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行政経営システム運営改善発表会
この役場で改善発表会を行なうのは3回目。前2回は「町民サービス向上チャレンジ活動発表会」(以下「チャレンジ発表会」と表記)として開催していました。今年はこれを「行政経営システム運営改善発表会」(以下「EGK発表会」と表記。EGKは「いい行政経営」のこと)に一機にバージョンアップして実施したのです。この進化は現町長の就任後4年間に職員と役所がともに地道な成長を遂げてきたことによるものでした。
(1)何のための改善か>Planを明示
改善(Action)は、PDCAサイクルの中の一場面です。しかし、多くの自治体で行なわれている事例発表会を見ていると、目新しい活動すべてに”改善”と名付けているようで、何のための改善か、何を「Plan」としているのかがわからないことが多くあります。そこで、この町では「Plan」を明示することにしています。
チャレンジ発表会では、3年前に課長たちが策定した「町民サービスビジョン」をもとに各課で設定した「サービス向上目標」を出発点にしていました。EGK発表会では、2年前に新しく策定された「総合計画」をもとに、町長と各課長が年度初めに設定する「経営方針」からスタートしています。「経営方針」は、今年度から新しく導入した「事業目標」と従前から行なっている「町民サービス向上目標」を組み入れて一体的に運用しています。
(2)何を改善するのか>対象を明らかに
Planを明示しておくことで、自ずと対象も明らかになってきます。
チャレンジ発表会では、事業・業務の内容そのものではなく、町民とのやりとりにおいて職員が行なっているソフトのサービスに関して取り組んだものでした。EGK発表会では、課長経営方針が「重点取組」「業務の推進と改善・改革取組」「職場活性化と人材育成」の3項目で構成されていますので、これら各項目ごとの取組みを対象にしています。
(3)誰が改善し、発表するのか>課内全員で取り組む
Planがサービス向上の場合でも、課長経営方針の場合でも、課内全員で取り組んだ改善です。その結果を発表するため、どの事例を取り上げるかは課全体で検討し、課長が決定します。ただし、チャレンジ発表会では、この取組みのために課を横断した「サービス向上プロジェクトチーム(以下PTと表記)」を結成していましたので、PTメンバーが発表者、課長は応援者となって発表していました。一方、EGK発表会では、課長が課員と相談して、誰が発表するかを決め、課長が発表者を紹介する形で発表しました。
(4)どのように評価するのか>課長たちが審査の視点を定める
改善発表会で審査基準を設けている自治体の多くは、その基準を事務局や運営するプロジェクトチームが基準を決めているようです。
南伊勢町では、発表した内容を次へ活かすことを目的に開催していますので、各自が自己解釈で「よかったね」と評するだけでは不十分と考え、組織としての吸収力を高めるために、課長たちが「改善で大事にしたいポイント」を話し合い、審査の視点を設けました。特に、経営方針を構成している3つの項目は、それぞれ取組み傾向が異なるため、審査の視点も部門ごとに設定していることに特徴があります。
なお、発表会に参加できない職員には、事前にイントラネットに概要を掲載して、紙面投票をできるよう配慮しています。そして、会場では来場者が投票して表彰するセレモニーも行ないました。
(5)誰が運営するのか>若手職員の成長の機会に
チャレンジ発表会では、事務局を担う総務課が運営していました。EGK発表会では、新しく「行政経営システム運営改善発表実行員会」を公募で立ち上げました。すると、35歳以下の若手職員の内8割にあたる23名が応募してきました。
役場では、これまで4年間で課長経営方針や町民サービス向上取組、事業管理など、行政経営に関する仕組みを導入してきましたが、課長、係長などの役職者が中心で、若手職員には縁遠いものでした。そのため、応募にあたっては、「行政経営システムについて、よくわからないから知りたい」「地域でイベントをするためにも、発表会の運営のし方ができるようになりたい」「他の課がどんな仕事をしているのか知りたい」「本庁舎と離れた職場なので話せる人を増やしたい」など、自分が職員としての力を伸ばしたいということが、若手職員にとっての動機になっていたのです。12月末にメンバーを決定し、2月末に発表会を開催するタイトなスケジュールでしたが、若手職員たちは、とても熱心に運営を担い、一人ひとりが自分を成長させる機会として活用していました。
『行政経営システム』としてのPDCAサイクルを回す
南伊勢町では、改善発表会の目的を「役場全体で経営方針をもとに、この1年間に職員の知恵と工夫で”改善”した実践事例について、アイデアやプロセスを直接的に共有するとともに、今後職員がさらにチャレンジする気持ちを高め、力を合わせて向上し続けられるようにする」としています。まさに町長から新人まで役場全体が一つの方向に向き、すべての課で、課員みんなが参画し、温度差はあるものの、経営とのつながりや改善の必要性を感じることができる、一体感のある場になっていました。
4年半前に町長が就任したときには、新しい理念やビジョンがまだ総合計画に反映されていなかったため、組織としては「町民サービス向上」のように小さPDCAを回し始めることしかできませんでした。その後「総合計画」が策定され、「事業管理」を統合することによって、ようやく『行政経営システム』としてのPDCAサイクルを回せるようになったわけです。このようにマネジメントレベルに応じて改善活動に取り組むことができれば、事例情報を相互に”知り合う””称え合う””次へ活かす”発表会を通じて、次第に改善の質も高めていくことができるようになるでしょう。