「先を見て経営することが大事」というのは

質問の意図は単純に、同じような立場にある他の経営者が、たとえば5年先とか10年先とか、どれだけ先に起こる変化を予測して経営しているのかを知りたいだけだったのですが、議論を積み重ねていったところ、質問自体を問い直すような結論に達してしまったのでした。

そもそも、先を予測するといっても、1年後の近未来でさえ見通しを持つのが難しいとするならば、予測すること自体にどれほどの意味があるのか。「先を見て経営することが大事」というのは、未来の予測精度を上げて想定することではない。
もっと時間を要すること、たとえば、いかなる変化をも乗り越えていけるように自分たちの力を高めていく、といったことを選択できるかどうかなのではないか、という結論に至ったのでした。

「自分は天才肌の経営者ではないので、先を予測するということに自信も確信もなかった。でも、時間をかけて大事なことを地道に継続していく、そういう経営なら自分にもできると気づくことができました」

冒頭の質問を投げかけた若手経営者が最後に感想として語った言葉がとても印象的でした。

よりよく生きていこうという積極的選択

経営には当然のことながら、短期で完結できる課題もあれば、長期で、 完結というよりも継続し続けることでよりよい結果をもたらす課題もあります。
この後者のような課題は、前者の課題と比較して、取り組まないという選択をしたところで、著しい問題や困りごとが生じる可能性は低いでしょう。誰かに責められることも少ないため、取り組むか否かは自己の意思による選択次第ということになるのだと思います。

「風土改革をこれからも継続させていくし、手綱を緩める気もない」というのは、10年以上にわたって風土改革を継続しているある経営者の言葉です。

風土改革の実践が社内だけではなく社外からも一定以上の評価を得るまでになっていても、なお継続し続けるのは、築き上げてきた風土がこの会社の強みであり、それが客観的に見ても差異化につながっているからです。

時間と労力をかけることで築き上げた「風土」という強みは、継続し続ける限り他社から追いつかれることがない、という手応えを経営者として強く感じることができるものなのです。

選択しないということも選択に含めるのであれば、企業であっても人であっても同じように、日々の選択を通じて生きていると言えます。

困らなければそれでいいという消極的な選択よりも、よりよく生きていこうという積極的選択を自らの意思で日々し続けていくことが、企業の中でも人生の中でも“当事者として生きている”ということなのだと思うのです。

選択というのは誰にでも平等に開かれた機会だとすれば、自分の力でより良くしていくということは決して特別な企業や人のことではなく、誰にでもやろうと思う意思があればできることなのだと思います。

私たちスコラ・コンサルトの企業変革は、「会社が社員を変えるのではなく、社員が会社を変える」、自分たちの未来は自分たちで創ることができるという、当事者による活力に満ちた自己変革を基本的な考え方としています。

この方向性は今後も変わることはありません。この基本的な考え方や方法論は広くさまざまな場面や組織、そして一人ひとりの生活にも応用できるものだと考えていますし、これらの期待にしっかりと応えていくということも私たちの存在意義なのだと考えています。