この方法論は、チームにおける個々のものの見方の違いを生かし合い、新たなコンセプトとして統合していくことに最大の特長があります。
ガイドブックをお渡しした方に簡単なアンケートを個別にお願いしたところ、それぞれの方の関心や問題意識と、このワークの特性が合致するということがわかってきました。

厄介な「リアリティ」をチャンスへ

こんな類いの話をお聞きになったことはありませんか。

少年たち6人が広場に集められ、ゲームをすることになりました。彼らは全員目隠しをされ、そこに置かれたものを手で触って何だか当てて みようというものです。ところがそれを触った後、全員が違う感想を言いました。「柱」「つな」「木の枝」「うちわ」「壁」「パイプ」。
少年たちは自分こそ正しいと主張し合い、ケンカが始まってしまうほどでした。結局、それぞれのイメージを合わせてみたら、それぞれが同じものの別の部分に触っていたことに気づき、ゲームはめでたく終了しました。

「柱」=足、「つな」=尾、「木の枝」=鼻、「うちわ」=耳、「壁」=腹、「パイプ」=牙。そう、それを合わせた全体が「ゾウ」だったのです!(※インドの寓話を少しアレンジしてみました。)
ビジネスを進めていく上で組織が直面する問題にはこのようなことが多く、大抵の場合、見たくもなく、ややこしくて扱いにくく、できれば避けて通りたい不合理なこと、矛盾や葛藤がたくさん含まれています。それが「リアリティ」というものです。
現実というのは思い通りにならないことだらけで、しかもどんどん移り変わる、つかみどころのないもの。いちいち取り合っていたら物事が進まない。そう考えて、「実際はどうなんだろう」と現実に向き合うことを放棄してしまってはいませんか。

しかし、この厄介な「リアリティ」なるものは、一度つかまえてしまうと、問題になっていることをチャンスに変えてしまうことができるのです。

「インテグラル・カードワーク」のワークショップを通じて

最近、支援したある日本企業の海外現法には、20年来売上げが伸び続けている強固なロングセラー商品があります。ところが、昨年初めて売上げダウンという事態に直面しました。
このことのみをとらえて対処してしまうと、キャンペーン等を打ってなんとか売上げの回復を、となるでしょう。
しかし、もう一つ異なる事実がありました。この商品について、消費者によるフォーカスグループインタビューを実施したところ、「ベストフレンド」という認知がなされていることが明らかになりました(競合商品は少し距離感のある「知人」という位置づけ)。
実は、この商品は「そもそもなぜ売れていたのか」がよくわかっていなかったのです。

上記の事実からこんな「実ゾウ」が浮かび上がってきました。「われわれは商品を通じて消費者に提供している価値にあまりに無自覚であった」

そこで、ローカル市場における提供価値とポジショニングを戦略的に定めることにしました。「売上ダウン」という事実と、もう一つ、消費者にとっては「ベストフレンド」だから価値がある、というブランドロイヤリティを踏まえた上での戦略の再構築です。
かなり単純化してお伝えしていますが、一つのものの見方より、たった二つであってもそれを統合すると、かなりアプローチの違いが出ることがおわかりいただけたでしょうか。

この事例でも、「インテグラル・カードワーク」のワークショップを通じて「ゾウ」をあぶり出していきました。
みなさんも、これまで見えなかった「未来ゾウ」をつかまえにフィードへ繰り出してみませんか?