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世界から取り残された日本になる
日経ビジネスの年末特集号も「グローバル人材の幻想」が主テーマでしたし、日経新聞の元旦号のトップは「世界の5割経済圏、沸きおこる中間層」でした。グローバル化に対する危機感が急速に高まっているのは、日本という国の国際競争力が1990年当時と比較して急落してきているという事実が背景にあります。このまま手をこまねいていると、遠くない将来、完璧に世界から取り残された日本になる、と私は考えています。
アジアの人材市場での日本企業の人気のなさは今に始まったことではありませんが、それも年々深刻化しているように思えます。日本企業の海外現地法人の方と話をしていると、「まったくOKY(お前ここにきてやってみろ)だよ」という声をよく耳にします。現地の事情をよくわからないまま、一方的な要求だけをしてくる日本本社に対し、「いい加減にグローバル化してくれ」と嘆いている現地法人は多いのです。
チームワーク不全とグローバル化の遅れ
チームとして海外現地法人と協力し助け合い、事を成し遂げようといった姿勢がみじんも見られない日本の本社。その存在がグローバル化の足かせになっている、というだけではありません。最も問題なのは、硬直化した組織体制のすべてであり、そこから必然的に生じる日本至上主義的な視野の狭い発想です。
硬直化した組織体質というのは、言い換えれば社員同士、部門間、本社と支社、日本本社と海外現地法人、さらには現地法人の日本人社員とローカル社員など、互いのチームワークが機能不全になっている状況です。政治におけるチームワークの機能不全なども含めて、これが今の日本という国の抱えている最大かつ根源的な問題、と私は考えています。このチームワーク不全とグローバル化の遅れは表と裏のような関係にある、ということです。
そして、こうしたチームワークの機能不全という症状は、私たちスコラ・コンサルトが開発し推進してきた「スコラ式変革アプローチ」の効果が最も期待できる領域です。
しかし、残念なのは、近年数多くの実績を積み重ねてきているこの有効な対処法が、まだまだ世間には知られていない、という現状です。日本全体でみるとマイナーにおけるメジャーの域を出ていない、と言えるでしょう。
スコラ式変革アプローチ
量が質に転化する。弁証法の法則のひとつです。ある一定の量的な拡大を果たすことによって、例えば知名度という質への転化が起こりうる、と私は常に考えています。この転化がどの時点で来るのか、は現時点ではまだ見えていません。けれども、時代や世の中の要請という意味での「スコラ式変革アプローチ」の必要度から見て、まず一定の量的な拡大が今、私たちの急務だと考えています。
今月の終わり頃、神戸大学の金井壽宏さんとの共著で新しい本が出ます。
およそ20年前、初めて本格的な「スコラ式変革アプローチ」として、いすゞ自動車を舞台に展開された改革を、いすゞの開発本部長であった元専務(後に社長)、改革の仕掛け人であった元部長と私の3名がそれぞれ証言者として語り、当時から全員と交流のあった金井さんが学術的な立場から解説する、という構成です。成功物語ではなく、歴史的な検証、という役割を持った本だと思っています。
当時のいすゞは、業績不振の只中にあり、経営と社員が互いに不信の目を向け合っていた、という意味で、多くの企業が今現在置かれている状況に酷似している、という意味でも現代的な意味がある本だと思います。
同時に、この本は拙著『なぜ会社は変われないのか』のルーツをたどる記録でもあります。この本によって「スコラ式変革アプローチ」を理解してくださる人が一人でも多くなることを願っています。