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「8Dコンパス」で多面的に現状を見て課題を考える
そこで、私たちがよく用いるのが、図のような8つの面(領域)から経営の全体像を眺め、現状を客観的に見ていく「8Dコンパス(エイトディメンションコンパス)」というフレームワークです。
(図表)8Dコンパス(左象限:ソフト領域、右象限:ハード領域)
たとえば、関係者同士で行なう8Dコンパスを使ったワークショップでは、8つの領域が「自分にはどう見えているか」を各自で書き出し、自分に欠けている視点や視野の偏りを確認したり、それを互いに紹介し合って意見交換をしたりします。
このフレームを使うと、自分の意識が集中している領域や、他の人との関心領域の違いなどが見えてきます。また、自分の問題意識が他の問題とどのようにつながり、影響し合っているのか、「本当に手を打たなければいけないポイントは別のところにあった!」など、見えていなかった課題が見えてくることもあります。
私がお手伝いしたあるインフラ企業のワークショップでは、「マネジメント・プロセス」「コミュニケーション」「企業文化」などの領域があっという間に埋まっていきました。参加していたのは一般社員の方々ですが、どうやら日々の業務の中でいろいろな問題を感じているようでした。端的にいうと、管理型のマネジメントが横行しており、職場でのコミュニケーションも少なく、チャレンジがしにくい風土である、ということでしょうか。
しかし、「今の風土は、なぜ定着しているのですか?」「挙がっている問題は、なぜ発生していると思いますか?」という問いについては答えが曖昧でした。
よくよく聞いてみると、「ビジョン」ではチャレンジングな内容が掲げられているものの、社員にとっては非現実的なものと受け止められている。また、一部の経営層のみでつくられた内容のため、共感を得られていない。さらに「業務プロセス」は、現場の知恵出しや創意工夫を促すというより、逐一上司の承認を要するというビジョンとは裏腹な状態でした。これらの問題が「チャレンジせず、上から言われたことを問題なくこなす」という働き方を強化していたのです。
このワークショップ後は、メンバーが「自分たちも受け身の姿勢だった」ということを認識した上で、では「どのような会社の姿を実現したいのか」をまず自分たちで考えてみることにしました。自分も問題の一部であるとわかったことで、メンバーは当事者意識を持ち、前向きに考えられるようになったのです。
“関心外”の要因という意味では、実は、長い歴史の中で定着している企業の風土は、自分たちの業種・業界、商品やサービス(B to CかB to Bか、ハードグッズかソフトグッズか)など、ビジネスモデルや仕事の性質による影響を色濃く受けていたりします。風土について考える時は、「マネジメント」や「コミュニケーション」の問題に話題が集中しがちですが、こうした“関心外”の視点も加えて、現状を紐解いていくことも必要でしょう。
皆さんにもぜひ一度、自分の会社、組織に関する “自分の問題意識”を多角的な視点で捉え直してみることをおすすめします。きっと新たな発見があるのではないかと思っています。
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