人的資本経営の舵を取る推進リーダーの存在

企業の間で毎日話題が飛び交っている「人的資本経営」の動向について、自治体も学ぶことがあるのではないかと考えて、昨年末にコラムを書かせていただきました。

「企業の人的資本経営の動向から学べること」

そこでのポイントは、
1)トップと職員が一体感を持って変わっていく
2)新しい価値観で取り組む人材を育てる環境づくり
3)イノベーションにつながるダイバーシティ&インクルージョン
でした。

ただ、取り組む組織変革のための課題を挙げてみても、実現することは容易ではありません。
自治体のおかれている環境はまちまちで、公選で選出された首長に託された地域課題も選出時期によって異なります。ましてや変化の激しい時代には、これら経営の方向性や戦略と、組織変革の課題をつなぎ、両輪をうまく連携させて動かしていくことはなお困難で、高度なマネジメント力が求められます。

それは、これまでのようにあらかじめきちんと計画を立て、ピラミッド組織でカスケードダウンして進めていくアプローチではなく、組織の中を縦・横・斜めに組み合わせて動かしながら、それぞれの自治体に応じた最適解を見出していくアプローチが必要になってくるからです。既存の職務分掌に割りあてた主管部署長では担い切れないものとなってくるでしょう。

今回「自治体の人的資本経営の実現をめざす会」の発起人たちが、各部門のタテ割りでの部分最適を超え、全体最適でつなぐことができる副首長たちによって構成されているのは、そんな理由によるところがあります。

経営ののりしろとのびしろを増やしていく

変革に向けた実践プロセスにおいては、将来のありたい姿を描き、そこからバックキャスティングで新しい価値を創造していくチャレンジが必要です。これまでのようにフォアキャスティングで目標設定して進行管理するだけでは、進められなくなっています。

すなわち、イノベーションは予定通りに成し得るものではなく、人の自発性・主体性を生かして想定外に生み出されるところがあるため、組織マネジメントにおいても、このような偶発性を高める環境を用意していくことが重要となります。上と下を「線」でつなぐ人事管理・人材育成だけでなく、相互の関係から組織全体を「面」で動かしていく人材戦略・組織開発が求められてきます。

経済産業省「人的資本経営の実現に向けた報告書 人材版伊藤レポート2.0」に示された“変革の方向性”は、そんな人の潜在力を引き出し、組織の価値を向上していく、経営ののりしろとのびしろを増やしていくものになっているのではないでしょうか。

“変革の方向性”

【Not this】  →  【But this】
人的資源・管理 →  人的資本・価値創造
人事      →  人材戦略
人事部     →  経営陣/取締役会
内向き     →  積極的対話
相互依存    →  個の自律・活性化
囲い込み型   →  選び、選ばれる関係
(出所)経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書人材版伊藤レポート2.0」2022

私が、「公務員の組織風土改革世話人交流会」を開始したのは、地方分権一括法が施行された2000年でした。また、その中の分科会の一つだった副首長・経営幹部たちの場を「参謀交流会」として開催するようになったのは、政権交代のあった2009年でした。
「自治体の人的資本経営の実現をめざす会」は、昨年春に四條畷市前副市長の林・小野 有理さんから相談を受けたことがきっかけで、一緒に始めることになりました。いずれも時代の変革期に自治体に大きくトランスフォーメーションが求められている時期にあたります。

8月7日の『自治体人的資本経営フォーラム2024』は、これからの新しい自治体経営の姿を模索するために開催いたします。
まだ問題提起からのスタートですが、自治体経営改革・組織開発に関心のあるみなさまのご参加をお待ちしております。

お申し込みは、こちらからどうぞ

〔お問い合わせはこちら〕
自治体の人的資本経営の実現をめざす会
E-mail:info@jichitai-hcm.com