情報を大別してみる

今日の私たちを取りまく生活の中には、印刷物をはじめインターネット、eメールなど、さまざまな種類の文字や画像の情報が氾濫している。 「ニューヨークタイムズの平均的な一日の紙面には、シェイクスピアが生きていた当時の人が、一生をかけて手に入れた以上の情報が詰まっている」とよく言われるように、私たちは過去の人たちの想像も及ばないほど膨大な情報量の世界に生きている。

その溢れる情報を整理するために、私は大きく二つに分けて考えている。一つは「バーチャルな情報」である。これはeメールなどのやりとりやインターネットで得られる資料、文書、画像などのデータ情報で、目に見えて記録ができる、定量的であまり感情が前面に出ていないものを指している。

もう一つは「リアルな情報」である。こちらはバーチャル情報とは逆に、フェイス・トゥ・フェイスで語り合うとか、その場で起きている出来事に対して全神経、全感覚を動員して感じ取るような、目には見えないけれど心や感覚でキャッチする(実感、体感のある)生情報のことである。

バーチャルな情報だけでなくリアルな情報も大事

最近はインターネットの普及などによって、バーチャルな情報でのやりとりが増えている。例えば、何かの依頼や決定事項にしてもeメールで送付して、せいぜい「メールで送付したので確認してください」と電話でフォローするぐらいである。バーチャルな情報伝達では、その情報が「何のために必要か」「なぜそうなったのか」という背景がカットされている場合が少なくないため、その本意がきちんと伝わっていない場合がよくある。

風土改革の世話人が直面する例でいうと、職場でオフサイトミーティングを企画した際、参加してほしいメンバーへその背景と思いを案内状に書いてメールで出したり、「なぜ会社は変われないのか」の本やオフサイトに関する記事のコピーなどを渡して伝えようとするケースが多い。しかし、紙ベースのバーチャルな情報だけでは意図や思いが伝わりきれず、「そんなミーティングは必要ないと思う」「忙しいから欠席する」とあっさり返信がきたりする。そうした場合、個別に一人ひとりに会って、思いや意味のやりとりを繰り返しながら、「なぜオフサイトミーティングを開催したいと思ったのか」「どんな議論をしたいのか」を話すことで、きちんと理解してもらい、相手の気持ちもまた動くということが起こる。もちろん、オフサイトミーティングに参加することが一番リアルに理解してもらえる方法だが、事前に会ってやりとりすることで、やりとりしていないメンバーよりも参加の目的が具体的にイメージできるものである。

ある企業のN氏は、部下に社内報告書を作るのはやめて、ちょっとでもいいからミーティングをしようと言っている。文章になったものを読んでもその背景に「何があったのか」「それで、どうしたいのか」がちっとも伝わらない。仕事の手を止めて、数分間、顔と顔を向き合わせて、ちょっとしたやりとりをする時間を捻出したほうが、よっぽど状況がわかるものですよと、笑って話していた。

彼が話しているとおり、ほんの少しの時間でも顔を合わせてやりとりをするだけで、分厚い報告書でもなかなか伝えきれないリアルな情報が得られる。まさに「百聞は一見にしかず」である。