5月に、町田市の「“対話型”事業仕分け」の準備プロセスをご紹介しました。今回は、仕分け当日の様子とその後をご報告します。
INDEX
町田市の「“対話型”事業仕分け」当日の様子
地方自治体が行なっている事業は、そのほとんどが、住民の生活になくてはならないものです。そのため、地方自治体の事業仕分けは、「廃止・不要」事業を決め、コスト削減を図ることだけが目的ではありません。日々の仕事の改善の積み重ねによるコスト削減、住民理解に基づく受益者負担の適正化、限られた予算の中での市民サービスの向上を図ることなどが、結果として求められます。
町田市では、事業仕分けのやり方として、行政の事業担当者と市民が問題意識を共有し、ともに考え、改善の方向性の合意を作っていく“対話型”のプロセスを選択したのです。一般公募の市民を仕分け人に加え、事業担当者と市民目線からの対話を通して、来場者の方たちにも一緒に考えていただくことをめざしました。来場者は、リモコン操作を通じて施設の評価に参加しました。
今回の 仕分けは11施設を対象に、2つの会場で行ないました。ここで、仕分けの結果をご紹介しましょう。
11施設の仕分け結果
廃止: 「不要」・・・ナシ
要改善: 「目的・対象など抜本的見直し」・・・2施設
「サービスは維持・拡大で、予算縮減」・・・3施設
「サービス・予算ともに拡大・充実」・・・2施設
「サービス・予算ともに縮減」・・・ナシ
現状維持:「現状予算でサービス充実の努力を維持」・・・4施設
次にご紹介するのは、事業仕分けに対しての参加者のアンケート結果からの抜粋です。
事業仕分けに対してのアンケート結果
(回答者:来場者市民、町田市職員)
「仕分け人に市民が参加したことはよかった」・・・80%以上
「対話型のレイアウトはよかった」・・・75%以上
「来場者が評価に参加したことはよかった」・・・75%以上
注目したいのは、対話型のレイアウトや仕分け人との議論に関しての回答です。説明側の職員は、87%が「対話型レイアウトはよかった」と回答しました。「仕分け人との議論は納得のいくものだった」との回答は、約50%。仕分け人との議論に不納得であることを示す選択肢の「全くそうは思わない」を選んだのは、職員は3.2%、来場者は2.4%でした。これらの回答から、対話プロセスを経た事業仕分け結果は、前回の「“追及型”事業仕分け」よりも、来場者市民・職員の双方にとって納得感が高かったといえるでしょう。
しかし、事業仕分けの結果が直接、施設や事業の改廃について市としての決定を意味するわけではありません。仕分け結果をどのように受け止め、判断するかは行政側に任せられます。国の事業仕分けを見ても、仕分け結果がそのまま受け入れられたわけではなく、廃止の評価であっても、依然として存続している事業もたくさんあります。
町田市の「“対話型”事業仕分け」その後
地方自治体における事業仕分けの意味合い
地方自治体における事業仕分けは、今後の事業の改善を予算とサービスの両面から方向づける今回の「改善仕分け」という意味合いが強いと感じています。その目的を達成するためには、仕分け結果を事業担当者がどのように理解・納得し、担当部署において改善策が検討され、実行されるかということが重要になってきます。
その後の取り組み
そのため、町田市では、事後に「事業仕分け結果検討シート」を作成し、それをもとに「改善プログラム策定研修」を行なっています。
このシートは、仕分け人から仕分け前に受けた事前質問や、仕分け当日の結果とその評価コメントをもとに、指摘事項や論点に対する担当部課の考え方、受けとめ方を示し、今後の事業推進の具体的内容を実施時期も含めて記入するようになっています。
たとえ評価結果が「現状維持:現状の努力で問題ない(現状予算でサービス充実の努力を維持)」であったとしても、事業仕分け当日には、仕分け人から様々な指摘や改善のアイデアが提示されています。それらを部署に持ち帰って検討した上で、事業担当課として新たに課題を設定し、どのように日常の組織マネジメントにまで落とし込んでいくのか、ということを考える機会として「改善プログラム策定研修」が設けられました。
通常は、文書で評価結果に対する「回答」を作成し、ホームページに公開して終了、ということが多いのではないかと思われます。町田市では、事業仕分けの結果を来年度予算と中期経営計画に反映し、施設で改善策を実行することで、職員の日常の仕事の取組みに対する意識改革にまでつなげていこうということを考えました。
評価結果ごとにグループ分けをし、事後の研修を行なってみると、たとえば、「現状維持」と評価されたグループでは、「思ったより評価してもらえた」、「質問してもらえれば改善課題にあげられたのに、そこは指摘されなかった」、「来場者に関係者が多くて、本音は言いにくかった」など、検討シートの文面からは読み取れないことが出てきます。また、「抜本的見直し」や「予算縮減」といった評価結果となった施設担当者は、仕分けの対話プロセスにおける不納得感や話しそびれた言い分があったこともわかります。
そこで、この研修の場では、仕分けで指摘された各事項に対する単なる「回答」ではなく、事業担当者個人や担当部署として、この施設や事業を今後どのようにしていきたいのか、そのためには何が課題となるのか、という議論を通して、自ら課題の再設定をすることを大切にしています。それによって、「仕分けられた」という受け身から、自ら改善する方向性を市民に積極的に示す主体的な意識になることができ、制約条件と思われていたことに対してもハードルを越えるための知恵を出すことにつながっていくのです。
これから、仕分けした事業(施設)の評価結果ごとのグループで「改善プログラム策定研修」を実施した後、具体的な改善策を公表し、仕分け人にも報告した上で、組織の目標管理の中で実施していけるように、一緒にフォローしていく予定です。