壁を超えた先に、様々な価値が生まれ続けている

塩見俊也さん
■略歴
1991年入社。本社、大阪営業所で経理を経験した後、本社で調達、製造に配属。

2012年に、管理グループ人事セクション、印刷機調整・据付セクション、組立工程管理セクションの統括チーフに就任。

 

塩見さんの目から見て風土改革前の社内の状況は?

私の周りにいる人は、みな優しくて仲間思いでしたので、アットホームな会社ととらえていました。 しかし改革を求めるような社員は多くはいませんでした。

次々とさまざまな取り組みをする社長に対し、「このままではいけない、何とかしなくてはいけない」という社長の思いがあることは感じていましたが。

ご自身の風土改革への関わり方を教えてください。

私は初回のオフサイトミーティングから参加しています。参加者は30名で、年代も役職もさまざまでした。それまで私は、業務で関わる人とだけしか会話をしていませんでしたので、それ以外の人と話ができることや、対話を通じて人柄や考え方がわかることに価値を感じました。

私が意識しているのは、オフサイトミーティングに参加するメンバーや議題によって関わり方を変えることです。たとえば、若い人たちと話す時は、彼らが話しやすいようにすることを意識していました。

ただ、会社の利益を考える必要がありますし、和気あいあいだけがいい風土だとは考えていませんでしたから、時には厳しく向き合うこともあったかと思います。

風土改革へのネガティブな反応には、どのようなものがありましたか?

風土改革のスタート当初は、「そんなことして意味あるの?」とか疑問視する声が社内に多々ありました。オフサイトミーティングの参加者の間では「言いづらいこともあるよね」「どこまで本音で話したらいいんだろうね」といった戸惑いの声がありました。

取り組む人の意識が少しずつ変わってきたのは、同年代だけのオフサイトミーティングを開催してからです。当時、問題と思われた事象に関係するメンバー同士、言いにくいことにフタをせず、お互い腹を割って話し合いをすることができました。

その一方、定期的に開催していたオフサイトミーティングでいろいろな年代、部署の人と議論したことが実務に何も反映されない状況が続いた時期もありました。

次の製品へ、サービスへ、そして経営へ。社員が自ら一歩踏み出す

風土改革によってどのような変化がありましたか?

業務効率が改善しました。オフサイトミーティングが始まってからまもなく「自分たちで業務を改善していこう」という有志が10名集まりました。

議論の中で、まず目標を「作業効率のアップ」にすることが決まり、その後、「どのようにすれば作業効率がアップするか」の仮説を立て、その検証を繰り返しました。

成果を上げるようになると徐々に人が集まるようになり、今では一つの部署になっています。

あと、全社で清掃するようになりました。 2006年に、社長が「世界一社風のいい会社」という理念を掲げました。それを受けて、当時所属していた製造部で「どのようにめざすのか」という議論をしました。そして、「見学にいらっしゃったお客様が感動するような工場や事務所にしよう。それを常態化しよう」という議論の結果、そこで働く人を見てもらおうと、会社の「ショールーム化」というスローガンが誕生しました。

その一環で、毎週水曜日の12時45分から13時までの15分間を清掃の時間にあてることになりました。「いいことだから」と他部署も賛同し、今では全社で実施しています。

このような 生産に寄与しない時間については、風土改革前であれば反対はあっても、賛成は得られなかったと思います。

2010年には、ISOWAの主力機種アイビスが誕生しました。 開発に関することは、以前でしたら技術部が主体で行なっていましたが、 オフサイトミーティングによって社内が変化していく中で、新機種開発の議論の場には、技術だけでなく営業、サービス、電子技術、調達、組立等の部署が関わり、議論を重ねました。営業は売りやすさの面から、サービスはメンテナンスの面から、調達はコストの面からと、それぞれの視点から意見を出し合いました。

新入社員の教育方法も変わりました。 2011年から、いろんな部署で経験を積んでもらうことを目的に、新入社員の所属する部署を1ヵ月ごとに変える仕組みにしています。今までは、製造部に所属したら製造部だけ、といったように一つの部署で経験を積んでもらっていたのですが、新入社員は会社の将来を担う人材という位置づけを明確にしたことから、このように教育方法を変えました。

会社の経営に参加する意思を持つ社員も増えました。 2015年に、社長が朝礼で「今後のISOWAの経営に参加してほしい」と呼びかけたところ、約270名の社員のうち70名が手を挙げました。

社員のようす様子を見ていると、手を挙げた人以外にも、まだまだ社内には参加を考えている人や意識している人が多数いるのではないかと考えています。

2011年の「ISOWAは止めません、止まりません」には、どのように関わりましたか?

私は機械をお客様の工場に据え付けに行く「印刷機調整・据付セクション」という部署にも関わっているのですが、そこでは「新しく導入した機械が正常稼働するまでの期間は、お客様の生産が止まっている」ととらえ、「1日でも早く営業運転ができるようにするにはどうしたらいいか」を議論しました。

議論を重ねた結果、お客様のご要望をヒアリングし、お客様の現場を精査した上で、機械の調整をすることが決まりました。以前は、事前のヒアリングのみでアタリを付け、お客様の工場内で調整をしていたのですが、このやり方だと稼働するまでに時間がかかりますし、運転期日に間に合わせるため夜中まで作業をすることにもなります。社員の負担が大きかったのですが、それらを解消できる案になりました。

風土改革について今後どのような期待をお持ちですか?

風土改革を業績向上につなげていくことが課題だと考えています。当社が世界一社風のいい会社をめざし、そのために真摯に取り組んでいる姿勢や実践事例を採用活動時に伝えることで、そういったことにアンテナの立つ優秀な人材が多く入社してくれるようになりました。

長期的な視野で見ると、彼らが入社後、風土改革への取組みを通じて志や能力を高めていくことが、やがて当社の利益を生み出すことにつながるのではないかと考えています。