を伝える術がほとんどなく、相互のやりとりがない状態。 | 各拠点からリーダーを選出し現場の声を聞く。
上司の描く目的や思いを各拠点に出向き伝える。 拠点の要望を聞けるホットライン、合理的に説明納得する対話のプロセスをつくる。 |
プロジェクトの取組姿勢 | できないと言えない、つい実態をデフォルメしてしまう。言っても何も変わらないというあきらめから、情報を伝えなくなり、対話がない。100点をとるために事実と乖離する。 | できないことをできないと言える。事実に向き合う対話。
完璧を求めるのではなく、60点主義で現場からの情報を受け入れるマネジメントスタイル。 |