「何のために働いていますか」
企業の方々とのオフサイトミーティングで問いかけることがあります。
「生活のためだよ…」「特に考えたことないです…」

このような反応が意外に多く、このままでいいのだろうかと思っていました。自分をふり返ってみても「働くことの意味や目的」を自然には持てていなかった気がします。
就職活動のときも「人気ランキング」や「イメージ」だけで会社選びをしてしまい、その結果、数年で最初の会社を辞めてしまいました。それはそうです。会社に入った時点で目標達成なわけですから。

答えのないことを相談し、一緒に悩み考え合うのに、年齢や経験は関係ない

3月11日に大震災が起こりました。多くの人が考えたように、私も「自分にできることはないか」と必死に考え、家族と一緒にいた名古屋で(許可を得て)街頭募金を立ち上げました。しかし、ひとりでは思うようにうまくいきませんでした。
そこで私はツイッターで仲間を募りました。何人か集まってくれた人たちの中に高校生がひとりいました。その彼と真剣に相談し、協力し合い、2日間の募金活動をなんとか終えることができました。

そこで確信したのです。「答えのないことを相談し、一緒に悩み考え合うのに、年齢や経験なんて関係ない」

彼とは熱い話をたくさんしました。すると彼から、こんなことを言われました。「僕は今までこんなに大人と真剣に話したことはありません。なんで、こうやって大人と話すことって少ないんですか。與良さん、もっと増やしてくださいよ」
「わかった、増やすよ」自然にそう答えていました。気づいたら約束していたのです。

「働くことの目的を持つ」こと

東京に帰った私は仲間にこの話をしたり、ツイッターで反応してくれた大学生に会ったり、アポなしで大学関係者を訪ねたり、ひたすら思いを語り続けました。すると共感してくれる人が増えていきました。そして、学生と社会人が「何のために働くのか」を本音・本気で語り合う場を試行錯誤でつくっていきました。就活前の学生と、彼らが一番出会うべき20代後半から40代前半の第一線で働く社会人が語り合う場です。

ネーミングは「働くことの目的を持つ」から「ハタモク」。

「軸(働く目的)を持たずに周りに合わせる生き方」から「軸(働く目的)を持って自らが選ぶ生き方」へと変わるきっかけになればと考えました。これを続けることが、震災後の新しい日本を創造していくことにつながるだろうと。

5月に始めた「ハタモク」の参加者は、すでに延べ320人を超えました。年内の予定も含めて開催は20回になります。場所を提供してくれる大学生も現われ、名古屋でも行ないました。企業でインターンの一環としても実施されました。ある公立中学校の道徳の授業で行なった中学生と大学生、社会人の場はひじょうに好評で、第2弾も決定しています。
11月からは、この語り合いの場が多摩大学グローバルスタディーズ学部の授業になります。学生代表も含めた発起人5名とサポーターのみんなの力でつくってきました。想像以上の勢いで場がふくらんでいき、ネットワークが広がっています。

やっていくうちに、これは学生のためだけではなく、実はそこに参加する社会人にとって大きな意味・価値があることが見えてきました。大学生に「何のために働いているのですか」と問われることが「自分の生き方に向き合う」きっかけになるからです。

震災前は、こんな活動を自分が起こすなんて考えてもいませんでした。ひとりの高校生との出会いが私の問題意識に火をつけ、湧き上がってくる何かが生まれました。すると、行動が止まらなくなるのです。不思議な感覚です。新しいことの始まり方とは、こういうものなんだろうなと実感しています。