近年では、政権交代や震災・グローバル化など大きな情勢の変化に応じて適切に政策や組織を方向づけていく必要性がでています。また、新しい公共を多様な主体で担っていく時代になり、行政組織の役割を見直していく必要もあります。さらに、地方自治体においては、地方分権の流れから地域の特色を生かした自立した経営が求められています。
どれも喫緊の課題であることから、“管理職研修”が、戦力として即マネジメント力を発揮できる管理者の育成につながることが重要です。しかし、このような組織の経営やマネジメントに関する研修プログラムは、どの行政組織においても試行錯誤している段階にあるようです。そこで、今回は管理職研修の設定のしかたについて、「実践(職場)に生きる研修を実現するために」という切り口から、いくつかの視点を提供してみたいと思います。
INDEX
目的をどこにおくのか
同じ「マネジメント研修」という看板をつけていても、目的はまちまちです。そこで、これらの目的を段階別に整理してみました。
(1) 一般的な理論や考え方に関する“知識を習得”するもの
(2) 先進的な事例を学んで“意識を喚起”するもの
(3) 自組織に求められているマネジメントのあるべき姿や課題を考えて、“認識合わせ”をするもの
(4) 各自が職場の現状をふり返って、具体的なマネジメントに関する改善方法を見定め、“行動変革を動機づける”もの
(5) (4)をさらに一歩進め、職場において“マネジメントの変革を実践”し、改善成果を生み出していくもの
誰が所管するのか
上記の目的レベルによって、所管も異なってきます。
通常は、“研修”というと人事課の中の研修担当係が企画し、運営していることが多くあります。(1)と(2)までの段階ならば、ある程度外部講師に委ねることが可能だからです。
しかし、(3)については、研修担当が係長以下の職員の場合、経営者の視点を持ち、改革の方向性を読み取って、企画・運営しにくいところがあります。ここではむしろ、経営改革を担当する部署が首長や経営幹部と一緒に相談して企画・運営するほうが適切と言えます。政策の戦略や、組織の使命・目標など、経営に関わる重要事項を設定していくことがこれにあたります。
(4)と(5)については、前提となる(3)がすでに確立されている場合には、研修担当部門長が責任者となって各部門と連携する環境を整えておけば、研修担当者が運営をしていくことも可能となります。管理職研修を実施するときには、これら目的と所管部署の組み合わせを適切に図っていくことが肝となるでしょう。
次回は、管理職研修を運営するポイントについてお届けしたいと思います。
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