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不正事務処理に関する第三者委員会に参加
本委員会の対象案件は4件でしたが、本件に関連して議会でも特別委員会が設置されました。また、委員会開催中にも新たに逮捕者が出るという不正事案も発生しています。
このように不正が続けて発生すると、市民はもちろん、市の職員も大きなショックを受けます。「どうしてこんなことが起こるのか!?」とやるせない思いや憤りを感じている人が多くいるのではないでしょうか。
市では不正事務処理等再発防止委員会を設置して、さまざまな措置、処分、調査、方針策定、制度変更、職員研修などを行なっています。当面の問題処理のためにやれるだけのことをやろうと努力している状況がうかがえます。
それでもなお、「なぜ不正事案が後を絶たないのか?」「どうすれば不正を防ぐことができるのか?」、再発防止に関する疑問は残ります。これらの問いは、100%自信を持って回答することがとても困難なものです。おそらくどの自治体でも、大なり小なり課題を抱えているのではないでしょうか。
再発防止対策について組織風土の側面から重視した二つのポイント
そこで、ここでは本委員会の最終報告に向けて、私が不正事務処理の再発防止対策について組織風土の側面から重視した二つのポイントについてお伝えします。
(1)「不正」に関する職員の評価の認識合わせについて
一つ目は、「不正」に関する職員の評価の認識合わせについてです。
「不正」と認められる事案も、それを故意に起こした場合を除き、職員は「不正」とは気づかずに起こしていることがあるものです。
もしくは「好ましい対応ではないかもしれない」と少しばかり懸念を抱いていたとしても、「これぐらいならいいだろう」とか「今回は特別なんだから(例外として認められるはず)」と自分なりの判断、評価をしてしまっていることがあるかもしれません。
このように個々の職員が自分本位に「正しい」か「正しくないか」を判断している限りは、いくら「コンプライアンスを徹底せよ」と上位者から繰り返し注意を喚起したとしても、「自分は大丈夫。関係ない」と聞き流されてしまいます。
こんな時しばしば「職員の意識改革が必要だ」と言われますが、将来に向けて不正を起こさないようにするためには、意欲や意思を問う前に、まずは“正・否”の判断基準、評価の認識を合わせることが重要だと考えられます。
それには、できるだけ具体的な実例について職場内や職場間の複数の人で、何を「不正」ととらえ、何を「不正でない(正しい)」ととらえているのか、について話し合う機会を設けることから始めるとよいでしょう。
会合の場としては、事故防止など安全管理で行なっている「ヒアリハットミーティング」をコンプライアンスに適応して実施していく方法などがあります。
その中で判断基準を言語化していくと、職員は互いの認識に違いがあることを知り、自分を客観視してとらえ直すことができるようになってきます。みずから認識のモレや解釈のズレにも気づくことができるでしょう。
このように、個人の中に内在している判断基準を引き出して認識合わせをしていくと、組織として共通の判断基準ができてきます。すると、いざ不正と危ぶまれる事象が発生したときにも、現場で容易に話し合うことができ、一緒に評価して、そこから「どうすれば適正に処理できるようになるか」の解決策を考え合うことができるようになるのです。それが不正を未然防止することにつながってきます。
(2)「何をどこまで改善するか」の目標設定について
二つ目は、「何をどこまで改善するか」の目標設定についてです。
「再発防止」は、まだ起こっていない事象についての備えのため、取組みとしては具体策を設定しにくいものです。それゆえに、職員憲章などを唱和して意識づけをしたり、一般的な知識や情報を得る研修をしたりする方法しか思い浮かびにくいのかもしれません。
しかし、職場の長である課長ならば、もう少し具体的な取組みを見出していくことができるはずです。進め方としては、職場ごとに再発防止のための課題を設定し、職場全体で改善活動を実施して、成果を職場ごとに明らかにしていく方法が手がけやすく、具体的な実績を得やすいものとなります。
ただし、それには課長が、
(1)職場の業務レベルをしっかり把握しておくこと
(2)組織内に潜んでいるまだ見えていない問題を発見すること
(3)危険性のある箇所を想定して改善課題を特定し
(4)いつまでにどのレベルまで引き上げるのか目標設定をして改善活動をリードしていくこと
が大切です。
なぜなら、再発防止に向けた取組みは、今はまだ問題があるわけではないことから職員がつい活動を先延ばししてしまう可能性があるからです。
また、取り組んだ結果については、
(5)改善できた結果を測定して、達成度や効果を明らかにすること、
(6)庁内に共有してナレッジを蓄積していくこと
(7)さらに向上していくための新しい課題を探索しておくこと、も忘れてはなりません。
不正の防止に向けた改善では、やった結果が行政サービスの質の維持にしかつながらず、住民にとっては“やって当たり前”としか理解されないため、携わる職員のモチベーションが上がりにくいことがあります。
そこで、課長には、この改善がしっかり進められるよう、職員を後押しし、盛り立てる環境づくりをしておくことも大切です。
課長には、これらリーダーシップとスポンサーシップを発揮することで職場のPDCAサイクルを回すマネジメントが期待されています。次年度「組織目標」を設定するときには、ぜひ業務改善の目標を設定し、その中に不正防止についての目標を盛り込んでみてはいかがでしょうか。
不正によって失った市民の信頼を回復することは一朝一夕にできません。
取組みには継続する根気と努力が必要です。
それでも、あせらずに焦点を絞って一つずつ具体的に手掛けることで、職員の実力アップと自信、職員どうしの信頼関係を高めていくことができ、この基礎を積み重ねていくことが、役場の風土・体質を強化していくことにつながるものと思われます。