トライ&エラーを繰り返す

先日、支援先の技術部長ミーティングで「技術屋の仕事は、そりゃあ楽しいよ!」と目を輝かせて話してくれた部長がいた。
ミーティングの最後に聞いてみたところ、出席していた部長の実に7割近くが下町ロケットを見ていた。

ベテランの技術屋さんたちとオフサイトミーティングを行なうと、開発の裏話で盛り上がることがある。
「若いときに、○○をリプレースした時は本当にたいへんだった」 と、ある部長。

毎日遅くまでメンバーたちと仕事し、ようやく始動!というときに機械が止まってしまった。お客さまへの影響が刻々と出ているのは誰の目にも明らか。必死でメンバーたちと頭を使い手足を動かし、お客さまに頭を下げる。生きた心地はしなかった。
でも今思うと、いい経験させてもらった。信頼回復のためにこうしよう、ああしようと必死で考えたり、新しいことにトライした。
お客様と議論もできたし、技術が身についている実感があったから。

「昔は失敗してもカバーできることも多く、怖がらずに挑戦できた。工場の片隅で、引いた図面どおりに動くかをちょこっと試してみるとか、機械を分解してみるとか、ものにふれながら技術力を身につけられた。若い技術者同士で試作品を作るときには製造部も空いている機械を使っていいよと言ってくれたり、おもしろかったよ」

自分が手を動かしてトライできる環境があるか

一方で、今の若手技術者と話をすると、技術で何かを実現したいということよりも、あれをやらねば、これをやらねば、と追われている感がとにかく前面に出てくる。

失敗しても許される時代じゃなくなった。顧客のニーズが多様化して細かい仕事が増えている。
他の人がどんな技術を持ち、何をしているのかわからないから、自分ひとりで背負わざるをえない。

外的要因も労働環境も社内事情も、20~30年前とは明らかに変わっている。40~50代のベテランと20代では、そもそも育ってきた時代環境が“違うことづくし”なのだ。
それを「時代が違うから」と一言で括ってしまうと、そこで思考停止に陥る。

“昭和を知る残党”を自称する、ある技術課長は「自分が手を動かしてトライできる場があれば、今の若手もきっと変わってくる」と考え、「技術屋としての想いを形にする、技術を磨きながら何かを作り出す」そんな環境をつくっていきたいと話す。

また別の企業では、「ここは失敗してもいい」と意図的に設定した場で、若手の自主活動チームがチャレンジの幅を広げ、組織の中で力を発揮し始めている。
その背後には、彼らの取り組みの重要性を理解し支援する役員、上司がいる、という組織環境がある。

テレビドラマを現実にあてはめるのは照れくさくもあるが、「技術屋魂」と「失敗を恐れずにトライできる環境」が企業のこれからを左右する要素の一つになっているのではないか、と考えている。