現象として見えている問題と「自分」とのつながりに気づく

複数回のオフサイトミーティングを体験したTさんの感想です。
「今までうまくいかないことはすべて周りのせいにしていました。環境が悪い、上司が悪い、周りの皆が悪い・・でも皆の話を聞いているうちに、何となくわかってきました。まず自分が変わる姿を見せて、皆で一緒に変わろうと思わないかぎり、何も変わらないって」
Tさんは職場のオフサイトミーティングで、それぞれが感じている問題について深い話し合いをしていくうちに、今まで目には見えていなかった別の問題に気づきました。そこで、現象として見えている問題と「自分」とのつながりに気づいたことが、長い悩みのトンネルの突破口になったのです。

たとえば、毎日考えるひまもなく処理的に仕事をしている、上司に相談できない、同僚や部下とも必要最小限の話しかしない、といった職場のメンバーが感じている問題は「目に見える問題」です。目に見えるだけに周りからここが悪いと指摘しやすく、目先の問題解決にも走りがちです。Tさんの職場でも、ノー残業デーの設定や、あいさつ運動の一環でポスターを張るなど、いろいろな手段が講じられました。でも、問題はなかなか解決しませんでした。

また、ある会社の上司は、部下の足りない点に目を留めては「なぜこうしなかった」「考えてやったのか」「もっと工夫できるだろう」と指摘するのが口癖でした。部下が忠実に言われたとおりにやり方を変えても、また別の足りない部分をとらえては同じように問題として指摘します。部下はしだいに言われたとおりのことをこなすことに疲れて、個人攻撃されていると受け取るようになり、しだいにお互いの関係性が悪化していきました。
それを見ている周囲の人たちは「部下を信頼しない上司に問題がある」「いや、最近の若い社員は考えてやろうとしないからだ」などと原因を目に見える人の中に求め、タマゴが先かニワトリが先かの堂々めぐりの議論を繰り返すばかりです。

人と話し合って、自分自身が気づく

このような一見、からみ合って見える問題に対して、外側からアプローチするのではなく、内側へ、核心部分へと分け入っていくのがオフサイトミーティングで行なう話し合いの特徴です。オフサイトミーティングでは、安心して話ができる環境を設定し、お互いの胸の内にある気持ちや普段なかなか言い出せないことを話し合います。一つひとつの問題について対応策を考えるのではなく、「それはなぜなのか」を問いながら問題を深く考えていくプロセスの中から、自分のあり方にも目が向き、個々の持っている先入観や思い込みに自分自身が気づいていきます。
自分は本気でやろうとは思っていなかった、どこかに自分は関係ないといった気持ちがある(当事者意識の欠如)、相談する相手がいない、支えてくれそうな人がいない(仲間不在)、といった言葉で本音が出てくるのです。

目に見えない問題の本質に近づき、それを解決していくためには、「人と話し合って、自分自身が気づく」というプロセスがとても大事です。なぜなら、自分の頭で考えて納得してはじめて、もっと良くしようと思うようになり、人と協力すればやれそうだ、と心の底から思えるからです。

まだTさんの職場の活動は始まったばかりですが、Tさんの持っていた固定観念やあきらめといった殻は少しずつ剥がれ、「本気でこれがやりたい」と自身が思い始めたときに冒頭の発言が聞けました。問題の本質に自分で気づいて、目標に向けて周りの仲間と一緒にやろうと思えたことがエネルギーになって、この活動を支えていると感じています。

 

プロセスデザイナー 宮崎圭介