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「自己完結型」と「集団リード型」
20代で実務を知り尽くし、仕事に一家言を持つ30代の仕事に対する姿勢は「自己完結型」と「集団リード型」、大きく二つに分かれているように感じる。どちらも見た目には問題意識が強く、仕事には熱心。けれども10年後には決定的な差が生じてくる。
前者は「会社はわかってない」と非難する一方で、自分の仕事に精力的に取り組み、結果を出している人だ。「自分が上司ならこんな指示はしない」と、自分なりに会社の方針を解釈し、与えられた職務の範囲できっちりと仕事をしている。
後者は、顧客との接点をよりよきものにするために、社内で摩擦を起こしながらも前に進んで行く人だ。「お客様にとって」を主語に、自分の思うところや意見を率直にぶつけ、多少の失敗をしながらもチームで新しいものをつくりだしている。その背景には、自己選択した結果としての仕事への想いがある。正しいかどうかは別にしても、選んだことに責任を持っているのだ。
自己完結型と集団リード型、この仕事との向き合い方の違いは、「会社」という言葉の意味の捉え方にある。組織や人間関係を会社として捉えるか、外から見える事業の顔を会社として捉えるか。ここがじつは、自分が部門を率いる立場になる年代に差しかかった頃には大きな力の差になって表れる。リーダーには、お客様が会社を選んでくれる理由を集団の力で高めていくことが求められるからである。
支援先の新事業長のAさん(40歳)は、販売会議を明るくすることができる人だ。
会議というのは、部下への指示や方針の徹底ではなく、お客様が選んでくれる理由をつくり出すための方策や行動をみんなで考えて決める場だと考えている。話し合いには「意見に立場や序列なし、最後は決める人が責任を持って決める」という姿勢で臨んでいる。なぜそうしているのかというと、自分が30代の頃にしてほしかったことを実践しているのだという。
彼は30代の頃、お客様に対して、すなわち会社にとって何を実行するべきなのかがどうしても譲れなくて、上司と言い合いをした経験がある。上司にはメンバーの意見を引き出し、一定の範囲については任せて決めさせてほしかったのだ。
40歳のAさんが30代の頃に変えようとしていたのは、上司ではない、方針でもない、会社という名の顧客接点だ。30代は実務と現場の担い手である。お客様に近いところにいるからこそできることは、内から見ている顧客をたえず外側から見直し、いつもいつもお客様に選んでもらえる理由を刷新し続けていくことだろう。
「お客さまにとって」前線に身を置く30代だからできること
グローバル競争がもたらす国内企業へのさまざまな影響に、会社の将来への不安を感じる30代も少なくないだろう。しかし「自分の足元」こそが、実際に動かせること、変えることのできるフィールドなのは言うまでもない。
会社の発展は、顧客接点を変え、マーケットで選ばれる存在性をつくり続けることによってのみ実現される。だからこそ、当事者不在の非難は脇に置き、自分がその先頭に立って選ばれる理由づくりに踏み出そう。
「お客様にとって」という金看板を持ち、前線に身を置く世代の地の利を生かして。