対話は「やり方」そして「あり方」

ある先生はこう言います。「前にならえ!まっすぐ並べ、という感じの教育を小学ではずっとやってきて、6年生になると急に『指示待ちはダメだ』と言われても子供は困るよね」と。企業でも同じようなことがありますね。「主体的学び」、これは時代の転換期である今、大人にとってのテーマでもあります。それはもはや時代の流れであり、誰がいいとか悪いとかの話ではないのです。ただ、この時代の流れに乗って切り替えをいち早くできるかどうかが、これからの仕事や人生をよりよいものにするのか、我慢や努力で耐える人生にするのか、その方向を左右するのだと思います。

子供たちの主体的な学びを促進しようと思う時、ネックになってくるのが先生の態度です。先生が従来の“上から一方的にものを言い、指導する”スタイルだと、子供の主体的な行動は生まれません。先生が子供を対等とみて、それぞれが違う独自の存在だという前提に立った「対話」の働きかけをすることで、楽しい感情とともに意欲や関心も誘い出されてきます。

そういう意味で、対話は「やり方」であると同時に、人を比較できない違いがある対等な存在とみる「あり方」の表現でもあるのです。

企業人が主体的な学びを進めるためには

企業でも、もっと個人が自分に適した主体的学びを進められるように成長支援をしていく必要があるのではないでしょうか。そして、そこには「対話する相手」「対話ができる人」がいることが不可欠です。ところが企業には、きちんと対話ができる人が圧倒的に少ないのが実情です。学校教育の現場がそうだったように、上下関係・階層の企業もまた長い間、一方通行のコミュニケ―ションで動いてきたからです。

これからの時代、私たちが違いを認め合いながら共生・協働し、よりよい社会をつくっていくためには、抜本的な考え方のシフトが必要です。その代表的なものが、人と人との関係性のつくり方であり、それを実現するコミュニケーションです。一人ひとりを尊重し、違いがあることを前提とするコミュニケーションは、当然、相手にお構いなしの一方通行ではなく、互いが違うことを共有し合って気持ちを通わせる「双方向」でなければ成立しません。この双方向コミュニケ―ションとしての対話にみんなでチャレンジしていくことが、個人の主体性を高め、停滞する組織に息を吹き込む新陳代謝の鍵となるのです。

新たな前提に立つ「対話」の基本リテラシーは、組織が人々の力によって進化を続けていくためには必須の条件です。それと同時に、先駆者としての「対話人」が育ち、対話の使い手が増殖していく学習機会の開拓も必要だと思っています。